青空魔法教室[6]
「なあ、上手くいかねえんだけど」
呆れ果てるルドミラの様子に構わず、誰かが声をかけてくる。
マウロだ。
「……傷が癒えるイメージを、きちんと頭の中で作れてる? 血が止まって、傷が塞がるイメージだ。それが上手くできていれば、そう難しいことじゃないと思うけど」
ルドミラの言葉に、側で聞いていた他の者たちもう~んと唸って難しい顔をする。
「それじゃあ」
言ってルドミラは、辺りを見回した。
大きい葉を茂らせた、ちょうどいい低木が少し離れた場所に生えている。
ルドミラはそこまで歩いて行くと、その木から葉を一枚ちぎって振り返った。
「これを、戻す。……いいかい、怪我と同じだ。傷をくっつけて、大地の名を呼び、この枝と葉が再び繋がることをイメージする」
集まった者たちが固唾を呑んで見守る中、低木は傷を癒し再び葉を取り戻す。
「分かった?」
「う~ん、まあ……、何となく」
とても自信がありそうではない声で、誰かが答えた。
「あとは、強く願うことだ」
「願う?」
誰かが聞き返す。
「そう。魔法っていうのは、自然の力でそうしたいと思うことを実現するための力。つまり、願いを叶える力とも言える」
「そうか、それだったらもうちょっと分かりやすいかも!」
「なあ、魔法教室やってるんだって?」
真剣な面持ちで魔法を練習する人々の横あいから、また声がかかった。
「仲間に入れてくれよ!」
「……いい加減にしてよ……」
うんざりしてそう返事をしたルドミラの、向けた視線の先でこちらを見たゲルハルトが笑った。
思わずルドミラは、ふいと顔を背けてしまう。
「なあ、頼むよ、先生」
すぐ側で誰かが手を合わせて懇願しているのが聞こえる。
「……仕方ないね」
吐息を漏らすと、ルドミラは嫌々ながら講義を再開する。
嫌々ながら、だと、自分では思っていた。
思い出と一緒に感情までも箱にしまって隅に押しやってしまった少女は、自分が笑っている事に、気がついていなかった。




