少年の自白
「キーくんはさぁ……好きな娘いる?」
目の前にいる。
そう答えられるほど、僕は摺れたボーヤじゃなかったし、告げた反応を予測できるくらいには少年だった。
なので。
「だ、誰だと思う?」
大人のふりをしてみる。
といっても、シックレットブーツを履いて踵を吊り上げて、顎を引いて視線を流しながら、ポケットの中で手を握りしめた。
煙に巻くわけでも、酔って戯けるわけでもない。
幼稚に、真面目に。数秒待った。
「………ぅふふぅ、かわいい」
馬鹿にされてしまった。
歩幅を小さく、けれど足早に、足元のコンクリートを見つめながら、彼女の前を通って校門へと右折する。
「かわいい。」
今日はギリギリ授業に間に合った。
珍しいので、よく当てられてしまった。
まったく、分かんなかったよ!