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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第二章

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04.パンドラの休日

 エグゼクティブ1の中。
 俺が指パッチンで五百円玉を弾いて、ジャグリングしていた。

 パッチンで弾いて宙に浮かせ、落ちてきた所に更にパッチンで浮かせる。
 最初は一枚。徐々に二枚、三枚、四枚……と増やしていく。

 ペン回しみたいな暇つぶし、兼、技の練習だ。

 そんな俺の横で、メイドの志穂がそわそわしていた。
 自分のスマホを見つめて、ちょこちょこと操作している。
 何を見てるんだ? と気になり出すと――。

「あっ!」
「どうした」
「チャンネルの登録が四百万超えました」
「チャンネルの登録?」
「はい! 風間さんのチャンネルです」
「俺の?」

 首をかしげていると、志穂がスマホの画面を見せてきた。
 見覚えのある画面だ。
 俺が悪事を暴くために生放送をするため作った動画サイトのアカウント、そのトップページだ。

「ああ、チャンネルって事のことか」
「はい! パンドラ――風間さんの動画が大人気で登録者数がすごく増えてるんです」
「それが四百万人になった、と」

 興奮気味に頷く志穂。
 なるほど、それでそわそわしてたのか。

「みんな次のを期待してます。ほら! コメントがこんなに」

 志穂の言うとおりだった。
 スマホをちらっと見ただけでもパンドラに期待したり、次の動画を待ち望んだりと、そんなコメントがずらっと並んでいた。

「ここだけじゃありません、いろんなSNSでみんなパンドラの次を期待してるんです。それに」
「それに?」
「パンドラチルドレンっていうのも出てくるようになりました」
「パンドラチルドレン?」

 俺は思いっきり眉をひそめた。何じゃそりゃ。

「パンドラ――風間さんのやってる事を真似て動画にした人達の事です。隠し撮りで悪事を暴いたり。ほらこの人」

 志穂スマホを操作して、俺のと似ているが違う人のページを見せてきた。

「職業が探偵さんで、依頼主と一緒に浮気した夫や妻の浮気現場に突入する動画が人気です。スカッとしますけど、風間さんのに比べたらスケールが小さいので人気もそこそこです」

 興奮気味にまくり立てる志穂。
 彼女はまるで自分の事の様に喜んでくれていた。

 にしても……パンドラチルドレンか。
 そんなのもでてきたんだな。

 「次」を期待されたり、フォワーがでてきたりするのなんて、向こうの異世界じゃなかったな。

 基本、「次に行くな」だったから。
 転移者の俺が手柄を持っていくのがいやだから、俺に「余計な事をするな」だったり、向こうの連中の手柄になるような状況のときだけ動いていいっていわれるんだよな。

 こんな風に期待されるのは地味に初めてかも知れない。

 意外な所で達成感を感じていると、今度は俺のスマホがなった。
 美海からのメールだ。

「今夜会えませんか……か」
「美海ちゃんですか」
「ああ、今夜会えませんかだって。なにか起きたかもしれん、ちょっと出かけてくる」
「はい、いってらっしゃいませ」

 志穂に送り出されて、俺は美海との待ち合わせ場所にいった。

     ☆

 グランドホテルのラウンジ、夜景とムードが売りのナイトバー。

 待ち合わせの場所で、俺は一人グラスを傾けていた。
 美海を待っていたが、なかなか来ない。

「お一人かしら」
「うん?」

 美海じゃない、違う女性だ。
 このバーによく似合うエレガントなドレスを着ている。
 露出は多いが、嫌みも下品さもない、シックな感じのドレスだ。

 ドレスだけじゃない、着ている本人も美しい。
 十人中九人が美女と振り返る様な女性だ。

「お隣、よろしいかしら」
「待ち合わせしてるんだ」
「あら、何処のどなた? あなたのようないい男をこんなに待たせるなんて」

 信じてないって顔をされた。
 笑顔でそう言って俺の横に座ってくる美女だったが。

「お待たせ――あれ?」

 丁度いいタイミングで美海がやってきた。
 店にはいってきて一直線に向かってきた彼女は俺の横に座ってる美女をみて不思議がった。

「せっかくの誘いわるいな。ご覧の通り連れが来たんで」
「あら、それは残念」

 艶然と微笑まれて、顔を近づけさせられて、耳元でささやかれた。

「これ、私のアドレス。子どもに飽きたら連絡くださいな」

 と、名刺のようなものを握らせてきた。
 そして残り香を残して、颯爽と立ち去った。

 艶やかに、それでいてさわやかに立ち去った美女。
 それと入れ替わりに俺の前に立った美海。

「ナンパされたんですね」
「どうやらそうらしいな」

 俺は肩をすくめた。

「ダメですよ、あんなの」
「あんなの?」
「はい。シンジさんがかっこいいってだけで話しかけてきた人にシンジさんはもったいないです」
「かっこいいのか、俺は」
「もちろんです!」

 はっきりと、臆面無く言い切った美海。
 そこまではっきり言われると逆に照れるな。

 俺は照れをごまかすために話題を変えた。

「で、俺を呼び出したのは?」
「これ、どうですか?」
「これって……」

 俺の前で美海がぐるっとターンした。
 まるでファッションショーか何かのような仕草で、俺は彼女がいつもと違う服装だって事に気づいた。

「すごく可愛いけど、どうしたんだそれ」
「やたっ!」

 美海は小さくガッツポーズをしてから、質問に答えてくれた。

「撮影の衣装なんです。ちょっと自信あったからシンジさんにみて欲しくて、買い取ってこのままきたんです」

 そういうことか。
 それだけか? って一瞬頭によぎったけど、口には出さなかった。

 美海の喜び方が割とガチだったからだ。
 志穂が「400万人突破」って喜んだ時の表情と彷彿させる、心から喜んでいるように見える。

 だったら水を差すことはない、むしろ――。

「うん、すごく可愛いぞ美海」
「本当!?」
「これからもこういうのあったら見せてくれると嬉しい」
「うん! 私頑張るね!」

 握りこぶしを作って意気込む美海。

 アイドルの彼女が俺に見せるために頑張る――。
 悪い気はしないし、彼女の職業を考えるとこの先かなり楽しみになった。
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