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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第一章

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05.スキルの相乗効果

 乗用車にのって、エグゼクティブ1に戻ってきた。
 車をエグゼクティブ1の車庫にいれて、キャンピングカーの中に戻る。

 電気をつけて、まるでどこぞの迎賓館かのような、大理石張りの豪華なキャビンに入る。

「うわぁ……何ですかこれ……すごくないですか……」

 さっき助けた女の人があんぐりと、口を開けた状態で間抜けな顔をした。
 俺はキッチンにいって、冷蔵庫の前に立った。

「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」
「え?」
「コーヒーと紅茶だ。何だったらワインもあるけど」
「えっと……こ、紅茶で」
「ん」

 俺はサッと沸かしたお湯で二人分の紅茶をいれて、キャビンに戻ってきた。
 超豪華キャンピングカー、エグゼクティブ1の中で所在なさげにしている彼女の前に置いた。

 自分の分も持ってきて、一緒に飲んで、一息ついた所で聞く。

「色々聞きたいことがあるけど……まずは名前だな。俺は風間シンジ、あんたは」
「さ、佐山志穂って言います」
「佐山か。で、なんであんな山の中にいたんだ?」

 聞くと、彼女は顔を曇らせた。
 あたりか、って思った。

 彼女をここまで連れて帰ったのは、訳ありだと直感的に思ったからだ。
 県庁のウェブサイトでも熊注意報が出るくらい、他の県に比べて熊の出現数が圧倒しているそこで、彼女はぱっとみ、何の準備も用心もしてない格好だ。
 山というよりは街中でショッピングをしている、そんな風に見える格好で熊に追われていた。

 何かある、と俺は直感的に思って――それは正解だった。

 その「何か」もいくつかの可能性を想定してて――その一つに彼女が引っかかった。

「く、首をくくろうと山に入ったんです、でも熊に出会って、すごく怖くなって、つい逃げ出してしまって……」
「なるほどな」

 普段着のまま山に入るなんて、山を舐めきってる自殺志願者か、ガチの自殺志願者のどっちかしかない。
 彼女は後者だったようだ。

「何があった」
「……実は」

 彼女の口から聞いたのは、ちょっとコメントに困るような話だった。

 彼女の実家は農園を経営していた。
 それなりの土地と毎年それなりに安定した売り上げを保っていたところだった。
 それがある日、まったく前兆なく両親が姿をけした。

 残された手紙を読む間もなく債権者が押し寄せた。
 安定した経営に見える裏側では、設備投資などの借金がかさみ、一方で売り上げが上がらず実質破綻になり、破産を余儀なくされたこと。

 娘に当てた親の手紙は「子どもに心配をかけたくなかったから黙ってた」という、筋の通ってるんだか通ってないんだかの内容が書かれていた。

 そうして彼女は、実家ごと家をうしなった。

「借金はどうなったんだ?」
「普通の借金はお父さんたちのもので、私は全然関係なかったんですけど」
「けど?」
「その、怖い人から借りたお金が。子どもなら親の借金返す義務があるだろうって」
「ありきたりな言い回しだ」
「それでもう、どうしようもなくなってしまって。私、高校卒業した後家でしか働いた事なくて、だからどうしようもなくて」
「なるほどな」

 彼女の実家の様なタイプだと、家族経営の中小企業みたいな形態で、家業をこの先継ぐつもりだったんだろう。
 それが予兆なく倒産したんだ、ショックも大きいだろう。

「頼れる人はいないのか?」

 彼女は首を振った。
 まあ、それがあれば首をくくろうとはしないか。

「あの……」
「うん?」
「本当にありがとうございます。助けていただいて、本当に感謝の言葉もありません」
「……」

 自殺する人間だからもっと目が死んでるのかと思えばそんな事はなかった。
 ありがとうって言ってくるときの目はしっかりしてて、感謝が滲み出ている。

 あっちの世界で成り行き上いろんな人を助けてきた、心から感謝してる人間とそうじゃない人間の見分けがつく。
 彼女は、してもらったことに心から感謝するタイプの人間みたいだ。

 こういう人間は、もっと助けてあげたくなる。

「行く当てがないのなら今日はここに泊まっていくといい」
「え? でも」
「乗りかかった船だ、俺の準備が整ったらその怖い人達から借りた金の事をどうにかしてやる。それまでここにいていいぞ」
「えええええ!? あのでも、こ、怖い人達ですよ?」
「これだろ?」

