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第4話 こまめに強化はしておくべき。

長いなって思ったので分けました。前半の4話目です。


 ミタマとの会合を終え、ポーションをHP回復用とMP回復用の二種類買い足し、人目に付かない所でゲームをログアウトしたノービス――双葉は病院のベットから上半身を起こした。


「あぁ、楽しかった。……楽しかった、か」


 ふと双葉は自分の足を見詰める。

 双葉の意思に反し、最早動こうとしない自分の足を。

 だが、あの日、あの時から己の足で歩く事が叶わなくなっていた双葉からしてみれば、ゲームの中という制限はあれど、再び歩く事が出来たのだ。

 だから、あれぐらいの疲労は、まぁ、甘んじて受け入れようと思えるのだった。


 さぁ、今日はもう寝よう、VRシステムでは脳は休まらないそうだから。

 明日も一葉は来てくれるだろうか? 来てくれる様なら告げねばなるまい。


 ――“ありがとう”と、出来れば“愛してる”とも。



◇◇◇◇◇



「ミタマから聞いたよ! 双葉レアスキル持ってるんだって?」


 とりあえずあの馬鹿ミタマは次見掛けたらぶん殴る、と双葉は固く決意した。

 勿論【死の接触】を使いながら。


 双葉が初めてシード・オブ・ユグドラシルをプレイした翌日の事。

 昨日と変わらず時間通りに病室に入って来た一葉は尊敬の色を宿した目で双葉を見て来た。

 双葉が何事かと一葉を問い質した結果が先ほどの言葉である。


「まぁ、いいわ。私もミタマから色々教えて貰ったし」


「へぇ、例えば?」


「スキル屋さんが便利って事だったり、【鑑定】が使えるスキルらしかったり、あと、あなたが団長殿って呼ばれてたり色々と」


(ギルドの名前は何て言ったかしら?)


 しばし考え込む双葉を見て一葉は微笑んだ。


「――良かった」


「え、どうしたのよ? 急に」


 んー、と微笑みながらこちらを見る一葉に眉を顰めながら不満げに口を開くよりも早く。


「君が楽しそうに笑ってくれた」


「――」


 半開きになった口を噤み、再び口を開く。

 双葉の口から出たのは不満では無かった。


「ぁぅ、……き、昨日は、悪夢にうなされる事は無かったわ」


 微妙に一葉から視線を逸らしぽしょぽしょと、熱くなっていく頬を気取られない様に告げる。


「あなたのお陰よ、その、ありがとう」


「どう致しまして、双葉が喜んでくれて良かった」


 ベットの端に座る一葉にろくに目も合わせられない。

 もう一つの一葉に対する想いは、暫く伝えられそうになかった。



◇◇◇◇◇



 面会謝絶時間となってしばし、ナースによる身の回りの世話を受けながらも双葉は先程の一葉との会話を思い出していた。


「随分嬉しそうですね、何か良い事でもありました?」


「ふふ、何だと思います? 美香さん」


「一葉さん関連ですね。あ、足上げますよ」


「正解です。どうぞ」


 それからは互いの近況報告をし合っていた。

 双葉からは、新しくVRゲームを始めた事、そのゲームのタイトルがシード・オブ・ユグドラシルだという事、順調にゲームを進められた事、昨夜久し振りに良く眠れた事、一葉が自分を心配してくれた事。

 ナースからは、最近患者が増えて大変な事、お医者様が不足気味な事、たまにセクハラしてくる患者の事、自分もそのゲームをやろうかと思っている事、ナース情報によると一葉が近所のキャバクラに出入りしていたらしい事――またか、あの野郎――など。

