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サイコパスな転生者と四人の魔女  作者: 釧路太郎
異世界再訪するサイコパス編
5/9

第五話

 新自由帝国の皇帝は世襲制ではなく神によって選ばれたものがその座に就く。今現在では第二百四十三代皇帝がその座に収まっているのだが、短いものでは在位期間が三日と持たなかったものも多くいたため、新自由帝国としての歴史はそれほど長くない。

 俺が皇帝に会うためには何らかの功績が必要であるそうだ。一般市民ではまず謁見することは不可能であって、貴族階級や騎士になって初めて謁見の間に入ることが許されるのだと偉そうな男に言われた。曰く、異世界人は現地民に娯楽を提供する下賤の民ゆえ皇帝陛下に会おうと思う事すら許されぬことだと。この世界の住人は俺のような異世界人が直接手を下すことが出来ないため傲慢なものが多い。その気になればこの世界の住人だろうと何だろうと関係なしに攻撃することは可能に思えるのだが、腹が立っているのにもかかわらず俺がこいつを殴りつけようとは思うこともないのだった。不思議な話だ。


 とにかく、今のままではせっかくここまでやってきたのに皇帝に会う事すらできない。まあ、普通に考えればどこの誰かもわからないような人間と気軽に合うような者が国のトップというのはおかしな話だとは思うのだが、せっかく異世界にやってきているのだしこちらにも敬意を払ってもいいのではないかと俺は思うのだ。だが、この世界の住人は異世界人や人工生命体に対して家畜同然の扱いをするのがとても気になってしまう。

 先程の偉そうな男の話では、俺みたいな異世界からやってきた者はこの世界の住人のために何か娯楽を提供しなればいけないそうなのだが、俺には皆を楽しませるような芸は持っていないのだ。あったとしても披露することは無いと思うのだが、俺は楽しませるような芸は何一つ持っていない。

 ここまで連れてきているのに有用な情報を何一つよこさない魔女二人にも腹が立っていたし、回復させたり痛めつけたりするのも飽きてきたので、ここいらでこいつら二人を解放することにしよう。自分の国にでも帰って他の魔女を連れてきて欲しいと思うところではあったのだが、彼女たち魔女は基本的になれ合わないらしく俺の前にみさきを連れてくるという期待も出来そうになかった。

 魔女たちは俺から解放されると一気に距離をとって俺に対して威嚇を始めていた。もう一発くらい殴ってみようかなと考えているうちに、俺の視界から一気に二人の魔女は消えてしまったのだが、二人の魔女が消える瞬間に何か別の生き物が見えたような気がしたけれど、それはきっと俺の気のせいだろう。


「あんたさ、なんで魔女を解放しちゃったのよ。あのままずっと連れまわしてたらセイラント魔法国に言った時に何かの役に立ったもしれないじゃない」

「そうは言うけどさ、そこってあいつらの本拠地だろ。歓迎なんて絶対にされないだろうし、逆に熱烈な歓迎を受けて俺達の方が酷い目に遭いそうな予感がしてるんだよ」

「その可能性もないとは言えないわね。この世界の人は基本的に異世界人を格下に見ている節があるんだけど、本当に強いものに対しては尊敬の念が強すぎるのよね。だから、あなたの言う通り、ボコボコになった魔女を連れてきた男なんて絶対に生きて帰れないわね」

「生きて帰れないとしても、俺は死んでも平気なんだよな?」

「まあ、苦しかったり痛かったりはすると思うけど、基本的には死んでも平気よ」

「とりあえず、俺はこの国の人を楽しませる方法を考えて、何とか皇帝に会えるように努力してみようかな」


 今の俺が出来ることといったら、戦う事と壊すことだ。どっちも同時にやることも可能ではあるのだが、ここは基本に帰って物を壊す方向で考えをまとめてみよう。

 俺は皇帝に会う必要もないし、この国に立ち寄ったのだってたまたま近くにあったからだし、町人までも異世界人とわかると見下してくる態度が気に入らない。心なしか、奴らの飼っている動物ですら俺を見下しているように見えてくるのだ。


「なあ、逝姫さんよ。俺たち異世界人はこの世界で生まれたっていう現地民を直接攻撃することは出来ないんだよな?」

「そうね。転生した時点でこの世界の住人に直接危害を加えることは出来なくなっているわ。偉大なる神々の力でそうなってしまっているのね」

「直接はダメって事なら、間接的になら手を出してもいいってことかな?」

「可能だとは思うけれど、それをこの帝国のど真ん中でやろうっていうんじゃないわよね?」

「ど真ん中じゃなきゃやってもいいの?」

「そんなわけないでしょ。間接的にと言ってもこの世界の住人を殺していけば、いずれは偉大なる神々から恐ろしい使徒が送られてくるわよ」

「ペナルティってそれくらいしかないの?」

「そうだけど、それくらいしかって言い方は失礼だと思うわ。使徒と一言で言っても、その強さは魔王に匹敵するとも言われているんだからね」

「魔王だろうが使徒だろうが悪魔だろうが神そのものだろうが、俺に何かしようって言うなら相手になってやるだけさ。でもさ、その時の逝姫は俺のもとから去っていくんだろ?」

「どうでしょうね。今のところは何も言わずに無言で出ていくと思うのだけれど、それでもあなたが私を必要としてくれる時が来たなら、ちゃんと手助けはしてあげるわ。もちろん、それなりの報酬はいただくけどね」

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