 俺は人差し指で頬に傷があるってジェスチャーをした。ヤクザをさすジェスチャーだ。

「は、はい」
「だから準備を整えるんだ。熊よりは強いと思えないから今でもぶちのめせるが、念を入れてな」
「あっ……」

 彼女はハッとした。
 俺が熊を一撃で倒したことを今更思い出したようだ。

「って訳だ。いいか」
「でも――」
「一度助けた人間がその後意外な形で悲惨な結末を迎えた、ってのをみるのは一番きっついんだ。ここまで来たら黙って助けられろ」
「は、はい!」

 彼女は背筋を伸ばして、膝を揃えて頭を下げた。

「よ、よろしくお願いします」
「ん」

 デモデモダッテをしない素直な性格。
 この成果だけで、助けてやる価値はある。

 俺はそう思った。

     ☆

 次の日、朝起きると彼女はぐっすり熟睡していた。キャビンの立派なソファーで、毛布に丸まってぐっすり寝ている。
 よっぽど疲れたんだろう、寝顔からそれが見てとれる。

 俺は彼女を起こさず、乗用車に乗り換えて再び山にむかった。

 念を入れて、もう一つスキルが欲しい。
 そのための稼ぎをするつもりだ。

 山に入って、熊を探して回った。
 早速熊に出くわした。
 数字上、県内で一日に二件は熊の目撃例がある土地柄。しかもそれは「人里」での目撃例だ。

 山に入るとあっさりと遭遇する事ができる。

 熊は睨んでくる、俺はスタスタと向かって行く。
 こんな風にする人間なんていないのか、熊はあからさまに困惑していた――所に眉間にパンチを叩き込む。

 熊は吹っ飛ばされたが、もがいて起き上がった。
 助走をつけないで、静止状態からのパンチだと一撃で倒しきれんか。
 そんな事を思いながら追いついてトドメをさして、20ポイントを獲得して更に熊を探す。

 次の熊に出会った、今度は遭遇するなり襲いかかってきた。
 俺は熊のぶっとい腕と爪を避けながら、攻撃力アップを発動させて、全力の一撃を叩き込む。
 が、やっぱり倒しきれなかった。
 ワンパンもらった熊はさっきのヤツよりもダメージが大きくて起き上がれないが、でも這って逃げる程度の体力が残ってる。

 それも追いついて、トドメをさして20ポイント回収。
 スキルポイントが67になって、欲しいスキル分がたまった。

 それを試すために次の熊を探す。
 十分近く歩いて、本日三頭目の熊と遭遇。

 二頭目の時と同じ、近づいて至近距離から攻撃を躱し続ける。
 攻撃力アップ(回避)の効果を上げていく。

 熊は俺の行動に激高して攻撃に激しさが増した。
 風をビュンビュン引き裂く腕の振りは背筋に汗が伝うほど、俺は慎重にかわし続けた。
 やがて攻撃力アップ(回避)の効果が最大になったとき、俺は新しいスキルを獲った。

 元が70、80%で56になったスキル・カウンター。
 カウンター攻撃の時1.2倍の攻撃力が出るスキルだ。

 何故これを獲ったのかというと……昨日のはミスだったからだ。
 彼女を助けるために高いコストを払って近接戦闘のレベルを上げたが、スキルの効果は基本乗算だ。
 一つをあげきるより、まんべんなく取って言った方が重ねがけで効果が高くなる。
 今日はそれをやりに来た。

 近接戦闘レベル7
  ×
 攻撃力アップ(回避)レベル1
  ×
 カウンター

 三つの乗算が重なった状態で渾身のパンチを放った。

「あっ……」

 効果は抜群だった。
 思いっきり横っ面を殴られた熊の首は直角に折れて、その後ぶらーん、と垂れ下がった。

 倒れた熊をよそに、スキルを確認する。

-----スキル-----
スキルポイント:11/999

取得スキル(6/10)
近接戦闘LV7
攻撃力アップ(回避)LV1
透明人間LV2
カウンター
必要ポイント減少(80%)
スキルポイント増加(200%)
完全翻訳
-------------

 スキルはとった、効果も確認した。
 次は、借金取りの「怖い人」達を退治するか。
+注意+
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