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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第三章

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07.パンドラの箱

『ご、ごろ、れ……』

 歯が粉々に折れたアンディ、空気抜けした口から出た言葉は、ケガとは反比例する気の強いものだった。

 殺せ。

 最初はヤメロと悲鳴を上げていたが、落ち着いて来たのか、投げやり半分で突っぱねるようになった。

『か……カイさん』

 避難していたアルベルトがやってきて、初めて聞く名前で俺を呼んだ。

『危うく本当の名前で呼ぶところでした。カイなら東洋人でもどこの国かは区別つきませんよね』

 読心でアルベルトの心を読む、とっさの機転がすごいと思った。
 日本語も使ってないし、さすがだ。

 俺も完全通訳を使って、I国の言葉で話した。

『なんだ?』
『そこまでにした方が、それ以上だと本当に』
『大丈夫だ、殺しはしない』

 アルベルトにそう言って、もう一度アンディの方を向く。
 顔を掴んで、至近距離からすごむ。

『殺しはしないさ。殺しは、な』

 アンディはボコボコになった顔で俺を睨む。

     ☆

 ターン!
 ドアを蹴破ってはいると、中にいたもの達が一斉にぎょっとしてこっちをみた。

 マンションのワンフロア、スペースは広くてオフィスの様な感じだが、中にあるものはただのオフィスじゃない。

 棚一面にびっしり陳列されたスマホ、全部が起動中で、男がそれを順番に操作してる。
 なんかのゲームみたいだ。

 それが10ブロックくらいあって、スマホだけで1000台以上ある。

 更にパソコンも同じようにびっしり並んでて、画面はやっぱりゲームになってて、こっちは自動で動いている。

『何だお前は!』
『警察か!?』

 中にいた男たちがすごんで向かってきた。
 向かってきた男を殴り倒すと、残ったもの達もバットやらパイプ椅子やらで殴ってきた。

 そいつらも軽くカウンターで返り討ちにした。

 お札と血反吐が飛びかって、一瞬で全員を倒した。

『大丈夫ですかカイさん……ここは?』

 遅れてやってきたアルベルト、部屋の中を見て眉をひそめる。

『なんだろうな。おい、ここはなんだ?』
『……』

 俺に襟をつかまれ、ここまで引きずってこられたアンディは沈黙を決め込んだ。
 喋るつもりはないんだろうが、そんなのは意味がない。

 スキル、読心。
 心の中を読んで、それを差も最初から知ってたかのように口にする。

『ネットゲームとスマホゲームのアイテムとか金を稼いで、ユーザーに売ってるんだろ。最近はユーザー減ってるけど、金を出す30とか40代の数はそんなに変わってないから儲けも減ってないんだよな』
『なっ――』

 愕然とするアンディ。
 なんでそんな事を知ってるのかって顔だ。

『なんでそんなことを知ってるんですか?』
『いろいろあってな』

 アルベルトには適当にごまかして、俺もスマホを取り出した。

『頼んだぞ、シロ』
『はい、ご主人様』

 スキル、仮想世界。
 電子の精霊・シロが俺の命令を受けて、目の前にあるスマホやパソコンに侵入した。

 画面が一斉にバグった(、、、、)

『こ、これは!?』

 驚愕するアルベルト。

『ここの資材を壊しただけじゃたいしたダメージにはならないだろ? ハッキングして、全部のデータを消してやったのさ……被害額は――』
『6億円くらいになります』
『――ざっと六億円ってところだな』
『――っ!』

 アンディは俺を睨んだ、歯ぎしり――する歯もなくて、ただ俺を睨んだ。

『さて、次行くか』
『まだあるんですか?』
『こいつ、I国で色々商売してるみたいだからな。それを片っ端からつぶしていくんだ。ほとんどが非合法かグレーの商売だから、つぶした方がよかろう』
『……そうですね』

 クラブにいたときは俺を止めようとしていたアルベルトだが、そういうことならば、と完全に受けいれ、こっちの味方になった。

 俺は血走った目でにらみつけてくるアンディの前でしゃがみ。

『殺すと思ったか? 殺さないよ』

 と、ニコッとしながら言った。

     ☆

 なぐり倒された数十人のチンピラ、炎上する倉庫。

 炎に照らし出されたアンディの顔はまだ(、、)怒りに染まったままだ。

『コカイン全焼、末端価格で20億円ってところか。よくもまあこんなに持ち込んだもんだ。それに』

 俺はため息突いて、アルベルトの方を向いた。

『これを使って高官に賄賂してたな』
『なっ、本当ですかそれは!?』
『I国には悪いけど、コカインの方がI国の貨幣よりも価格が安定してるからな。賄賂もらう側もドルか日本円、さもなくば麻薬の方がちゃんと金になるもんさ』
『……』

 アルベルトは複雑そうな顔で黙り込んだ。
 貨幣の価値はほぼ国力を反映すると言っても過言ではない。
 国内の高官が金じゃなくて、コカインを賄賂に受け取るというのは二重につらい事実だろう。

『それが誰に渡ったのか分かるのですか』
『ああ、証拠はないが』
『大丈夫です、相手さえ分かれば』

 高官への賄賂、それは今回の鉄道の一件と密着している。
 アルベルトからすればそれ以上に重要な情報は無い、気になるのは当然だ。

 俺はそれをアンディから一通り引き出せた。

『さて、これでざっと五十億円分』

 引きずってきたアンディの前にしゃがんで、まっすぐ見る。
 怒りがますます大きくなる、俺をますます睨んでくる。

『お前のI国での産業は全滅したわけだが――次はC国、本国のものだな』
『なっ!』
『何を驚いてる、当たり前だろ?』

 俺はにこりと笑った。

『パンドラの箱はさ、一度開けたらあらゆる災いが一掃されるんだ』
『……っ』
『殺しはしない、全部、綺麗さっぱり掃除してやるから』
『う、うわあああああ!』

 アンディの顔から怒りが消えた、代わりに、それまでになかった焦りと絶望が滲み出た。
 食って掛かってくるアンディの関節を更に外して動けなくして。

 被害額の大きさはそのままこいつが悪人である度合い。
 悪人にはもうすこし、絶望をしててもらおう。
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