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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第三章

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09.エンドレスナイトメア

 鉄砲玉に当て身を喰らわして静かにさせる。

 事故(、、)に集まってきた野次馬が騒ぎ出した。
 俺はアルベルトに向かって、

『ここの処理を任せてもいいか』

 と聞いた。

『分かりました、お任せ下さい』

 アルベルトはキリッとした顔で頷いた。
 はじめて会ったときから感じていた出来る役人オーラ、それがいっそ強まった。

 俺は鉄砲玉とタカナシを引きずって歩き出した。

「な、なんですか」
「黙ってついて来い」
「日本人!? これどういう――」
「高速鉄道の話」
「――っ!」

 タカナシが息を飲んで黙ってしまった。
 そんなタカナシを半ば引きずって、人気の無い所に移動した。

 事故現場からだいぶ離れて、廃れた町工場らしき所にきた。
 さび付いた鉄柱、剥がれかけたトタン板。
 高校時代こんな所で仲間達と秘密基地作ってたな、なんて思い出した。

 そこでタカナシから手を離して、気絶したままの鉄砲玉を放り出した。

「あ、あんた、何者なんだ」
「なるほど、高梨浩(たかなしひろし)、普通に読めるの方の高梨か」

 スキル【読心】で名前を念の為にチェックする。

「お前に聞きたい話がある」
「お、俺はなにも知らないぞ」

 高梨は動揺した様子で、食い気味に否定してきた。

「まだ何を聞きたいのかも言ってないけど?」
「さっき高速鉄道の事をいっただろ。あの話、お、俺は何もしらない」
「素直に吐いた方がいいと思うんだけどな。これ、実際に見てるだろ」

 そう言って、気絶したまま倒れてる鉄砲玉に視線を向けた。
 高梨も鉄砲玉を見た。動揺してたのが困惑に変わった。

「それって、飲酒運転の暴走車じゃないのか?」

 いまこの瞬間でも、野ざらしの廃工場跡でも分かるくらい、鉄砲玉は酒の匂いをプンプンさせている。
 俺も【読心】がなかったら本当に鉄砲玉か判断に迷うところだ、ましてや高梨、困惑するのはわかる。

「こいつはとある所から送り込まれてきたヒットマンだ。この状態でお前に突っ込んでも飲酒運転の事故ですませられるからな」
「そ、それはあんたの妄想だろ」
「3千万、安いな」
「――っ!」

 驚愕する高梨、この世で一番怖い物を見てしまったかのような顔をする。

 【読心】で更に心の中を読んでいた。

 高梨は借金があった、パチンコやらなにやら、ギャンブルで作った借金だ。
 もちろんちゃんとした所から借りれなくて、ヤミ金かそれに近いところでかりたものだが、それが膨らみに膨らんで、3千万という額になった。

 それを肩代わりしたのがC国の連中、アンディ・ロウだ。
 借金を帳消しにする代わりに、鉄道建設の調査資料と引き換えに――って事になった。

『マフィアとヤミ金のやりとりだぞ、なんで知ってる』

 驚きの理由まで分かった。
 なるほど、金は一銭もこいつの懐に入ってきてないのか。
 ヤミ金への借金をC国マフィアのアンディが肩代わりした。
 確かにこれはなかなか、普通じゃ知りようがない情報だ。

 逆にそれが武器になる。

「そこまで掴んでるってことだ。作った理由も、金の流れも」
「だ、だから何だってんだ」

 震え声になった。俺は更にたたみかける。
 C国を追い出すためには、スキルだけじゃない、一般人の目にも見える証拠が必要だ。

「証人になれ、そうすれば助けてやる」
「ふ、ふざけるな!」

 高梨は身を翻して逃げ出した。
 必死に逃げるそいつを追いかけながら、考える。

 捕まえるのは簡単だが、証人・証拠にするためにはどうしたらいいのかを考える。
 【読心】もする。

『つかまってたまるか。借金さえなければ、それさえなければもう一発当てて夢のセレブ生活をするんだ』

 有益な情報は得られなかった、高梨の醜い欲望だけが伝わってきた。
 しかたない、とりあえず捕まえて、時間を掛けてゆっくり落とそう。

 そう思って歩くスピードをあげて、高梨を捕まえようとした。

 ギギギギギ――とブレーキ音がけたたましく鳴り響いて、一台のワゴン車が高梨の先に回り込んだ。
 ドアがスライドして開いた直後、驚き戸惑ってる高梨を車内に引きずり込んで、猛スピードで発進して去っていった。

