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シード・オブ・ユグドラシル~幸運極振り死神さんは、確定必中即死使い~  作者: 砂場の黒兎
白昼夢と流星雨 The Daydream and Stardust
24/40

第22話 《白昼夢⑫》反撃は徹底的にやるべき。

短いです、すいません。

ともあれ22話目です。



 ノービスを捕らえたサンドゴーレム、いや、グラヴァルゴーレムの行動パターンは一つを除き案外単純な物であった。

 右の拳を叩きつける、それを連続で行う。両足のストンプ。前方にジャンプ。右足で地面を思い切り叩きつけ、部分的に身体を構成する砂利を無定形に戻し全方位にダメージを与える。基本的にはこの5パターンと移動、そして防御だけだ。

 厄介なのはこの防御。前方及び左方から来る攻撃を全て左手で捕らえたノービスを使ってパリィしてくるのだ。そりゃもうノービスにもダメージが入る。がりがり入る。

 しかもシステムアシストを受けているのかトリスの【ファルカトラ流剣術】にも対応してくる。めっちゃいたい。


 仕方がないので皆には右方向から畳み掛けて貰っているが、若干決定打に乏しい感じである。

 砂利に包まれているとは言えノービスにはスリップダメージが入らないのは幸運だった。今はぶんぶん振り回されながら少しずつ買い足したポーションを嚥下しているが、捕縛に伴うスリップダメージも受けてしまっては回復が間に合わなかった事だろう。


「トリス! もう少しで脱出すぶぇ」


「いや、大丈夫か?」


(気にしないで、こいつの変な挙動のせいで背骨がやばくなってるだけだから。)


 とはいえそろそろ本当に脱出しないければ。皆が思う様に攻撃出来ないのは盾となっているノービスのせいであるし。

 現在グラヴァルゴーレムは左手をノービスの両足から膝上くらいまで纏わり付かせており、いつでもノービスで防御出来る様に胴体部からさほど距離を離さずに持たれてしまっている。これから脱する方法を脳裏に浮かべるノービスだったが、それを実行する為にグラヴァルゴーレムには一度左手を大きく伸ばして貰わなくてはならない。


(まぁ、誘発して貰うしかないわよね)


「トリス、左から軽く攻撃してくれる?」


「は? 何を……」


 いきなり突拍子も無い事を言い出したノービスに呆れた様な視線を送るトリスだったが、冗談で言ってる訳ではないのだと察したトリスは共にグラヴァルゴーレムに対して攻めあぐねていた二人に指示を出す。


「パンプキン、ババロア、15秒間アイツの攻撃を凌げるか?」


「はい!」


「えぇ、15秒なら。でもトリスさんは何を……」


「ノービスが何か考えてるみたいだから、な!」


 グラヴァルゴーレムの真正面を離脱したトリスはそのまま大きく迂回してノービスの元へ。何かしらのスキルを使っているのかグラヴァルゴーレムのターゲットがトリスに向くことは無かった。

 ノービスとは比べ物にならない速度でグラヴァルゴーレムに再度近づいたトリスはスキルを乗せていないただの袈裟切りを放つ。

 すると、グラヴァルゴーレムはパンプキン達の方を向いていたのにも関わらず、的確にノービスを持っていた左手をトリスの攻撃に重なる様に突き出した。


(よし)


 腕が伸びきった所でノービスはとあるスキルのアーツを使用する。

 そのアーツの名は《死屍収集》。レベル上限が開放されてからの戦闘で水を得た魚の様にレベルが爆上がりした【死霊術】の新たなアーツだ。

 効果は単純なもので、《損傷維持》で自身の所持品に変えた死体をストレージに入れることが出来るという物。このアーツの優秀な所はストレージに入れた状態ならば放って置くと《損傷維持》の効果が切れるという事が無く、さらにはストレージに入れたまま《死霊爆弾》などのアーツを使用する事も出来るのだ。

 先程のスタブボア狩りで何匹かを《死屍収集》で爆弾に変えた状態でストレージに収納していたノービスはその内の一匹をグラヴァルゴーレムの丁度肘関節辺りに落とし、起爆する。


「やったか! ぁ痛い」


「あ、すまん」


 腕を伸ばしきって貰わなければ目測が狂い、左腕を削り切れない可能性があった。ノービスの意図をすぐさま読み取って行動に移してくれたトリスには感謝しなければならないだろう。

 だからトリスの軽い一撃をさっくり喰らってしまったのは気にしないでくれたまえ。実際に相手の左腕をもぎ取れた上にやっと戦線に復帰出来る様になったのだから。


 ともあれ脱出成功である。ここからは総攻撃で削り切る。


「パンプキン! ババロア! こっちは脱出できたわ! 相手の攻撃に気を付けて一気に片付けましょう!」


「はい!」


「了、解!」


 アーツの光を灯し、グラヴァルゴーレムの拳を弾きながら二人は答えた。

 こちらも、何度も盾にしてくれた鬱憤を晴らさせて貰おう。


「――《一之針 紫電》」


(新しく手に入れた【ファルカトラ流細剣術】の実験台になってくれる?)


