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シード・オブ・ユグドラシル~幸運極振り死神さんは、確定必中即死使い~  作者: 砂場の黒兎
白昼夢と流星雨 The Daydream and Stardust
27/40

第25話 《白昼夢⑮》分断、二人の戦場

25話目です。



 “白昼夢”はその目を爛々と光らせノービス達を追いかけていた。


(あぁ、あぁ。これはすぐに追いつかれるかな?)


 全身が黒い為にあの“白昼夢”は本体で間違いないだろうが、何故姿を隠す事を止めたのだろうか。そんな余裕を残す事すら出来ない程に怒っている?


(まさか、流石にそれは無いでしょうけれど……。まぁ、姿が見えてるだけ比較的対処し易くなってるから考えなくてもいっか。……そろそろ追いつかれる)


 “白昼夢”がこちらに攻撃してくるタイミングでノービス達が乗っているダイヤウルフから離脱しようとトリスとアイコンタクトを取る。トリスが理解出来ているかは疑問だが、悠長に喋っている暇は無いので勘弁願いたい。


 ――今。


 その言葉がノービスの口から出る事は無かった。ノービスが乗っているダイヤウルフの走りが乱れた為だ。急いで隣を見るとトリスも同じ――


「――は?」


 ノービスは己の目を疑った。ノービスが操る二体のダイヤウルフ、その額に大型の鳥類の嘴が突き刺さっていた。

 形状と攻撃方法からノービスはこの大型の猛禽類の正体が事前情報でしか知り得なかった“スナイプホーク”であると辺りを付け――すぐさまトリスを押し飛ばし同じ様に離脱したノービスは“白昼夢”に噛み砕かれたダイヤウルフを起爆した。


「どわっ!?」


(ごめんトリス、許して。……にしても何で今になって他のモンスターが? “白昼夢”と戦っている最中は邪魔が入らないと思っていたのに……、“白昼夢”がさっきの結界っぽい何かを解いたから邪魔が? いや、さっきの世界が変わっていく感覚はあれ以降一度も感じられない。依然として“天鈴山”の頂上は“白昼夢”が持つ能力の適用範囲内、の筈……ん?)


 未だに“白昼夢”の能力が解ける気配は無い。仮に、ノービスの予想が全て合っていて、“白昼夢 デイドリーム”の能力が『無制限に相手を騙す』という物だとすれば。

 プレイヤーやNPCに関わらずもっと別の、それこそ周囲に生息するモンスターでさえも能力の対象になり得るのではないか。

 例えば、自身を味方だと周囲を欺き、縄張りに侵入して来た二人の人間を絶対に葬るべき敵であると誤認させる事も可能なのではないだろうか。


『■■■――』


 その答えは“白昼夢”の周囲に集うスナイプホークやロックディアー、それ以外にも数多のモンスターが入り乱れて数百に及ぶ混成群を作り上げた“白昼夢”自身が正しいと証明していた。


「……嘘だろ」


「さながら第二形態って所かしら?」


 トリスの呟きにノービスは軽く返し、モンスターの大群を見据える。


 崩すのは、容易い。



◇◇◇◇◇



 細剣からスリングショットに持ち替え、専用の球を三つほど選びながらノービスは言った。


「モンスターの群れは私が全て引き受けるわ」


「は、ぁ!? いや、流石にあれは一人じゃ無理だろ! 俺も協力するから――」


「――優しいのね」


 この期に及んで尚万が一を想定し安全を取ろうとする、大多数はそんな彼を臆病者と言うだろうか。間違ってはいない。トリスは今トラウマと相対し、決別を計ろうと戦っている。

 ふとした拍子に心の奥底から恐怖が溢れ出る事もあるだろう。だからトリスは大事を取ろうとした。


(でも、貴方の中での万が一っていうのは私やヴェンデルの事でしょう?)


