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デートの誘い

悠馬は、たまに沙恵を固まらせる。

明日はいよいよ新年を迎えるという日。

突然、悠馬は沙恵に言った。


「デートしない?」


沙恵は思わず返した。

「え、何で?」

言ってしまってから『しまった!』と思ったが、悠馬は気にしない風に沙恵の肩をポンッと叩いた。

「たまには良いじゃない。 今日夜7時に、駅前の噴水の所で待ってて。」

「え、ちょっと待ってよ!!」

と焦る沙恵を残し、

「俺は仕事終わってから行くから。」

と、微笑みながら事務所を出て行ってしまった。

「そんな勝手な…」

沙恵が困惑してつぶやくと、急に扉が開き、

「今日、用事あるの?」

と悠馬が顔を出した。

「っ!ないよっ!!」

「ん、良かった。 じゃあ、7時ね。」

と手を振りながら、パタンと扉は閉じられた。

「もう…」

沙恵は膨れながらつぶやき、そして、少し顔を赤らめた。

「デートって…」



「えー…どこも閉まってるか、やっぱり…」

沙恵は街に居た。

目的は、いつもの食料調達ではなく新しい服を買うためだった。

がっくりと肩を落とす沙恵の前に、やっと一軒の洋服屋を見つけた。

「仕方ない…!」

もう迷っている時間はない。 沙恵は店へ入っていった。



午後6時30分。


沙恵は待ち合わせ場所にいた。

もうすっかり陽は落ち、辺りはイルミネーションに彩られた建物に人通りの多さも加わって、とても賑やかだった。

「久しぶりだな… こんなに明るい夜…」


この街に来た時、沙恵はまだ学生で、遊ぶ余裕など無いに等しかった。いや、同級生たちは自由に遊んでいたようだったが、どうやら沙恵にはそんな器用さもなかったようで、いつも参考書とにらみ合っている毎日だった。

そして今、目の前に広がる街は灯りにあふれ、人が賑わい活気付いているというのに、ひとつ裏へ回れば、そこは何と暗く静かで危険な世界が広がっているのか…。


そんな事を考えながら、沙恵は途切れる事無く歩いて行く人々を見ていた。

そして、近くのショーウィンドウに映る自分の姿を見た。

今日の沙恵は、思い切りお洒落をしたつもりでいた。

メイクも出来るだけ努力して、変身したつもりだった。

「変かな…?」

1人つぶやきながら、また人の往来を眺めた。

もう少しで、待ち合わせ時間が訪れる。。。



☆☆☆


その頃、悠馬はまだ仕事を片付けられないでいた。

「ね、一緒に新年を迎えましょうよ。」

この日しか空いていないからと言うのでしぶしぶ出てきたのは良いが、この女、計算ずくだったようで。

「悪いけど、俺まだやる事あるから。」

と去ろうとする悠馬を捕まえた。 そして上目遣いで見つめると甘え声で言った。

「まだ教えてない事、あるのよ。」

「お前、どこまで性悪なんだよ…」

あきれる悠馬に、女は言った。

「お互い様でしょ。 ね、はい、乾杯!」

2人はホテルの一角でワインを酌み交わしていた。

悠馬は初めて、今日この仕事を選んだことに後悔していた。


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