決行
決行の日。
真夜中。 2人は目的の事務所ビルの、隣ビル屋上に居た。
組長の部屋は最上階にあるため、上から行った方が早いと判断したのだ。
2人は身軽に事務所ビルの屋上へと飛び移ると、中へ続く扉に触れた。
悠馬は器用に扉の鍵を開けると、沙恵を見た。
「もう、後戻りは出来ないからな。」
「うん。」
沙恵は大きくうなづいた。 覚悟は決まっていた。
「よし!」
2人ははスルリと屋内へ滑り込んだ。
中は当然真っ暗で、足元も見えない程だった。
それぞれ懐中電灯を手に、目的の部屋へ急いだ。
悠馬はひとつの部屋の前で立ち止まり、沙恵を手振りで呼んだ。
そしてまた器用に扉の鍵を開けた。
沙恵は悠馬の後について、中に入った。
悠馬はまるで泥棒稼業のように金庫を開けると、手元の小さな灯りを頼りに物色し始めた。
パチッ☆
「!!」
突然、部屋の明かりが点いた。
驚く悠馬の前に、3人の用心棒が立ちふさがった。
「何度来ても同じことだぜ!」
手にはそれぞれナイフをぎらつかせ、悠馬に迫った。
「このっ!」
悠馬は金庫を踏み台にして飛び上がると、3人のうち2人の後頭部を蹴り、扉付近へと戻った。
蹴られた2人は前につんのめると、金庫に顔を強打した。
悠馬のそばに、扉の影に隠れていた沙恵が飛び出した。
「あんたらか、猛流を殺したのはっ!?」
用心棒はにやりと笑った。
「さぁねえ。 ネズミは一匹残らず始末してきたが、その中の一匹かな?」
不適に笑う男に、沙恵はこらえ切れない怒りを覚えた。
「許さないっ!!」
「!おい!」
悠馬が止める間もなく、沙恵は男たちに向かっていた。
沙恵の速さに男たちは戸惑い、2人は腹と頭を蹴られ一瞬で倒された。
その背に、もう1人が襲い掛かった。
「!!」
振り向くと、悠馬が側頭部に蹴りを入れていた。
「時間が無い。 行くぞ!」
「え? だって書類は…」
ダダダダ!!
沙恵の言葉を遮るように、階段を駆け上がる足音と怒号が廊下に響いた。
「しまった!」
バタンッ!!
騒動に気づいた仲間たちが部屋に入ると、中には3人の男が倒れているだけだった。
「くそっ! どこに行った!! 探せっ!!」
慌てて出て行った部屋の窓がカラッと開き、悠馬と沙恵が外から入ってきた。
「危ないとこだった…さ、行こう!」
「うん!」
沙恵の後ろを急ぐ悠馬の目に、赤い光が映った。
「!! 沙恵! 伏せろっ!!」
言った途端、後部から爆音と爆風が2人を襲った。
ドーーォン!☆!★!
「悠馬!!」
沙恵をかばうように覆いかぶさっている悠馬が、すぐに顔を上げた。
「大丈夫だ!」
素早く立ち上がると沙恵の腕を掴んで立たせ、2人は屋上へと急いだ。
隣のビルへと飛び移ると、2人は夜の街に消えた。




