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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第一章

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08.先生をハメる

 どうやって黒幕を引きずり出そうかと考えていたら、倒した警官の一人の懐で電話が鳴った。
 手をいれて、鳴ってる端末を取り出す。
 すぐにピンと来た、黒幕だ、と。

 警察官は勤務中に警官専用の携帯電話を持つ。
 このご時世なのにガラケーに近いそれは、セキュリティと物理的な破損に強くした特別な端末だ。
 けどこれはそうじゃない、タダのスマホだ。
 最新型のリンゴ印のスマホ、本来警官の勤務中にあってはならないもの。

 その上。

「先生、か」

 画面に表示されてる発信者の名前は「秘書」とあった。
 何の秘書だろうかと、俺は気を引き締めて電話にでた。

『私だ、相手は捕まえたのかね』
「……ああ」

 俺は声を籠もらせて、ものすごく曖昧な返事をした。

『ならいつも通り処理したまえ。確認したら報酬は振り込んでおく』

 電話先の相手、「秘書」とやらは一方的にいって、そのまま電話を切った。
 着信履歴から一応電話番号をメモして、スマホの持ち主の警官を起こす。
 襟を掴んで、軽く頬をはたく。

「起きろ」
「う……ん。こ、ここは……?」

 もう一回頬をひっぱたいた、乾いたいい音が周りに響く。

「な、なんだ!?」
「まだ寝ぼけてるのか? もう一発いっとこうか?」
「――っ!」

 警官はカッと目を見開く、ようやく現状を認識出来たようだ。

「単刀直入に聞く、秘書って誰だ」
「なっ――」

 警官の顔が強ばった。

「な、なぜそれを」
「今電話がかかってきた」

 スマホをちらつかせた、ますます顔が強ばって、今度は怯えた様な表情になった。

「だれだ、この秘書ってのは。いやそうじゃないな」

 あえてそこで切って、強調して、聞き直す。

「誰の秘書だ?」
「い、言えない」
「なに?」
「そんな事、死んでも言えな――」

 ぐしゃ! べきっ!

 俺は持っている彼のスマホを目の前で握りつぶした。
 恐喝だ、言わないとこうなるぞ、って示した。

 警官はますます怯えて、でも口は貝のように閉ざした。
 まだ足りないみたいだな。

 スマホを無造作に投げ捨てて、今度は地面を殴った。
 乗算が乗らない、近接攻撃レベル7だけのパンチ、でも十分だ。
 埠頭のコンクリートの地面は粉々に割れた。

「なっ――」
「お前の頭、コンクリートほど硬くはなかろ?」
「や、やめてくれ! たのむから!」
「なら教えろ、誰の秘書だ」
「……」
「わかった、じゃああっちに聞くから」

 俺は拳を握って、すぅと引いた。

「わ、わかった! 話すから」
「だれだ」
「あ、新井」
「新井?」
「新井高彦先生だ、国会議員の」
「……へえ」

 予想よりもでかかったな。

     ☆

 その後警官を軽く殴って気絶させて、まずはスマホで検索した。
 さすが国会議員、軽く調べただけでネットに情報がわんさか出てきた。

 新井高彦、この県から選出したれっきとした国会議員だが、軽く調べただけでも黒い噂が出るわ出るわの、疑惑のデパートって感じのやつだ。

 黒い噂含めてのザ・政治家って感じのヤツ。
 警官から聞き出した名前が本当なのか半信半疑だったけど、多分こいつで間違いないだろうな。

 さて、どうするか。
 まずは会わなきゃな。

 会うために最適のスキル――はちょっと足りないか。
 元が200で8割の160ポイントが必要のスキル、そして今のポイントはここにいる連中をなぎ倒して149と、ちょっと足りない。

 仕方ない、熊の一匹でも倒して――。

「うおおおおお!」

 いきなり雄叫びが聞こえた。
 みると、もう一人の警官が起きていた、そいつは起きてただけじゃなく、なんとパトカーに乗って、思いっきり俺に突っ込んできている。
 油断した。俺を轢き殺して口封じするつもりか。

「悪いな……ポイントになってもらおう」

 軽く拳を握った、パトカーが猛スピードで突っ込んできた。
 俺はさっ、と半身で避けて、すれ違ったパトカーの運転席に向かってラリアット気味のパンチを放つ。
 近接攻撃レベル7、攻撃力アップ(回避)レベル1、カウンター。
 諸々の乗算が乗った一発、腕がフロントガラスを砕き、フレームを引きちぎる。
 パンチが警官の肩をえぐった。

 手応えあり、肩の骨が粉々に砕けた感触がした。

 パトカーはコントロールを失って金井興業が乗ってきたトラックに突っ込んでとまった。
 警官はエアバックに突っ伏して動かない。
 まあ死なんだろ、わざわざ外してやったんだ。

