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飲み会であった怖い話

作者: 平 良介

 3年ほど前の話です。友達数人と飲み会をしていました。


 いよいよ話すこともなくなってきた頃に誰かが、「何か怖い話ある?」と言いました。


 みんな酔いが回っていたこともあり、幽霊を見たことがあるというような一言二言で終わる話しか出てきませんでした。


 私は心霊体験をしたことはありませんでしたが周りから面白い話が出てこなかったので、せっかくの機会だと思い、作り話を話そうと考えつきました。


「深夜の2時くらいかな。飲み物を買おうと思って住んでいるマンションの、目の前にある自販機に行ったんだよ。コーラを買って受け取り口から出してさ、振り返って四階の自分の部屋をふと見たんだ。すぐに戻るつもりで電気つけたまま出てきて、カーテンを閉めてなかったから、明かりがそこだけ煌々としてた」


 即興で作った話でしたが、できるだけボロがないようにゆっくりと丁寧に話しました。その口調が怪談に向いていたのか、皆こちらをじっと見て真剣に話を聞いていました。


「ああ、カーテン閉め忘れてたな。なんて思いながら買ったばかりのコーラを開けて一口飲んだんだ。飲むときに顔を上に向けるだろ?そのときに部屋がまた視界に入るんだ。そのときは何もなかったんだけど、二口目を飲もうとした時、自分の部屋のベランダから誰かが手を振ったのが見えたんだ」


「…それで?」

 じっとこちらを見ていた友人の一人がそう尋ねました。


「俺は一人暮らしだから、当然部屋には誰もいない。なのに、俺の部屋のベランダから誰かが手を振っていたんだぞ。逆光で顔は見えなかったし一瞬で消えたから誰かは分からなかったけど、幽霊ってやつを初めて見たよ」


「…それだけ?」

 友人がつまらなさそうな様子でそう言いました。


 私は稚拙な作り話をしてしまったと後悔をしました。それっぽい語り口で期待感を煽ったこともあり、急激に恥ずかしくなってきました。


「それだけって、怖いだろ。幽霊が自分の部屋に出るんだぞ」


「怖いっちゃ怖いけどさ、なんかオチが弱いよ」


 友人に何もかも見抜かれたような気分になり、恥ずかしくなった私はネタバラシも兼ねてこう言い返しました。


「悪かった。御察しの通り、これは作り話ですよ。逆にどんなオチなら良いんだよ」


 友人は酒を一口煽り、半笑いしながらこう言いました。

「いや、ケチつけたいわけじゃないんだ。たださ、それ、幽霊じゃない方が怖いよな。どうせ家の目の前の自販機行くのにいちいち鍵かけないだろ、お前。変な奴が部屋に入り込んでいたとしてもおかしくないじゃないか」


 友人はそういうと酒をまた一口煽り、そのまま口を黙ました。

 飲み会はそれから三十分くらいして終わり、各々解散しました。

 大体、深夜一時くらいを回っていたと思います。


 私は家の方向が同じだったので、私の話を添削したその友人と二人で帰っていました。自宅のマンションの近くに差し掛かり、友人が言いました。


「あかりついてるぞ。お前の部屋」


 その瞬間嫌な考えが一気に私の中に流れ込んできました。


「わるいんだけどさ、今日泊めてくれない?」

「…悪い。俺も今日は家に入りたくねえ」


 友人にも同じ嫌な考えが浮かんだようで、その日は二人で朝まで公園にいました。


 学部生の頃の嫌な思い出です。

 これ以来、ちょっとした用事でも必ず鍵をかけるようになりました。


 お付き合いいただきありがとうございました。


*いうまでもない事ですが、これは作り話です。ご安心ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 結構おもしろかったです! [一言] 最後にハプニングがあったらもっと怖かったのかなぁ〜? 面白かった分、もうちょっとだけ、続きが読みたかったです!
[良い点] 私も怪談話をしてあまり盛り上がらなかった経験があるので、その時のことを思い出す話でした。 ネット上で転がってる怪談話でもオチが「幽霊がいた」より「生きた人間がいた」の方が怖いことってありま…
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