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第8話 ボスはとっとと倒すべき。

8話目です。


 何て事はない、ただノービスのプレイスタイルは絶望的なまでにパーティープレイに向いていないという事である。


 ノービスの持つスキル【死神の接触】はスキルさえ完全に発動してしまえば相手を確実に即死させる物だ。

 つまり、タンクもダメージディーラーも必要ない、というかむしろ足手纏いですらある。

 ノービスがLUK極振りの紙装甲である以上、全ての戦闘は相手が即死するかノービスが死ぬかの二択なのだから。

 そもそもゲーム初心者のノービスにとってパーティー間の立ち回りなど何一つ知らない為に最悪パーティー内でお互い足を引っ張り合う何て事にもなり兼ねない。

 などとノービスの懸念を告げてみるが、帰って来たのは「気にしない」という物だった。


 そして現在、言いくるめられたノービスはシェイカーとミタマの三人で草原の深部へと足を踏み入れていた。

 イワンから続く草原のボスモンスターを倒す事で入れる第二の街“ニツー”を目指して。


「ねぇ、シェイカー。本当に手伝って貰えるのかしら?」


「あぁ、大丈夫だよ。ギルドメンバーにもノービスを紹介したいし、それに、ノービスに色々聞きたい事があったから」


「聞きたい事?」


「うん、ノービスのLUKって今幾つ?」


 シェイカーの疑問に答えるために、自分のステータスを確認するノービス。

 因みに、現在ノービスのステータスはこの様なものとなっている。


◇――◇――◇――◇


PN:ノービス

LV:25

職業:放浪者


HP:80/80←20UP

MP:80/80←20UP


STR:0

CON:0

DEX:0

AGI:0

INT:0

MIN:0

LUK:620←70UP(+80)


スキル:所有数7

【投擲LV.10】←RANK UP?

【幸運上昇LV.8】

【強運LV.2】

【危機察知LV.10】←RANK UP?

【死神の接触LV.2】

【死霊術LV.5】

【鑑定LV.6】


アビリティ:【白霧の導き】


武器:穿鉄の細剣

上半身:放浪者のシャツ

下半身:放浪者のズボン

装飾:放浪者の外套


◇――◇――◇――◇


 いつの間にかスキルが二つランクアップ可能となっていた。

 レベルも一気に上昇している所を見るに、対人戦は経験値効率がすこぶる高い様だ。

 あの三人のPKもそれが狙いだったのかもしれない。

 ともあれ。


「現在25レベルでLUKが620。スキル込みで700になるわね」


 シェイカーとミタマが天を仰いだ。


「何と言うか、圧倒的だね。もう、本当に色々と」


「団長殿のLUKって今幾つだ?」


「276だね」


「……うわぁ、何か、こう、やべぇな」


 二人して初心者相手にぼろくそに言い過ぎでは無かろうか。


「うん、まぁ、いいや。取りあえずそこまでレベルが高いならボスモンスターも倒せるかもね」


「今更なんだけど、ここの草原のボスモンスターってどんなモンスターなの?」


「蛙だよ。ニメートル位でっかいの」


 中々の大きさであるが、【死神の接触】が効けば何の問題もない。

 しかし、さすがにボスモンスター相手には効かない可能性もある。

 その場合はシェイカー達に手伝って貰う事になるだろう。


「その化け物LUKなら見つかるか? あのレア」


「化け物……、いや、まぁ、いいわ。それでレアって何?」


 ノービスの疑問に答えたのはシェイカーだった。


「一つのフィールドに一体はいるレアモンスターの事だよ。この草原なら二本角の兎が出て来る筈なんだけど」


「そのレアモンスターと普通のモンスターの違いって何かあるのかしら?」


「基本的には他と比べて倒した時の経験値が多いのと、レアドロ――貴重なアイテムが手に入る可能性がある。後はただひたすらに出にくいって所かな」


「貴重なアイテムって、例えば?」


「装飾品の類だからブレスレットとか指輪とか――」


 スキル【強運】発動、【強運LV.2】のLUK上昇率は2・4倍、最終LUK値が1680となったノービスは辺りを見渡した。

 案の定近くの草むらから白い兎のモンスターが飛び出した。

 ホーンラビットならば幾度と無く倒して来たが、その兎の額からは二本の角が生えていた。


「ねぇ、シェイカー。レアモンスターってあの兎の事?」


「ん? あれ!? 嘘、ペネトレイトラビットじゃん! あれだよ!」


 シェイカーは興奮気味であったが、ミタマはノービスの方を向いてニヤニヤしていた。

 ノービスが何をしたか気付いたのだろう、何故突然そんな事をしたのかも。


「よし、倒しましょう。さぁ倒しましょう」


「カッカッカ!」


 異常な初心者プレイヤーと最高ランクプレイヤーの三人組を前に、草原のレアモンスターペネトレイトラビットが生存出来た時間はきっかり三十秒間だけだった。


 その後、シェイカーがレアアイテムである刺突の指輪を手にし、ノービスに譲渡するという理想的な形で手に入れた指輪を左手の薬指に填めてノービスが喜んでいたのは、完全に余談である。



◇◇◇◇◇



「嬉しそうだな、団長殿から指輪貰ったのがそんなに嬉しいか」


 そんなミタマのからかいも何回目だろうか、ミタマから何か言われる度にノービスは顔を引き締めているつもりだったが、ミタマから『表情筋ゆっるゆるだぞ』とまで言われたので無駄な努力だった様だ。


 そんなこんなで辿り着いた草原の最奥、周囲と何も変わらない様に見えるがこの先に結界の様な物があるらしく、そこを通過すればボスモンスターとご対面出来るらしい。


「まぁ、僕達がついてるから気楽に行こうか」


「そうだな、きついなと思ったら言ってくれや。ギルドメンバーは守ってやっからさ」


 シェイカーとミタマからそう言われながらノービスは結界の中へと入って行った。

 一瞬の違和感が過ぎ去ると、そこにはニメートル程の大きさの蛙がこちらを見ていた。


「蛙に睨まれるのは初めてだわ」


 そんな軽口を叩いたノービスは穿鉄の細剣を抜き、巨大蛙に向かって駆け出した。

 向かって来るノービスに対し、巨大蛙は口を開けて舌を勢いよく出した。

 ともすれば人の体を貫通しそうな巨大蛙の舌を、スライディングで躱したノービスはそのまま地面の石ころを二つ拾って上空に放り投げ、起き上がる時ついでに舌を切り付けた。

 投げられた石は寸分違わず巨大蛙の両目にそれぞれ命中し、「ゲロッ!?」という驚きの声が上がった。


「ふっ!」


 巨大蛙が怯んでいる隙にノービスは距離を詰め、巨大蛙に触れた状態で【死神の接触】を使用した。


 ――直接接触時【死神の接触】最終スキル発動確率100%


 ノービスがスキルを発動した直後、巨大蛙の体がグラリと傾き――


 ――呆気なく倒された。


「ボスモンスター相手でも即死効果は発動する、と」


 良い勉強になった、と笑うノービスに、フィールドの端で待機していたシェイカー達は呆然としていた。



次回、デジャヴ。

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