 ノービスが持つ細剣が紫色に淡く光り、瞬く間にグラヴァルゴーレムの身体は切り刻まれていく。



◇◇◇◇◇



 切り裂き貫き叩きつけ、断ち切り穿ち薙ぎ払う。

 凡そ通常の細剣の使用法とは思えない様な使い方をしつつ、ノービス達はグラヴァルゴーレムを追い込むに至った。

 

 相手の肉盾だったノービスに大抵の攻撃が防がれ思う様に攻撃が出来ず本領を発揮する事が出来なかっただけで、本来であればゴーレムを砂に変えるだけの実力は持っているのだ。

 ノービスやトリスは最早言うまでも無いが、パンプキンの戦闘能力も素晴らしい物だった。

 職業【騎士】、騎乗生物の所持と【騎乗】スキルの取得によって開放される二次職だが、この職業はテイムモンスターとの連携を大前提として取得スキルが組まれているのでそもそもプレイヤースキルが高くなければ【騎士】の強みを十全に生かす事が出来ない。

 そんな【騎士】を選ぶだけあってパンプキンの流れる様な連携攻撃は、正直ノービスがどうアドバイスを出せば良いのか分からなくなる程には洗練されている。

 ……まぁ、彼の武器は短剣二本で軽装を纏い、しかもテイムモンスターはダイアウルフという「【騎士】? 【レンジャー】じゃなくて?」といった装いではあるが……、システム上はれっきとした【騎士】であるのは間違い無いのだろう。

 アーツの実験は中々納得のいくものだったのでとどめの一撃はパンプキンに任せる事にしたノービスは彼らのサポートに徹する。


「《ウルフファング》!」


 半円を描く様に放たれた一対の剣撃は相手の首を正確に捉え、やがてグラヴァルゴーレムの身体を構成する砂利や砂は辺りに散らばり、塵と化した。

 初日の兎を越える大激闘であった。


「私のせいだけど、思ったより長引いたわね。どう? 良い経験にはなりそう?」


「あ、はい! 大きさも大体これくらいなので暫くはこのサンドゴーレムを中心にレベル上げていこうと思ってます!」


「あ、コイツはレアモンスターだから普通のサンドゴーレムじゃないわよ?」


「え」


 捕まっている最中に【鑑定】を使って初めてこのモンスターがペネトレイトラビットと同じレアモンスターの類ではないかと分かった。名前の通りその体は砂利で出来ていたので原種と見分ける方法は砂か砂利かと言った所だろう。

 その日はパンプキンとババロアの二人とフレンドとなって別れ、ノービスとトリスはスタブボアを中心に“天鈴山”のモンスターを虐殺していった。


 現在のノービスのステータスは次の通りである。



◇――◇――◇――◇




PN:ノービス


LV:35


職業:星屑細剣士


状態:押し付けがましい神の加護


HP:135/135


MP:135/135




STR:0


CON:0


DEX:0


AGI:0(+20)


INT:0


MIN:0


LUK:730(+100+20+100)




スキル:所有数10


【投擲ⅡLV.8】


【幸運上昇LV.10】


【強運LV.5】


【危険感知LV.7】


【死神の接触LV.7】


【死霊術LV.8】


【鑑定LV.8】


【テイム:――LV.1】


【細剣術LV.10】


【健脚LV.9】


【ファルカトラ流細剣術LV.3】




【――――】


【――――】




アビリティ:【白霧の導き】【流星の瞬き】




武器:初心者の細剣


上半身:放浪者のシャツ


下半身:放浪者のズボン


装飾:放浪者の外套・刺突の指輪・流星雨のペンダント・黄金色のタリスマン




◇――◇――◇――◇


 着々と白昼夢打倒に向けて準備が整っていく。

 明日、工房連合で武器や防具を受け取りに行けば後はただひたすらにレベルを上げ続ける事しか、最早出来る事が無い。

 取り敢えずはスタブボアを狩り続けよう。資金の調達はゲームの基本らしいし。


 こうしてノービス達二人はスタブボアを狩り続けるのだった。



◇◇◇◇◇



 復讐、因縁、助力、暗躍。


 様々な思惑が交差する中、満月の空の下狼は独り牙を研ぐ。







 ――あぁ、穴倉の底から見えるこの光は何だ?


 ――幾度と無く浴びた、黄金を溶かし込んだかの様な光は。


 ――これは、……月光か?


 ――あぁ、あぁ!


 ――この光を!


 ――この力を!


 ――私は何度渇望した事か!


 ――もっと近くで、この月の光を、私に!



『■■■■■』



 ――あぁ、あぁ……。


 ――また、お前なのか。


 ――私に闇の夢を見せ続けて、お前は楽しいか?


 ――犬畜生め。



『■■■■■』



 ――そうか、そうだろうな。


 ――お前が感情を抜きにして私を捕らえているのは知っている。


 ――だが、忘れるな?


 ――たった今、夜天の封印は破られた。


 ――残りの封印が解かれるのも時間の問題だろう?


 ――その時までここの私は眠っていよう。


 ――あぁ、



 ――愉しみだ。



次回、月下の狼煙。

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