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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第二章

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01.後がない者

 よく晴れた昼下がる、大手銀行の中。
 番号札で順番待ちをしている俺。

 キャンピングカー・エグゼクティブ1が前の事件で損傷したから、それを直すための資金をおろしに来た。

 金はある、いくらでもある。
 異世界から引き継いできた120億はほとんど使ってなくて、まだ100億以上残ってる。
 そこから資金を下ろすために銀行に来た。

「すごいですよシンジさん、あんなおろし方見た事ありません」
「うん?」

 横を向く。そこにいたのは帽子をかぶって、サングラスをつけた山下美海。
 職業はアイドル、一発で芸能人だと分かる格好だが、それでもまだマシで、さほど(、、、)注目は集めてない。
 もし素顔を晒したら即、取り囲まれるくらいの人気者だからな彼女は。

 そんな彼女、美海は舌を巻いていた。

「バッグを持ってきて、これに詰め込めるだけ下ろしてだなんて。そんなのはじめてみました」
「ついでに多めに下ろそうと思っただけだ。バッグで持ってきたのも、エグゼクティブ1の金庫がほぼこのバッグと同じ容量ってだけだ」
「それを銀行の窓口で言えるのがすごいですよ。普通は分量を金額に換算して下ろしてもらうじゃないですか」
「風間さんってすごく豪快な人ですもんね」

 今度は反対側を向いた。
 一着20万のメイド服を着ている佐山志穂がいた。
 メイド服、それもあきらかにコスプレのメイド服とは出来が違うものを着ている志穂は、アイドルの七海以上に注目を集めていた。

 彼女はキラキラした目で俺を見ている。

「この服の時もそうでした。エグゼクティブ1の時も多分そうですよね。お金を使う時ってすっごく豪快です」
「かもしれないな」

「そういう男の人、私すごいって思います」
「もってても使うべき時使えないひとっていますよね。貯まれば貯まるほど使うのに躊躇したり」

 その感覚は知ってる(、、、、)、そういう人間をよく見てきた。
 金の話だと、例えば貯金が99万から100万になった途端、桁を減らしたくなくて途端に金を使えなくなる人間がいる。
 そういう人間っているよなあ。

「バッグいっぱいってどれくらい入るの中」
「収録で1000万の札束見た事あるけどこれくらいだった。多分このバッグだと億は軽く入るよ」
「すごい……一億も?」
「軽く入るから、もっと行くよ」
「うわあ……」

 説明する美海、目を輝かせる志穂。
 俺の両横でわいわい言い合う女二人。

 ふと。

「動くな!」
「シャッターを下ろせ!」

 ドスの効いたダミ声が銀行内に響き渡った。

 悲鳴が上がる、空気がパニックになる。
 見ると、目出し帽をかぶった男が二人、銃を持って行員の女性と、ほかの客に銃口を突きつけていた。

 銀行強盗だ。

「早く下ろせ!」

 怒鳴る強盗。パニックになる銀行内。
 数人の客は銃口を突きつけられてるのにも関わらずパニックで外に逃げたが、ほとんどは身動きすら取れず、脅迫された銀行員がシャッターを下ろすのを指をくわえてみていた。

 シャッターが降りたのを確認した後、強盗の一人がケースをカウンターの上に放りだした。

「これに現金をつめるだけつめろ! 早くしろ」
「やるのは一人だけだ! ほかの銀行員はここにあつまれ!」

 ダーン!

 強盗の一人が天井に向かって発砲した。
 硝煙が飛び散り、天井に穴があいた。

「見ての通り銃は本物だ! 下手な真似するんじゃねえぞ。サツに連絡なんかしたら即ぶっころす!」

 脅迫された銀行員は慌てて集まり、要求された通り一人がケースを持って奥に向かった。

『風間さん……どうしましょう』

 志穂が押し殺した声で俺に聞いてきた。
 さすがに怯えている。反対側の美海もサングラスの下の目は怯えた目だ。

 俺は二人の頭を撫でて。

『大丈夫だ、任せろ』

 といった。
 それで安心した表情になったのを見てから、座っている椅子から立ち上がって、強盗の二人に向かって行った。

「止まれ! なんのつもりだ!」
「それ以上動くんじゃねえ、ぶっ殺すぞ!」

 銀行強盗達が怒鳴る、周りがざわざわする。

「俺が人質になる、だからほかの人は解放してやってくれ」
「はあ? なに言ってんだ?」
「人質は全員なんだよ!」

 強盗の二人はある意味当たり前の反応をした。
 今の会話はどうでもいい会話だ、俺は会話している横でこっそりスキル・読心を使った。

『な、なんだよこいつ。出てくんなよ訳わかんねえ』
『人なんか撃ったことないんだから余計な事させんなよ』

 ふむふむ。
 二人の声が聞こえてきて、なるほどと思いつつ、それを確認した。

「人を撃ったことはないんだ」
「なっ! 何を馬鹿な事を!」
「んなわけねえだろ! てめえから撃つぞ!」

 二人は更に俺を怒鳴ったが。

『なんでそんな事がわかるんだ?』
『はったりだ! いやカマカケだ!』

 と、心の声が正直白状した。

「で、仲間は?」
「いい加減にしろ!」
「本当に撃つぞ!」
『なんだよこいつは本当によ』
『仲間なんていねえよ! 二人だけだよ』

 なるほど、仲間いないのか。
 ヤバイパターンの一つに、仲間が人質の中に隠れているのを想定してみたけど、その心配はないみたいだ。

 俺はすぅと手をつきだして――。

 パッチン!