『こいつを上手く消せば、俺がアンディの後釜だ』

 とっさにワゴン車の中にいる男達に読心をかけたら、こんな思考を読み取った。
 なるほど、現地――ここI国に入り込んでるマフィアの一人か。

 俺はスマホを取り出して、スキル【仮想空間】を使う。
 高梨が持っているスマホにハッキングをして、録音をする。

「お前らだれだ! 俺をどうする気だ!」

 わめく高梨の声が聞こえる。まだしゃべれるって事は、すぐに始末されないってことだろう。

「シロ」
「はい、ご主人様」
「録音したファイルを俺のスマホに送っといてくれ」
「承知いたしました」

 シロに言いつけをした後、【仮想空間】を解いて現実に戻る。
 さて、後は……。

     ☆

 車の中、高梨は屈強な男に羽交い締めにされ、身動きがとれなくなっていた。
 ジタバタもがいてると、ボキッ、という音が体の中を伝って響いてきた。

「うがあああああ!」

 のどから絞り出す様な悲鳴をあげる高梨。
 後ろに回された彼の手、その指が折られてしまった。

「静かにする、うるさい、殺す」

 車の中、一番地位の高そうな男が片言の日本語で高梨に言った。

「そ、そのなまり方……C国の人間か」
「分かってるなら話はやい。お前を殺す」
「なっ――」
「安心する。痛い、拷問、ない。死ぬが大事」

 それを言われて、高梨はまた暴れ出した。

「ふざけるな! 下ろせ! 俺をここから下ろせ!」
「動くな」
「こんなん聞いてないぞ俺は! 取引だったんだろ! お前らC国に調査データを渡す、見返りは三千万! お前らの大好きな取引だったんだろ!」
「それ、前のボス。俺しらない」
「ふざけるな! ボスが変わったからって約束事を反故にしていいはずがないだろ!」

 思いっきりわめく高梨。
 彼の言うことにも一理があるが、この場にそれを聞き入れる相手は存在しない。

 ボス格の男さえも黙り込んでしまった。
 誰一人として、高梨の怒鳴りに反応しようとしない。

 何をいっても殺すだけ、というのがヒシヒシと伝わる雰囲気だ。

 高梨が自力で逃げ出せる可能性はゼロである。
 彼はただの勤め人だ、学生時代ずっと文化系の部活に所属してきたほどの、筋金入りの運動音痴でもある。

 一度酔った時にケンカをした事があるが、翌日に同僚に見せてもらった動画は、へっぴり腰でへろへろパンチを繰り出してる情けない姿だった。

 そんな彼と、本職のマフィア達。
 自力で逃げ出せる可能性は限りなく低い――を通り越してゼロだ。

「だれか……助けてくれ……」

 それを理解して、神頼みをはじめた高梨。
 次の瞬間、パン! って音がした。

 ワゴン車が何らかの力で止められて、車に乗っていたものが全員、慣性で前のめりに倒れてしまった。

     ☆

「とまったか」

 人気の無い公道、そこにワゴン車が串刺しになっていた。
 いや釘付けって言うのか?

 先回りした俺は道路標識を一本抜いて、それを真上から投げつけて、ワゴン車を道路に縫い付けた。

 ゆっくりと近づく、中からマフィアの男が出てくる。

 何人か頭から血を流しているが、その分怒ってて、()る気満々だ。
 連中は一斉に襲いかかってきた。

 パチン。

 【遠距離攻撃】と【カウンター】と【先制攻撃】。
 指パッチンで襲ってきた連中を一瞬で倒した。

 舞い散るお札の中、ゆっくりを歩いてワゴン車に近づく。

 中に一人取り残された高梨は頭をぶつけて、気絶していた。
 俺はスマホを取り出して、シロを呼びだして聞いた。

「録音できたか」
「はい、ファイルを送りました」

 シロが送ってきたファイルを聞く。
 高梨のスマホを使って録音、盗聴したファイルだ。

 状況と合わせてそれなりの説得力を持つ、これがあれば事足りるだろう。
 同時に、高梨にすこし腹立った。

 C国に情報を売り渡して、日本に不利益をかぶらせたのに、そのことを「取引」だと言い切ったこいつ、腹がたつ。

「……夢の生活がお望みだったな」

 少し考えたあと、スキル【夢操作】を取得した。
 文字通り、相手の夢を操作するだけのスキルだ。

 スキルを発動、パラメータを設定。
 相手は高梨、頻度は毎回、内容は悪夢、展開はくり返し。
 それを設定して、高梨にスキルを発動。

 すると、高梨がうなされだした。
 頭をうって気絶した高梨、悪夢を見始めた。

 この先こいつは、寝る度にずっと同じ悪夢を繰り返す。
 俺が取り消さない限り、一生それを繰り返す。
+注意+
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