 彼は事ここに至っても自身の安全など考慮に入れていない。心中を占めるのは仲間や親しい人の安全のみ。

 ノービスはそんな彼だからこそ、こんな所で歩みを躊躇わせたくないと思うのだ。


「安心なさい、私は死なないわ。仮に死んだとしても復活するし」


「でも」


「それに、こんな有象無象にあなたの力を使うべきでは無いわ。……まだ重ねられるでしょう?」


「……あぁ。あと五回でいける、が」


「なら良し。それに、この程度のモンスターが私を倒せる訳が無いでしょう?」


 ここまで言ってようやく思い出したらしい。トリスと狩りに行っていた時はあまり使っていなかったから仕方無いといえば仕方無い。


 今“白昼夢”は多数のモンスターの群れの奥にいる。トリスが“白昼夢”の元へ向かうならば全部とは言わないまでも群れの9割引き付ければ十分だろう。

 今のノービスであれば不可能ではない。

 スリングショットに専用弾を込め、ノービスは叫ぶ。


「何があっても振り返らないで、行きなさい!」


「――応!」


 トリスは駆ける、“白昼夢”に向かって。

 それを勇気と捉えたのか、はたまた無謀と捉えたのかは知る由も無いが、それを視認した“白昼夢”はトリスにモンスターの大群の4割を差し向ける。

 このまま行けばモンスターの群れに押し潰されるのは自明の理。ここからどう足掻いて見せるのか。好奇心と期待を込めて“白昼夢”はトリスを注視し――


 ――全く予期していなかったノービスの方向から、大地を劈く爆音を網膜を焼く閃光が辺りを支配する。


 一瞬、“白昼夢”の能力に乱れが生じた。感覚が鋭敏な狼を素体としている以上それらの影響をダイレクトに受けるのは仕方の無い事ではある。

 幾ら自分を騙してもこの手のダメージは体に蓄積するのだから能力を己に使った所で無意味だろう。そう考えた“白昼夢”は先程の命令を遂行する様にモンスター達を誘導しようとするが、最早その思考誘導は意味を成さない。

 先程の閃光と爆音、己の敵愾心を煽る匂い、そして“白昼夢”の一瞬の隙。それによりたった一瞬で、トリスに向かっていた群れの4割も、“白昼夢”の近くに待機していた残りの6割も、ノービスが絶対的な脅威であると本能的に理解した。


 モンスターの混成群は、余す事なくノービスを排除せんと押し寄せた。



◇◇◇◇◇



 ……まさか10割釣れるとは。


 内心引き気味になりながらノービスはポーションを服用して状態異常の回復に努める。ノービスが放った三つのスリングショット専用弾――爆音と閃光で相手の足を止め、刺激臭で相手のヘイトを掻っ攫っていく特殊弾――は使用した順に一定時間経過で爆音が周囲に響く“轟音弾”、こちらも一定時間経過で閃光が周囲を照らす“閃光弾”、一定時間経過でモンスターに敵意を植えつけるらしい特殊な匂いを辺りに散布する“逆鱗弾”と名付けられているのだが、それらは近くで放つと使用者にも影響が出てくる。“轟音弾”は耳に、“閃光弾”は目に、“逆鱗弾”は鼻にそれぞれ尋常でないダメージを与えてくるのだ。

 正直欠陥品では無かろうかと思わなくも無いが、今日までに実用耐え得る物を作ってくれたのだから文句は言うまい。


(専用弾はあと二つ残ってるけど、使えそうに無いわね)


 押し寄せるモンスターの大群を見てそう思ったノービスはスリングショットをしまい込み、右手に穿孔鉄の細剣を、そして左手に残照の細剣を持ち、眼前を見据える。

 トリスの方は見ない。そんな暇はもう無いし、何よりトリスならば無事に“白昼夢”の元へ行けるだろうと思っているから。


(……借りるわね、アルバ)