 と指を鳴らした。

 指パッチンの衝撃波。
 強盗の一人の手から銃が弾かれた。

 舞い上がる銃、すかさずパッチンパッチンパッチン――。

 指パッチンをし続けて、衝撃波で銃をトスした。
 山なりでふわっとトスされて飛んでくる銃をキャッチ。

「なっ――」

 驚愕する強盗の男、まだ何が起きたのか分かってないようだ。

「て、てめえ! ぶっ殺してやる」

 もう一人が動いた。
 震えた声で叫びながら、俺に銃口を突きつける。

 ダーン!

 撃ったのは強盗じゃなく、俺だ。
 遠距離攻撃はそういう武器を使ったとき、威力だけじゃなくて命中力もあがる。
 俺が撃った銃弾は綺麗に強盗の銃を弾いた。

「遅いよ、撃つなら叫ぶ前に撃て」

 そう言いながら同じようにダンダンダン。
 銃弾を使い切りながら、指パッチンを同じように銃弾で銃をトスして、それをキャッチ。

 銃は二丁とも奪った、きょとんとする二人の強盗、これでおしまい――。

「く、くそがああああ!」

 二人が俺に向かって突進してきた。
 一人は拳を握って振りかぶり、もう一人はどこからかナイフを取り出して腰だめで突進してくる。

「やれやれ」

 二人の攻撃をサッと避けて、がら空きの首筋に手刀をトン、と落とす。
 当てられた二人はビクン! となって、気を失って倒れた。

 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。

 二人はまごう事なきザコだった。

「「「…………おおおおお!!」」」

 一呼吸の間が空いたあと、歓声が沸き起こった。拍手も起きた。

「すごい!!!」
「何今の、まるで映画みたい!」

 あっちこっちから歓声が上がる中、俺は連れの二人、志穂と美海に目配せをして。
 銃を、天井に向かって発砲した。

 銃声の後、シーンと静まりかえった。
 俺は天井をゆっくり見あげた――フリをして銀行員と客――人質達をちらっと見た。
 みんな俺の視線に釣られて上を見てる、いまだ!

 スキル・透明人間。

 みんながこっちを見ていない隙を狙って姿を消した。

「あれ? あの人は?」
「消えた? どこにもいないよ」
「どこにいっちゃったの?」

 ざわざわする人質達。
 面倒臭い事になりそうだから、俺は奥にもうだされている、俺の金とバッグを回収して銀行を出た。

 うーん、透明人間そのままを不特定多数に見られたくないから、煙玉をそのうち用意しとこう。

     ☆

 エグゼクティブ1の中、戻ってきた俺はキャビンでくつろいでいたが、そこに志穂が慌ててやってきた。

「大変! 大変です風間さん!」
「どうした慌てて」
「これ、この動画みて下さい!」

 志穂が差し出した彼女のスマホをのぞき込む、彼女が見せてくれた動画見覚えのあるシーンだった。

「これ、今日の銀行強盗の現場か?」
「はい! どうやらお客さんの中にスマホでこっそり撮ってた人がいたみたいなんです」
「その人が上げたのか……っておい! タイトルが『噂のパンドラ!?』ってなってるじゃないか」
「はい! だから大変なんです」
「そっか……」

 俺は動画を見つめた。

 パンドラ、それは俺がネット上で呼ばれている名前だ。
 悪の政治家、ヤクザ、偏向マスコミ。
 様々な奴らを成敗してきたら、「箱の中に閉じ込められた邪悪を暴露した」って事で、パンドラって名前で呼ばれるようになった。

「それを知ってた人が動画を上げたのか」
「これ、大丈夫なんですか?」
「……まあ大丈夫だろ。指パッチンはマジックに見えるし、銃はものすごいガンマンに見えなくもない。透明人間を使った瞬間カメラも上向いてたしな」
「じゃあ大丈夫なんですね」
「ああ、そうだ」
「よかった……」

 志穂はホッと胸をなで下ろす、まるで自分の事の様にホッとしてくれた。

「でもすごいですよ風間さん、再生数すっごく伸びてますし、高評価が99%になってます。コメントも……みんな風間さんの事称えてますよ」
「偶然居合わせただけだ」
「はい! そこにいた人、みんな運がよかったですね!」

 そういう解釈か。

「あっ」
「今度はどうした」
「コメントの中に……助けてって人が」
「助けて?」

 眉をひそめてまた画面をのぞき込む。
 動画の下、視聴者がコメントをつけられるところに志穂が言った通り、「助けて」って書き込まれていた。
 同じ名前で、連続して。

「これ……風間さんに助けを求めてるんでしょうか。あっ! 風間さんのアカウントに連絡先送ってるらしいですよ」
「なに? ……あっちは見てないからなあ」
「最初の生放送の後見たけど、それ以来通知がやたら来るから切ったままだったんだっけ」

 それにしても……助けて、か。
 この連続した書き込み、なんか鬼気迫るものを感じるな。

 どうするか……ってふと気づくと、志穂がまっすぐ俺を見つめていた。

「どうした」
「助けてあげましょう! この人を助けられるのはきっと風間さんしかいません!」
「俺しかいない? なんでそう言い切れる」
「だって、こんな風に『パンドラ』に救いを求めるなんて、もう後がない人間だって感じます」
「……なるほど」

 志穂の言うとおりかもな。
 普通はもっと身近な人間に救いを求める。
 あるいはネット――パンドラに求めたとしてもこんなに連続とは来ない。

 後がない……か。

「よし、ならまずは連絡とってみるか」
「はい!」
+注意+
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