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第13話 トルクスピカの守人

「改めて自己紹介するわ。私の名前はアリス。アリス・サルザンドよ。救世の英雄、フェデリコ・サルザンドの姪で、トルクスピカの守人。サルザンド家の巫女を継ぐ者よ」


 アリスさんは申し訳なさそうな顔をする。


「ごめんなさい。ゲートを超えて一番近い人の近くに落ちてきたんだけど、まだあなたがタクヤだっていう確証がなかったから、サルザンドの家名は名乗れなかったの。でも今は、あなたが空間の神の力を持っていて、フェデリコ叔父さんの力を継いだ事は分かったから」


「えっと、どうして分かったんですか?」


「この()よ。神の力を見ることが出来る、占いの神の力よ」


「なるほど」


 なるほど。なんか全体像がつかめてきたぞ。


 まず、アリスさんは異世界人で間違いはない。その世界の名前がトルクスピカだ。フェデリコさんもそこから来た。そしてフェデリコさんが亡くなって、闇の侵略者とやらが現れた。そこでアリアさんは預言通り、新たな英雄を探しにコルマン帝国の隠されたゲートを超えてこの世界に来た、って訳だ。本当は複数人で来るつもりだったけど、何かの手違いか一人で来てしまったって所かな。


 でも分からないことはまだある。


「俺は何でこんなに狙われているんですかね?」


 ここ一時間ちょっとの間で、動物たちに5回も襲撃されている。どれもケントという人の指示で俺を襲ってるらしい。まあ、名乗る前にアリスさんに倒されてるから、全然無関係の、ごくごく一般的な喋る動物だった可能性もあるけど。


「それは、あなたからあふれ出ている空間の神トピカ様の力を奪うためよ。トピカ様は上位神だから、その力は絶大なもの。トルクスピカを救う英雄にふさわしい力よ。でも、タクヤはまだ、その力を使いこなせないでしょ?だから私は、タクヤを守るの。そして一緒に()()()()を危機から救いましょう!」


 ちょっとアリスさんの期待が重い。俺、異世界救わないといけないの?無理だよ。ゲームですら下手過ぎて途中でゲームオーバーになって碌に救えてないんだから。


 さらに言うと、アリスさんは一つ大きな誤解をしている。


「あの、アリスさん。言いづらいんですが、ここ、トルクスピカじゃないですよ」


「…………え?何を言っているの?」


「ここは、アリスさんがいた世界じゃないんです。コルマン帝国だとか、サルザンド家なんてものはありません」


「そ、そんな馬鹿なこと…………だってあなたはフェデリコさんから力を貰っているじゃない。フェデリコ叔父さんは一昨日、幽閉された神の子を救い出すために、ダグラス家との戦いに向かったのよ?」


「えぇっと、何から説明すればいいか…………」


 俺はトピカさんの謎空間のことを話した。


 俺は突然その空間に飛ばされ、そこで出会ったフェデリコさんの最期を看取ったこと。トピカさんにあって力を貰った事など、覚えている範囲の話をした。


 そうだ、思い出した。コルマン帝国ってフェデリコさんが言ってたんだ。なんかその帝国の人間に騙されて、ダグラス家と戦うことになったとか。俺をそのダグラス家の人間と間違えてたんだよな。


 ちなみに良心の呵責に耐えかねて俺がフェデリコさんのとどめを刺しちゃった事も伝えた。


 それを聞いたアリスさんは、考え込むように俯いた。


「そんな…………世界を渡ったなんて…………」


 しかし、すぐに答えが出たみたいだ。


「…………うん。大丈夫。そうだとしても、私のやることは変わらない。タクヤ、私はあなたを守るわ」


 アリスさんにとって、そんなにもアラーラ長老の占いとは大事な物なのだろうか。異世界に飛ばされてもなお、その占いの通りに行動をしようとする。


 ごめん俺、アラーラ長老はそこら辺の小さいお店で母やら父やら名乗っているような占い師を想像してた。俺はイメージを、祭壇で一心不乱に祈りを捧げる神官的な奴に格上げする。


 てか、俺がフェデリコさんにとどめを刺した事は別にいいんだな。アリスさん曰く、


「フェデリコ叔父さんは自分が誰かに殺された場合、サルザンド家の人間に力が継承される術式を組んでいた」

 

 とのこと。だから俺に力が渡っている時点で殺した判定にはなってないみたい。よく分からんがよかった。一瞬警察に自首すべきか本気で考えたし。母さん、兄貴、咲、俺はまだ清いままです。


 とにかく、アリスさんは俺についてくる意思は変わらないらしい。うーん。家に帰ったら、兄貴と咲にどう説明しようか。兄貴は適当な理由で納得すると思うけど、咲は口先だけじゃごまかせないと思う。咲はすごく注意深くて、昔俺が咲の誕生日にサプライズパーティを計画したとき、まだ何の用意も始めてないのにばれたからな。よし、今年はサプライズパーティをしよう!と心の中で考えた瞬間に特定された。ちょっと怖かった。






 「タクヤ、もうすっかり暗くなって来たわ。この暗さで歩き回ると危ないと思うの」


 その後、とりあえず諸々の事を家に帰ってから考えようと思って、下山を再開した訳だけど、おかしい。さっきからまた一時間ぐらい歩いているけど、未だ山の中である。


「うーん。もう街に出てなきゃおかしいんですよ。来るときも三十分くらいで頂上まで行けたし、こんな掛かるはずがないーーうぁっと!」


「俺に力を寄越せっっ!」


「させないっ!」


「ぐぁぁぁぁぁ!!」


 ちなみにいまだ定期的に動物たちに襲われ続けている。毎回アリスさんが秒で片付けてるけど。


「…………確かに私も、なんかおかしい気がするわ。おんなじ所をぐるぐる回っているような…………あ!」


 アリスさんが前方にある何かを指差した。


「これは……アリスさんが倒した狸?って事は…………」


 暗くてよく見えないが、近づいて見てみると、確かにアリスさんが真っ二つにした狸の死体だ。


 おいおいまじかよ。こんなの物語では定番中の定番だけどこれって、




 この山道、ループしてるっぽくね?

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