二話「協力者」
新キャラ登場です!
とある街の郊外。誰も寄り付かないような、暗い森の果て。そこに存在する、小さくも妖しい雰囲気を漂わせる家の中。大人びた容姿の少女が、紅茶を飲みながらのんびりとテレビを見ている。深い青のミニドレスに、肩の辺りで切り揃えられた銀髪。一人用のリクライニングチェアの横には長短それぞれの二刀。いかにも金持ちそうな彼女は、実のところ十八歳の少女なのである。彼女が見ているのは、"速報"とされたニュース。何でも、国営の博物館から巨大なダイアモンドが盗まれたという。ガラスのように透き通り、淡い虹色の輝きをもつその宝石は、世界でも珍しい貴重なものなんだそうだ。
「物騒なものだな、泥棒とは」
どのチャンネルをつけても、同じニュースが報道されている。"星の怪盗出現!? 虹のダイアモンド盗られる!"と。
「つまらないなあ···。何をつけてもこれか」
銀髪の少女は、憂鬱そうにテレビを消す。改めて、手元の品物に目をやる。
「やっぱり、これはかなりの価値があるね。数千億はくだらないよ」
満足そうにうなずきながら、目の前の少女に微笑みかける。金髪の少女は、慣れた様子で答える。
「まったく···あそこの警備がやわなだけよ。それに、"物騒"って貴方が言えたことじゃないでしょう?」
彼女は、銀髪の少女が大切にしているであろう二刀を指さしながら言った。銀髪の少女は、苦笑しながらそれに答えた。
「それもそうだね。で、そろそろこれの話をしようか? 麗奈」
そう言って、手元の宝石を持ち上げる。虹色の輝きを帯びたそれは、かなりの貴重品であることがうかがえる。
「で、いくら?」
「そうだな···僕的には、十万くらいであると助かるんだけど」
あまりに安すぎる値段にも、麗奈は怒ることなく頷いた。
「充分よ。私は、最低限のお金さえあればそれでいいからね」
「はあ······相変わらず、欲が無いよなぁ···」
困惑したかのように少女はつぶやく。それに対して麗奈は、微笑みを崩さずに言葉を発する。
「言ったでしょう? 最低限あればそれでいいと。それに······」
麗奈は、不敵な笑みを浮かべて言った。
「条件さえ果たしてくれれば、それで満足ですもの」
それを聞いた少女は、苦笑しながら続ける。
「やっぱり、相変わらずだね、君は。さて、これから僕はやることがあるのでね。帰ってもらっても?」
表情豊かな少女、麗奈は、そこで初めて失笑した。
「はいはい。次もよろしくね、柚希」
そう言い残し、早々に立ち去る。銀髪の少女の名は、影月柚希。名前と年齢以外が一切不明の、謎に包まれた少女。しかし、彼女は星雲麗奈の協力者。麗奈は、彼女を信用している。
さて、もうお気付きだろう。
そう、麗奈こそが、今世間を騒がせている星の怪盗その人なのだ――――――――。
次話の投稿は年明け後になります(・・;)