 かつてアルバが使っていた、陽光の残滓をその身に宿すスティレット。満月が昇るこの場には不釣合いなその刃は欺瞞に満ちた空間に屈する事無く光り輝いた。


 そして、百を超えるモンスターの大群とたった一人のプレイヤーが激突する。

 猪、蛙、鹿、狼、鷹、猿、蛇。数多のモンスターがノービスを葬り去らんと行動し、圧倒的物量でその体を押し潰す。

 普通のプレイヤーならば純然たる暴力に為すすべも無く飲み込まれ、そのHPを残さず塵に変えられる事だろう。


 彼女が普通のプレイヤーであるならば。


「――《一之針 紫電》」


 紫色の光を帯びた穿孔鉄の細剣がノービスの宣言に従い前方に不可知の斬撃を放つ。一度も空振る事が無ければ最大十回攻撃が可能という特殊効果により【死神の接触】と併用したノービスの攻撃は当たれば死ぬのを良い事に初撃でモンスターを十体葬った。


「――《二之針 灰桜》」


 薄い灰色染みた赤の火花を纏った残照の細剣が続くノービスの声により前方を貫き、明らかにリーチの外であるモンスター諸共内側から爆ぜる。


「――《三之針 蒼雹》」


 緑掛かった青の冷気を宿した二種の細剣が全方位に刺突を放ち、ノービスの攻撃が当たるや否やモンスターの群れは瞬く間に凍て付き崩れ塵となる。


 足に噛み付いてくるならば【死神の接触】を使い蹴り上げ、上空からの攻撃は【危険感知】で把握し回避、前方から来る物量に任せた突撃は併用した【死神の接触】により当たれば死ぬに任せて瞬く間に群れの総数を減少させていく。

 一体消えればその隙を埋める様に別のモンスターが行く手を阻み、ノービスが葬った分だけ後続から次が補充される。どちらも限界など無いのではないかと錯覚するほどの消耗戦。それはまるで大穴に吸い込まれる濁流の様であった。

 しかしこの戦いに永遠などは存在しない。何時だって終わりは唐突に訪れる。


 ずっと脳内で鳴り続けていた【危険感知】の警鐘が数瞬途切れた。モンスターの効率的な殲滅方法に思いを馳せていたノービスは意識を前方に戻し、巨狼がノービスを喰らわんと口を開けて来ていた。

 警鐘が鳴らない事と巨狼の体毛が白く輝いていた事から“白昼夢”の幻影だろうと結論付け、再びモンスターの殲滅作業に戻るノービス。彼女の体を口を開けた白狼の幻影が何の手応えも無く通り過ぎ――


「――ぎッ」


 尋常ならざる痛みがノービスの体を貫いた。



◇◇◇◇◇



 トリスは走る。彼女が受け持った苦労を無駄にしない為に。

 “白昼夢”に向かって走り出すまで後ろ髪を引かれる思いでノービスを心配していたのだが、正直必要無かったなと背後から感じる数多の死の気配を感じつつ苦笑する。

 転職してから特殊な環境に限り知覚が鋭敏化され始めたトリスは己の持つあるスキルについて考える。

 スキル【頂への歩み】。効果はかなり複雑な物で、高地及び山岳フィールドでの戦闘中特定のアーツを何回も使用し続けるとアーツの種類や使用回数によって数多の自己強化が付与されるというスキルだ。スキルレベル1で《共鳴のフィドル》、スキルレベル2で《静謐のハープ》、そしてトリスが今重ね続けているスキルレベル3の《英傑のバグパイプ》というアーツを覚えられる。そして、その《英傑のバグパイプ》を十五回連続使用する事により得られる特殊効果こそ今のトリスが求める物。


 すなわち、精神系状態異常に対する常時完全耐性である。


 この異常なスキル効果もトリスが現在就いている高山特化の職業の特異性が故。取得可能スキルの八割が高山戦闘に特化しているという、他の優秀な職業の中でも一際異彩を放つそれがトリスが持つ最大の切り札なのだ。


