雨
最悪だ。
数分前まではポツポツだった雨が今ではアスファルトを黒く染めるほどに降っている。
雨足は強まるばかりだ。
「さむっ」
バス停まであと少しだ。走って駆け込む。
はぁー、と息をついた。
「うわぁ、なんか気持ち悪い…」
シャツがぐっしょりと濡れていた。水溜まりを激しく雨が叩くもんだから水溜まりの世界は歪んでいた。
あ
小さい男の子がバス停で寝ていた。
可愛いなぁ。そういえば、修哉の寝顔に似てる。
不意に元彼のことを思い出した。
今思い出すんじゃなかった。
-他に好きな人が出来たんだ-
また涙が溢れてきた。自分の頬が濡れてるのが雨だか涙だか分からない。
次のバスが来るのは…20分後か。と時刻表を確認しているとすやすや眠っていたと思った男の子はいつの間にか私の前に立っていた。
タオルを差し出してくれている。
「私に?」
男の子はこくりと頷いた。
「あ、ありがとう」
コロコロ
飴がタオルの中から落ちてきた。
「あ、ねぇ」
そういった時には男の子はもう道路の反対側に渡っていた。
親指を立てて、ぐっとマークをしている。
それから目をトントンと手で指し、ニカッと笑った。
バレてたんだ、泣いてたこと。
私はピースサインで返した。
なんか、一歩前進した気がする。
貰った飴を飴を口に放り込んだ。
イチゴ味。
さっきまで歪んでた水溜まりの世界には、虹がかかっていた。
読んでくださりありがとうございました。