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音楽堂の音色さん  作者: 氷雨
8/9

EPISODE7. 河川敷を駆ける男女は、

8:45。それは1時限目が始まる時間だ。

そして今の時刻。8:45。僕たちはまだ通学路を歩いている。やべ、詰んだ。

僕の1時限目の授業は確か数ⅠA。数ⅠAの担当教師は僕のクラス1-4の担任でもある。あの先生怖いんだよな…やべ、詰んだ。

なぜ僕たちはこんなにゆっくり登校してるのか。原因は隣にいる小柄な少女、音色奏だ。

少女と言っても彼女も僕も同じ高校生で、なんなら年上なのだが、色々な事情により僕と同じ学年になっている。去年1年間不登校で、今年も初日から3日間学校に来ていなかったが、今日ついに初登校という訳だ。待ちに待った高校生活ということで、夢にまで見た友達とダラダラ駄弁りながら登校というものをしたいという彼女の要望だ。それに付き合わされてるおかげで、こうなっているというわけだ。

「音色さん、授業始まっちゃいましたよ!流石に急がないとまずいですよ!」

「えー、もう1時限目サボって2時限目から行っちゃおーよー!」

「音色さんはいいかもしれませんが僕がまずいんです!」

そう、あの先生は怖い。今行っても半殺しにされそうなのに、これ以上遅れたら命はないかもしれない…恐ろしい。

「そっ…か…よし!じゃあ急ごっか!走るよ、響くん!」

「…!?」

そう言って音色さんは僕の手を引いて駆け出した。授業中だからか辺りにあまり人はいない。河川敷には駆けている高校生の男女だけがいる。その景色はまるでMVのワンシーンのようだった。

「はぁ…はぁ…疲れたねー響くん…」

音色さんは頬を赤く染め、呼吸を整えながら襟元をパタパタしていた。胸元が無防備で、走った疲れも相まって心臓の鼓動が早まっている。

「誰のせいですかまったく…」

冷静を取り繕っているが内心、かなり緊張している響詩也である。

気がつけば、僕達は学校に到着していた。

「さあ、行きましょうか!」

「うん。そうだね。」

その表情はどこか曇っていた。そりゃそうだろう、初登校だ。緊張しない訳がない。昨夜、音色さんは言っていた。


"みんな同い年なのに奏だけ年上なんだよ?話に入れるか不安だし。怖くて今までも3日間休んじゃってもう行きにくいよ…"


元気で活発出明るい音色さんだが、僕は音色さんの過去を聞いてしまった。そして、そんな音色さんの弱音を聞いた。

だから僕は、この人の助けになりたいと思った。話すのが上手で、誰にでも優しくて、家族思いで、大切なものがあって。そんな音色さんの夢を叶えたい。高校で友達を沢山作って、音楽堂に誘いたいという夢。


「表情が堅いですよ!音色さんなら大丈夫です!深呼吸して、リラックス、リラックス。」


「…!」

音色さんの表情が晴れた。緊張するのはわかる。けど、音色さんには頑張って欲しい。

「響くんも、ちゃんと今日友達作るんだよ?」

そうだよな。音色さんだけじゃない。音色さんは僕が高校生活を充実させたいという願いも応援してくれているのだ。人のことだけじゃなくて僕も頑張らないといけない。

「はい。頑張りますね。」

「じゃ、入ろっか!」


8:50。僕たちはようやく、札幌学園高校に足を踏み入れた。


そして案の定、僕はこっぴどく叱られてしまった。

一方音色さんは学校に来ただけ偉いと褒められていた。くそ…音色さん最初からこれをわかってて…!先生にクラスメイトの前で半殺しにされた後、席についた。はあ、大丈夫かなあ。

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