「さっきぶりだな“白昼夢”。元気にしてたか?」


『■■■――』


 トリスがこの場で、いや、“白昼夢”に出会ってから初めて聞く苛立った様な感情を宿した唸り声。

 言葉は分からないが何となく何が言いたいのかは分かる。


「あいつは何か、って所か? 簡単だよ、仲間だ。お前を倒す為に力になってくれた、大切な仲間なんだ」


『■■■■■』


「だからこそ、あいつが整えてくれたこの場を無駄にする訳にはいかないんだ。“白昼夢”、お前の相手は、俺だ」


 その言葉で“白昼夢”は闘志でも敵意でも無く、初めて殺意をトリスに向けた。それは目の前の存在を英雄候補から“トリス・ファルカトラ”という一個人として見始めた事の証左であり――


 ――これから“トリス・ファルカトラ”を手加減などせずに全力で殺す事の証明である。


『■■■■■――――!!!』


 咆哮が木霊し、三度、世界は変質する。

 モンスターの群れの扇動を放棄した“白昼夢”の足元から三体の巨狼が現れる。白い体毛から幻影なのだと一目瞭然ではあるが、トリスはその幻影から言い様の無い悪寒を感じた。

 あれに触れるのはやばそうだな、と警戒を強めるトリスに向かって“白昼夢”は一体を除いた白狼二体と共に襲い掛かる。


「前とは違うんだよ! 《共鳴のフィドル》ッ!」


 辺りに擦弦楽器の軽快な音色が響き、トリスの体に淡い光が灯る。トリスが使用した【頂への歩み】のアーツ、《共鳴のフィドル》の効果は純粋に自身のステータスを上昇させる物だが、このアーツの効果を発動させるには必ず共通の敵に二人以上で挑むシチュエーションを作らねばならない。というのも《共鳴のフィドル》は二人以上で作られたパーティーの全員にステータス上昇の全体バフを付与する、逆に言えば一人では絶対に使えない使用のアーツだからだ。

 互いに“共鳴”出来る相手がいなければアーツを使う資格すらないという事なのだろう。

 さておき、この場においてトリスが《共鳴のフィドル》を使用した回数はこれで三回目となった。一応事前に説明はしていたがもしかしたら突然身体能力が上昇した事に戸惑っていたかもしれない。

 三回連続使用によるステータスの上昇率は30%。一回使用する毎に10%ずつ上昇する計算である。ここにパーティーメンバーの人数の分更に上昇するのだが二人分ではあまり当てにしない方が良いだろう。


(……ん? 若干上昇率上がってる?)


 一週間の調整で覚えた感覚よりも若干身体能力が上がっている気がしたトリスだが、その違和感を振り払い目の前の敵に集中する。

 もはや全力で殺しに掛かる“白昼夢”と戦っている最中に余計な事を考えている暇は無い。装備や《共鳴のフィドル》により一週間前と比べ物にならないほど上昇したステータスではあるが“白昼夢”と戦うにはまだ足りない。


 右前方から襲い掛かる白狼を自身の剣で切り裂――く途中で白狼に実体が無い事を確認し避けに徹する。反対側からも襲ってきたもう一体の白狼も同じ様に避け、本命の”白昼夢”本体が来るであろう方向へ目を向ける。しかしそこに“白昼夢”はおらず、再び襲い掛かって来た白狼二体をしっかりと回避し、トリスは己の感覚を研ぎ澄ます。


 ――真後ろ。


 トリスは己の剣を背後に振り抜き、毛皮を突き破り肉を貫く確かな手応えを得た。


『■■!!』


 “白昼夢”の物と思しき短い悲鳴を聞き、“白昼夢”に追撃を試みるトリスだったがそこには既に“白昼夢”の姿は無く、能力を使い夜闇に紛れた様だ。この一瞬ならば攻撃はされまいと《英傑のバグパイプ》を使用したトリスは重厚なバグパイプの音色を夜空に奏で、性懲りも無く襲い掛かる白狼達を軽やかに避ける。

