EPISODE5. 音楽堂の前で2人は、
8:05。2人は、ようやく集合場所ある音色音楽堂に姿をみせた。
「ごめん響くん!寝坊しちゃってさー、待った?」
「いえ、全然。寝坊しちゃって、今来たばかりです。」
朝じたばたしていたせいであまり考えていなかったが、今日は音色さんが初めて高校に行く日だ。
「どう?制服。似合うでしょ!」
まだ一日だけの付き合いだが、あの音色さんが僕と同じ高校の制服を着てるという状況が何故か照れくさく感じる。しかも、音色さんは色々小さいから、高校生というよりは名門小学校の制服着させられてる小学生みたいな感じがする。可愛い。というか、音色さんは普通に顔が整ってる部類に入ると思う。確かに幼さが可愛く見せてるというのもあるが、顔だけ見ても普通に可愛いと思う。加えて、小さい。可愛い。
「あっ、えーっと、その、に、似合ってると、お、思いますよ。」
「あー!今響くん、制服着させられてる小学生みたいだなって思ってたでしょ!」
な、何故バレた…!?
「い、いやー、そんなことー、お、思ってたけどない、ですよ?」
「あはは!やっぱ響くんって面白いねー!」
音色さんは幼い。けど、どこか大人で、とても同い年には思えないなと感じる時がある。
「そんなことより、登校8:20までですよ!急がないと間に合いません!」
今はダラダラしている暇はない。ここ、音色音楽堂から札幌学園高校までは川沿いを真っ直ぐの所にある。音楽堂を札学から反対方向に川沿いを進むと僕の家があり、僕の家から札学まで徒歩25分。そして、僕の家から音楽堂まで徒歩5分ということを考えると、徒歩20分かかることになる。急がないと遅刻してしまう。音色さんを初日から遅刻させるわけにはいかない!早くしないと…
「いいじゃんそんな急がなくて!ゆっくりいこうよー。」
「でも、初日から遅刻は…」
「初日の登校くらい、お友達とお喋りしながらゆっくり行きたいな。」
そうか、この人にとって、今日が初めて高校生活なんだ。友達と喋りながらゆっくり登校すること。遅刻して先生に叱られることさえも、青春で、眩しくて、ずっと願っていた高校生活の1部。
そうだよな、音色さんは今日という日が楽しみで楽しみで仕方がなかったんだ。
「そうですね。お喋りしながらゆっくり行きましょうか。」
僕は、出来る限りの最高の笑顔を見せた。
「そうこなくっちゃ!」
そして音色さんも、最高の笑顔を僕にみせてきた。
あれ?さっき、お喋りしながらゆっくり、以外にも何か言ってたような…
「あ!さっき、僕のこと友達って言ってましたね!?」
「うわ!?聞いてたの!?恥ずかしい…掘り返すのは良くないよ!てか、響くん友達じゃないの!?友達だと思ってたのに悲しいよお…ぐすんぐすん。」
音色さんは幼い。けど、どこか大人で、とても同い年には思えないなと感じる時がある。だけど、やっぱり音色さんは幼い。僕は昨日、そんな音色さんの願いを叶えようと決めた。そして今再び、音色さんと最高に充実した高校生活を送ろうと心に決めた。
「冗談ですよ。僕たちは友達ですし、これから先も友達です。」
8:10。2人を包み込む大空は、限りなく青かった。