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王子様に愛されたのは

作者: とうにゅー

 クソみたいな姉たちや継母にいじめられて、でも、魔法使いのおかげで私は王子様とめぐりあい、結婚した。

 ああなんて、成り上がり人生。素晴らしき人生かな。ねずみさんたちも楽しそうに日々を過ごしているそうで何より。

 あれは笑えたなぁ。

 舞踏会場で私が落としたガラスの靴。それに合う足の娘を探しているとき、当然私の家にもたどり着いた。私を部屋に閉じ込め、姉たちはガラスの靴のサイズに合うように、工夫するの。姉たちは私より足が大きいから、指を切り落としたりかかとを削ったり。必死になってたわ。せっかくガラスの靴に入ったのに、血のにじみがバレてしまい、結局失敗に終わったわ。ねずみさん達に協力してもらって部屋を抜け出し、私が登場。

 私の足のサイズに合わせてあるのだから、もちろんぴったり。その時の姉や継母の顔と言ったら……ふふふ。

 私は優雅な生活を満喫して数年。どうも王子様の様子が変だ。

 夜も私を求めなくなったし、昼間もどこかへいつもでかけているようだ。召使いに聞いても「しらない」と答えるだけ。

 

 だから私は作戦に出ることにした。

 夜、寝た振りをして、王子様の後をつける。そして、なにをしているのか暴こうと思う。


 私は王子様と同じベッドに入る。私が寝付くまでそう時間はかからない。王子様に背を向けて、規則正しく呼吸を繰り返す。危うく眠りに落ちそうになるけど、そんなときは毛布の下で手の甲をつねった。そうやって痛みで眠気を引っ込めて、耐えしのいだ。

 どのくらいそれを繰り返したか、手の甲はすっかり熱を帯びていた。

 沈んでいたベッドは軽くもとに戻り、足音がかすかに聞こえた。ドアが開き、細い光が部屋に入ってきて、音もなく閉まる。


 王子様はそっとお城を抜け出して、火を掲げを片手に獣道を進んでいくようで、小さな明かりが一つ上下に揺れながら奥へ奥へと進んでいくのが見えた。

 いったい、こんな夜中に何をしにいってるのだろう。

 はっ、まさか、もうすぐ私の誕生日だから隠れてなにかコソコソ作っているのかも!?

 そんな淡い期待を胸にばれないように王子様に着いてく。

 私は、ここでついていくのをやめておくのだったと後悔するのだった。


 王子様はそう私に教えてくれたわ。

 


 王子様が会っていたのは、わたし。

 わたしはロミオを選ばなかった。ロミオより、私は王子様を愛した。シンデレラ? あの子ね、王子様はもう好きじゃないんだって。結婚した当初は良かったけど、傲慢で逆ギレも多くて、嫌になったらしいわ。王子様の様子を見に来たとき、わたしは気づかなかったけど、王子様はわかっていたらしい。わかってた上でわたしと会ったらしい。だから、いつもは外でしない深いキスをしてくれたのかと納得した。

 シンデレラに見せつけるために。

 王子様を結婚したからとあぐらをかいていた罰があたったのよ、きっと。

 わたしは一時期ロミオと迷ったわ。けれど、ロミオより優しくて、わたしと気が合って、一緒に過ごしていてすごく幸せなの。だから私は王子様を選んだ。

 童話の中では王子様が愛したのはシンデレラ、わたしが愛したのはロミオ。

 けれど、ここではわたしが愛したのはロミオで、

 王子様が愛したのはわたし――ジュリエットよ。

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