 トリスは“白昼夢”に初めて己の剣で痛手を与えた高揚感が湧き上がるのを抑えて再度白昼夢の気配を探る。


「ぁぁああああああ――――――!!!」


 しかし、トリスの鋭敏な知覚が感知したのは“白昼夢”の気配等ではなく、遥か後方でモンスターの群れを抑えている筈のノービスの、苦痛に悶える叫び声だった。



◇◇◇◇◇



 血を流され、皮を焼かれ、肉を抉られ、骨を断たれ、四肢を砕かれ、臓腑を穿たれ、心臓を刳り貫かれ、命の灯火を掻き消される。

 自身がその様な状態に陥っているのではないかと錯覚する程の苦痛。

 明らかな異常事態にノービスは思わず穿孔鉄の細剣と残照の細剣を取り落とし、両足に力が入らなくなるが、危険な状態であるのにも関わらずノービスの【危険感知】の警鐘は喧しく脳内に響き渡る。


「ぁ、ぐぅ!?」


 そんなノービスに構わず、むしろ好機とばかりに押し寄せるモンスターの群れが襲い掛かる。悠長に【死神の接触】を使える状態では無くなったノービスはその場に蹲りながら【死霊術】で出せる範囲の死体を取り出し何とか『近い敵に体当たりした後に自爆』という簡単な命令を繰り出し、震える手でポーションを取り出して中の液体を嚥下する。

 手の震えが収まった所でノービスは己のステータスを見た。


◇――◇――◇――◇




PN:ノービス


LV:57


職業:星屑細剣士


状態:幻惑《鋭痛》・幻惑《鈍痛》


HP:210/210


MP:210/210




STR:0


CON:0


DEX:0


AGI:0(+20+4)


INT:0


MIN:0


LUK:830(+100+20+100)




スキル:所有数12


【投擲ⅡLV.11】


【幸運上昇LV.10】


【強運LV.10】


【危険感知LV.8】


【死神の接触LV.9】


【死霊術LV.10】


【鑑定LV.10】


【テイム:――LV.1】


【細剣術LV.6】


【健脚LV.10】


【韋駄天Lv2】


【ファルカトラ流細剣術LV.7】




【――――】


【――――】




アビリティ:【白霧の導き】【流星の瞬き】




武器:穿孔鉄の細剣・ディアーホーンスリングショット


上半身:白鉄の鎖帷子・クロード鋼の部分鎧・砂塵核の籠手


下半身:白鉄糸のスカート・クロード鋼の脚甲


装飾:砂塵のスカーフ・迷彩トカゲの外套・刺突の指輪・流星雨のペンダント・黄金色のタリスマン




◇――◇――◇――◇



 ――やはり。

 あの白狼に触れてからだ、この異常は。あの“白昼夢”の能力ならば相手の痛覚を騙して幻痛とでも言うべきものを引き起こす事すら容易なのだろう。


「ぐッ……」


 未だに全身を支配する薄っぺらな痛みに呻きながらも何とか立ち上がり、二振りの細剣を拾い上げる。警戒する様にモンスターと爆発が飛び交う辺り周辺を見回し、――【危険感知】の警鐘を聞く。

 慌てて視線を前に戻すと再度ノービスに向かって口を開き飛びかかる白狼の姿を見つける。


「――くっ、そ!」


 地に伏せる様に転がり白狼をやり過ごしたノービスは白狼の動きを警戒し続ける。


 ――痛みで頭が回らなくなり始めていたノービスは気付かない。先程幻影である白狼に【危険感知】は反応しなかった事、そして未だに鳴り止まない【危険感知】の警鐘の意味に。


 相対するノービスにあくまでも愚直に突進を繰り返し行う白狼を先程と同じ様にかわし、すぐさま白狼に向き直るノービスの左足に何かが突き刺さる。


「ッ痛!?」


 突然襲い掛かる痛みに思わず左足を見たノービスは、己の足に突き刺さるスナイプホークを直視する。

 この段階に至りノービスは上空で数多のモンスターがこちらを狙っている事に気付く。【死霊術】で作られた死体爆弾の中には上空の敵に対応した物は無い。今までスナイプホークなどの飛行タイプのモンスターを野放しにしていたのだ。