 双葉にとっては中々有意義な時間を過ごせていた。


「はい。終わりましたよ」


「ありがとう、美香さん。それじゃあ、お休みなさい」


「お休みなさい、って、双葉さんはまだ寝ないんでしょう?」


「それはそうだけど、やっぱり挨拶は大事でしょうに」


「……本当は、あまり勧められないんですけどね」


「挨拶が?」


「ゲームが、です」


 わざと茶化した双葉にナースはいかにも『怒ってます』という声音で訂正する。


「でも、止めないんですよね?」


 ナースの問いに双葉は迷わず頷いた。

 それは、最初から決めていた事だから。


「一葉から貰ったプレゼントですもの、当分手放すつもりは無いわ」


 断言した双葉にナースはため息を吐いた。


「一葉さんも愛されてますねぇ、何で気付かないのやら」


 肩を竦めたナースは、最後にもう一度双葉に挨拶をしてから部屋を出ていった。


 さぁ、前回の続きから始めよう。

 差し当たっては草原にてレベル上げをば。


「……あ、一葉に本体の調整頼むの忘れてた」


 しかし、双葉はもうログインしてしまった。

 ログイン地点である人目に付かない場所、そのイワンの裏路地で双葉――ノービスは頭を抱えていた。


「……まぁ、いっか。次来た時にでも頼めば」


 さして重要な問題では無いと判断した双葉は、その足で草原の深部へと足を運んだ。



◇◇◇◇◇



 角兎24匹、針鼠17匹、水蛙9匹、締めて50匹のモンスターが今日のノービスの成果だった。


「正に大量ね。あぁ、ポイント幸運に割り振らないと」


 ここまでノービスがモンスターを倒せたのは、ノービスが戦闘をごく短時間で終わらせて動き回っていた事もあるが、周りにプレイヤーが全くいないのも原因の一つであった。


「皆どこに行ってるのかしら。レベル上がりやすいからこちらとしては有り難いのだけれど」


 因みに現在ノービスのステータスは次の様になっている。


◇――◇――◇――◇


PN:ノービス

LV:17

職業:放浪者


HP:42/60←35UP

MP:45/60←35UP


STR:0

CON:0

DEX:0

AGI:0

INT:0

MIN:0

LUK:450←80UP(+50)


スキル:所有数7

【投擲LV.8】

【幸運上昇LV.5】

【気運LV.10】←RANK UP?

【危機察知LV.7】

【死の接触LV.10】←RANK UP?

【死霊術LV.3】

【鑑定LV.4】


アビリティ:【白霧の導き】


武器:穿鉄の細剣

上半身:放浪者のシャツ

下半身:放浪者のズボン

装飾:放浪者の外套


◇――◇――◇――◇


 レベルが6から17へと大幅に上昇した。

 細剣の使い方が上達した。

 【死霊術】による主な攻撃方法がノービスと相性が良かった。


 色々な変化があった今回のレベルアップだが、それらよりも何よりも、――【死の接触】スキルの発動確率が100%となった。


 ここで一つおさらいしておこう。

 【幸運上昇】の効果はLUKのステータスを一定の値常時上昇。

 レベル5の現段階ではLUKが50ポイント上がるので合計値が500となる。

 【気運】の効果はLUKのステータスを戦闘時に一定の割合分上昇。

 レベル10の現段階では10割、つまり二倍になるので合計値が1000となる。


 では【死の接触】の効果は?


 “素手での接触を発動のトリガーとする。最終的な幸運のステータスを十分の一とした数値、それをスキルの発動確率とし、スキルが完全に発動した場合相手に即死効果を与える。”

 現在値1000の十分のーは100。

 よって、現段階において【死の接触】のスキルは最終的には100%の確率で必ず発動する事になる。


 人は確実という言葉に安心感を覚えるが、ノービスも例外では無い。


「凄く強くなった気がするわね」


 しかも良く見るとノービスの幾つかのスキルがランクアップ可能となっている。


「丁度良いわね、休憩にしましょうか」


 腰を下ろしたノービスは、念のため【危機察知】スキルで辺りを警戒しながらステータスを開いた。

 ランクアップ可能なスキルは二つ。

 【気運】と【死の接触】だ。


 【気運】は、【強運】と【凶運】の二つのランクアップ先がある。

 【強運】は純粋に【気運】の上位互換で、【凶運】は相手の幸運ステータスに対するデバフを行なうスキルの様だ。

 ノービスは余り迷わず【強運】にランクアップさせる。

 幸運を上げる事が目的なので、デバフなどの特殊効果は正直必要ないのだ。

 なお、【気運LV.10】と【強運LV.1】の効果は同等の物なのでステータスに変動は無い。


 次に【死の接触】のランクアップだが、ランクアップ先のスキルは【死神の接触】というスキルの一つだけだった。

 しかし、スキル効果は素晴らしい。

 素手で接触し、幸運値の十分のーを発動確率として相手を即死させるのは同じだが、その発動確率の半分、つまり幸運値の二十分の一を発動確率として武器を介して相手を即死させるのは実に素晴らしい。

 躊躇う理由が無いので即座にランクアップ。

 これもステータスの変動は無し。

 しかし、このスキルばかりを使うと折角のゲームが詰まらなくなってしまいそうだ。

 出来るだけ細剣の腕も上げていこう、とノービスが決意していた時だった。

 頭の中に【危機察知】スキルによる警鐘が鳴り響いたのは。



次回、PVP。

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