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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第三章

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01.道を切り開いた者たち

 エグゼクティブ1に異世界のような身分の訪問客がやってきた。


 キャビンの中、L字型の高級ソファー。
 そこに背筋をピンとして座っている女。
 仕立てのいいドレスを纏い、顔はベールで隠されている。

 貴婦人然とした格好だが、うっすらと見える顔は意外と若いぞと思った。

「えっと……もう一度お名前を聞かせてもらっても?」
「I国の第二王女、マリアンナ王女殿下です」

 俺の質問に答えたのは近藤瑞希。
 こちらは芸能人らしいしゃれた格好で、エグゼクティブ1に来るまでにつけていたサングラスはテーブルの上に置かれている。

「ちなみにI国にファミリーネームという概念はないわ。マリアンナ、がフルネームです。名字か名前、どちらで呼ぶかで迷う必要はないの」
「それはわかったけど、どうしてあなたが王女様を連れてくるんだ?」

 そこがまず気になった。

 最初は志穂経由で瑞希に連絡が来た。
 会って話がしたいといわれたから、エグゼクティブ1に招いたら、瑞希はこの女――マリアンナ王女とやらを連れてきた。

「何回かI国に招かれた事があってね」
「知ってます!」

 興奮気味で会話に割り込んできたのが志穂だった。
 瑞希の大ファンである彼女は、普段とは違って目がキラキラ輝いてる。

「I国は国民も今の国王も瑞希さんの大ファンで、数年に一回瑞希さんを国賓で招くんですよね! 前回招かれた時のコンサート生放送は視聴率93%。ライブ中は道路から人間が消えて、その日の交通事故がゼロになったって聞いてます」
「えらいよく知ってるな」
「常識です!」

 お、おう。
 という声がのど元まででかかった。
 さすが信者、基準が普通の人間とは違う。

 驚きの数字が出てきたが、日本のコンテンツが海外で化け物並の視聴率を出してるのはネットでよく見かける話だから、目の前の瑞希もそういう一人なんだと納得した。
 同時に、王女とのつながりも理解した。

「それでI国の王室とつながりがあったのか」
「そういう事ね」
「で、その王女を連れて来て、俺にどうして欲しいんだ?」
「それはマリアンナ王女から直々に。えっと、英語は……」
「大丈夫だ。『はじめまして?』」

 瑞希を遮って、マリアンナをまっすぐ見つめて、話しかける。
 意識して、スキル・完全翻訳をつかった。

 ベールの下で、マリアンヌが驚いた顔をしたのが変わった。

『パンドラは……わたくしの国の言葉も?』
『……ああ』

 パンドラっていわれた、つまりはそういう事か(、、、、、、)と、これからの話の方向性を理解した。
 同時に、何故瑞希なのかも――もう一つの意味で。

『あなたが本当にパンドラなの?』
『そのために瑞希に引き合わせてくれってお願いしたんだろ? あの動画でパンドラに助けられた彼女だから、パンドラの事を知ってるかもしれないと』
『はい……』
『で、何をして欲しい』

 マリアンナは少し迷って、ちらっと瑞希をみた。
 瑞希が頷くと、彼女は背中を押してもらったかのように語り出した。

『十数年前、我が国は日本に高速鉄道の建設を依頼したのです』
『高速鉄道か』
『いわゆる新幹線です』
『なるほど』
『日本から来た皆さんは数年間の時間をかけて地形の調査をして、建設の計画を立ててくれました』

 相づちを打ちながら耳を傾ける。

 デジャブを感じた。
 なんか似たような話をネットで見た気がする。

 まあ、そんなのがなくても。
 この話で、パンドラ=俺にすがってくる時点で話の展開が読めるってもんだが。

『それが契約をかわす直前になって、C国が参入してきました。そしてプロジェクトはそのままC国への発注となりました』
『……多分その話を知ってる。たしか日本の調査結果がそっくりそのまま流出したんだっけ。スパイだっけか?』

 マリアンナは沈痛な表情で頷いた。

『それだけではありません、役人や王族への賄賂などもあったと聞いてます』
『そりゃあった(、、、)だろうな』

 この話の流れでない方がおかしい。

 つまり、日本が時間と金を掛けて下準備したした結果を、C国が金とえげつない手段を使って横取りしたってわけだ。

 道を切り開いた者(、、、、、、、、)に見返りはない、腹立つな。

『で、その鉄道がどうなったんだ? C国の事だから陥没だか脱線でもしたのか』
『それ以前の問題です』
『うん?』
『鉄道は未だに完成――いえ、着工すらされておりまえん』
『おやまあ』
『それどころかC国からは未だに関係省庁に建設の申請も出してません。契約を交わしたのですが、実際に建設の段階でいろいろ無理難題を出してきては引き延ばして……未だに着工すら……』
『それは予想以上のひどさだ』

 陥没したり脱線したり、お決まりの爆発をI国にも輸出したりまでは想像出来てたが、着工すらしてないのはさすがに予想外だった。

『お願いします! どうか我が国を助けてください』
『C国の人間を追い出せって事か』
『はい。それが出来れば今度は日本に……ッ』
『ふむ。一応聞くけど、あんたは賄賂とか受け取ったか』
『いいえ』

 マリアンナ王女は即答ではっきり断った。
 念の為にスキル・読心を使ってみた。

『わたくしに黙って賄賂を受け取った部下は既に免職させたけど……これは言うべきなのかしら』

 心の声で余計な情報が入ったが、マリアンナ自体賄賂を受けとってないし受けとるつもりもないのがわかった。
 ついでに別の感情も読み取れた。

 お金がかかってもいいから、品質の高い日本製の新幹線に今からでも切り替えたい。
 それで国民を便利にして、暮らしをよくしたいという気持ちがあった。

「私からもお願いします」

 それまで黙っていた瑞希が話に入って来た。

「今の会話わかったのか?」
「いいえ。でも説明が終わって、必死にお願いしているのはみてて分かるわ」
「なるほど」

 そこは瑞希の言うとおりだ。
 ベールごしでも、マリアンナが必死に訴えかけてくる目をしてるのが分かる。

「これはあなたにしかできない事だわ」
「……わかった、やろう」

 瑞希にそう言って、マリアンナにも同じ言葉を繰り返す。

 ぱあ、と顔がほころぶマリアンナ。

『ありがとうございます! ありがとうございます……』

 彼女は何度お礼の言葉を口にした。

『無事成功した暁には、我が国から連邦へナイトの称号の申請を致します』
『その気持ちだけで十分だ』

 そう、その気持ちがあるだけで十分だ。
 それがあるだけで、向こう(異世界)の連中とは違う。

 それにだ、マリアンナが本気なのもそうだけど。
 道を切り開いた人間が報われないのは腹がたつ。

 先駆者で必死に道を切り開いて、守旧派連中のヘイトを一手に引き受けてきて。
 ようやく道を切り開いたはいいが、恩恵を受けたのは後から来た連中。

 もっと腹が立つことがある。
 その更に後に来た三番手くらいの人間は、道を切り開いたのが誰かすら知らないで、すいすいと高速で走れる道でかっ飛ばしてること。
 メチャクチャ腹が立つ。

 まんま、俺が異世界でやられたことだ。

 C国か……。
 直接俺が何かされたわけじゃないが……ちょっと痛い目を見てもらうか。
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