 爆発音が止む。それはノービスの残弾が尽きた事を証明しており、未だに数え切れない数のモンスターがノービスに向けて襲い掛かるという事でもある。


『■■■――』


 白狼がノービスに唸り声を上げる。その声に合わせてノービスの上空を旋回していたモンスターは一斉に急降下を始める。ノービスが左足のスナイプホークを処理したとしても逃げ切れる速度ではなく、ならば【死神の接触】で上空のモンスターを削りきれるかというと、痛みが未だに引かない今のノービスではほぼ不可能だろう。そして仮に上空のモンスターを全て倒したとしても地上のモンスターが間髪入れずにノービスに向かって襲い掛かる事だろう。その間白狼が律儀に待ってくれるとは到底思えない。必ずどこかで邪魔が入る筈だ。

 どう動こうとノービスの体力は即座に削りきられて死ぬだろう。ノービスは乾いた笑いを零す。


(あぁ、不味いなぁ、これは――)


 ――詰んだ。













「【エスケープ】」



ヒャッハー!設定開放だー!(後々話す事無くなるパターン)

◇◇◇◇◇

【ファルカトラ流細剣術】

・《一之針 紫電》、でんきタイプ、条件付多段ヒットアーツ。細剣に紫色の光を纏わせ、相手に一撃目を入れた所からスキルアシストが始まる。

・最大10回、相手に攻撃を当て続ければ当て続ける程攻撃力と剣速が上がっていくアーツだがそもそもが【ファルカトラ流細剣術】なのでモンスターが二撃目以降を避けきるのはほぼ不可能。

・なお、このアーツは即死技では無い、あの結果は【死神の接触】併用の結果である。

・《二之針 灰桜》、ほのおタイプ、貫通式爆発タイプアーツ。細剣に桜色の灰を纏わせ、貫いた際にその灰が飛びリーチ外の相手後と貫通する。要するに細剣のリーチを伸ばしてる。

・相手の傷口に灰が侵入し、傷口を広げるように爆発する。つまりはテオの粉塵で竜激砲。

・なお、このアーツは即死技では無い、あの結果は(ry

・《三之針 蒼雹》、こおりタイプ、全方位状態異常付アーツ。細剣に蒼い冷気を纏わせ、周囲に計30発前後の刺突を繰り出し、攻撃に触れた相手を一定確率で凍結させる。

・一定確率ですよ一定確率。ちなみにこのアーツは割りと自由が利き、刺突以外の攻撃を行ってもアーツは発動する。

・なお、このアーツは(ry

【左手武器】

・シード・オブ・ユグドラシルにおいて二刀流は職業、スキルの有無に関わらず使用可能である。左利きもいるしね仕方無いね。

・アーツに関しても右手の武器左手の武器どちらでも使用可能だ。がやはり利き腕でないとバランスが崩れたりと戦闘では利き腕とは逆の手に武器を持つ事はあまり無い。

・ノービスのあれは当たれば相手が無条件に死ぬので手数が多くなる方を選んだというだけ。

【頂への歩み】

・トリスが新しい職業に転職した時に手に入れたスキル。スキルレベル1で《共鳴のフィドル》、スキルレベル2で《静謐のハープ》、スキルレベル3で《英傑のバグパイプ》を覚える。

・《共鳴のフィドル》は二人以上で結成されたパーティーのメンバー全員のステータスを上昇させる効果を持つアーツ。《英傑のバグパイプ》は連続使用回数に応じてアーツ使用者に精神系状態異常の耐性を与える。

・狩猟笛ガチ勢がメンバーにいた時の安定感は異常。

・ぶっちゃけバグパイプと高山戦闘特化でトリスの職業ほぼほぼバレてると思うんですが作中での発表はもうちょい先です。

【“轟音弾”“閃光弾”】

・“鏖魔”死すべし慈悲は無い。

【“逆鱗弾”】

・あらゆるモンスターのヘイトを掻っ攫う地味に凄いパチンコ球。ノービスも原材料は知らない。

◇◇◇◇◇

取り敢えずこんな所かなと。


次回、佳境。

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