 それよりも。

 ――スキルポイントを20獲得しました。

 熊と同等のポイントをゲットして、160が足りた。
 俺は早速必要なスキルを取る。

-----スキル-----
スキルポイント:9/999

取得スキル(8/10)
近接戦闘LV7
攻撃力アップ(回避)LV1
透明人間LV2
カウンター
必要ポイント減少(80%)
スキルポイント増加(200%)
完全翻訳
自由訪問
-------------

 自由訪問。

 会おうとする人間に絶対に会えるというだけのスキルだ、あった後の事は何も保証されないが、生きてさえいる限り絶対に会える。

 スキルは獲った、これで新井先生とやらに会える。
 あとは……。

     ☆

 東京は永田町、議員会館。
 岩手からエグゼクティブ1で東京に戻ってきて、搭載してる乗用車でこの議員会館に来た。
 ちなみに志穂は別れてきた、彼女の事は解決したし、この先の事は巻き込まない方がいいって思ったからだ。

 議員会館は検問やらガードやらが厳重だったが、自由訪問スキルを発動したらオールパスで素通りした。
 古いが格式張った廊下を進み、新井の部屋にやってきた。
 秘書がいたが、発動したスキルの効果は「一回会うまで」永続なので、全くの見知らぬ来訪者である俺に秘書は。

「先生は奥です、どうぞ」

 と快く通してくれた。
 使おうと思えばアメリカ大統領でもローマ法王でも会える強力なスキルだが、効果は会うまで。
 だから後回しにしたし、大使と「つながり」を持てるの立てこもり事件を進んで解決した。

 まあ、それはともかく。

 奥の部屋に新井がいた。
 ネットで調べて出てきた写真と同じ、五十台の小太りの男だ。
 写真で見たときも思ったけど、政治家っぽい……いやなタイプの政治家っぽい顔だな。
 まあ顔はその人が送ってきた人生を表すものだから、五十代ともなれば当たり前だけど。

「何だねキミは。おい小倉! 何をしていた、この男はなんだ」

 自由訪問が「会うまで」なのをよく表したシーンだった。
 会えた新井は当たり前の反応をした。

「わめかない方がいいぞ、センセイ。これから話す事を考えればな」
「なに?」

 新井の表情が変わった。

「金井興業、そして漁船の県ですよ」
「……」

 今度は眉間に深いしわを作った。

「なんの事か分からないのだが」
「その二つの事をしって、一直線にセンセイに会いに来た人間に何も分からないと言うのはどうかな」
「……何が目的だ、金か」

 よし、引っかかった。

「金には興味ない」
「なら?」
「センセイが密入国の手引きと、戸籍の販売――いやロンダリングって言うべきなのか? それをやめて欲しい」
「それは聞けんな。あれは俺の一存じゃやめられん」
「センセイも使われる方ということか。なら教えて欲しい、何処で誰に言えばやめられるのかを」
「言える訳がないだろ」

 新井は鼻で笑った。

「むしろ推測出来ているのではないか? ここまで来たからには」
「金井興業、漁船での密入国、そしてネット上のあなたの噂……そのままということか」
「そうだ。若いの、悪いことは言わん」

 新井は鼻で笑った。直前に俺が眉をひそめたからだ。
 敵は思った以上に強大だった――という演技。
 新井はそれに引っかかった。

「全てを忘れろ、今なら何も聞かなかった事にしてやる。でなければ――闇から闇、だぞ」

 俺を恫喝する新井。

「せ、先生! 大変です」

 外にいた秘書が血相をかえて飛び込んできた。

「なんだ小倉、大変? 今お前の尻拭いを――」
「ここと地元事務所の電話に電話が殺到してます!」
「電話?」
「ネットの配信で先生の発言が本当なのかと」
「……なに?」
「ふっ」

 俺は口角を持ち上げ、種明かしをした。
 スキル「自由訪問」のおかげでボディチェックとかされないで、ずっとそのままにしておけたもの。

 スマホのカメラ、ネットの生配信にしていたものを新井に見せた。

「き、貴様!?」
「そういうことだ、今の話は全世界に流れた。さすがに初めての配信だからリアルタイムで見てた人間は少ないけど、動画そのものはネットにあるから拡散されるだろうな」
「な、なんの証拠も根拠もない話だ!」
「そういうレベルの話じゃないな」

 俺は更に笑った。

「センセイが自分の口で密入国の手引き、それに戸籍ロンダリング、更に黒幕を匂わせた発言……なんでそれをいったのか」
「ぐっ――」
「うっそぴょん――ですめばいいな」
「貴様!!」

 新井はいきり立って俺につかみかかろうとした。
 俺は透明人間を発動した。

「貴様どこ行った! 出てこいいいいいいいい!」

 絶叫する新井を置いて、俺は透明人間でここから立ち去った。
 物理的には殴らない、もう十分だ。
 後は世論が新井を制裁する、殴るよりも遥かにきつい制裁だ。

 新井はもう……おしまいだ。
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