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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第一章

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01.スキルと金を引き継ぐ男

 白く、ふわふわとしたなにもない空間。
 この空間に来たのは二度目だ。俺の頭の中に「クリア」って文字が浮かび上がった。

 トラックにはねられて、異世界に飛ばれて早二十年。
 チートを駆使して魔王を倒し、世界に平和を取り戻した――その翌朝の事だ。

 ナレーションなら「人々は彼を称えて、そして夜が明けた」ってなタイミングで、俺は気づいたらここにいた。
 異世界に飛ばされたとき以来のこの不思議空間。

 しばらく待ってると、二十年ぶりの女神がでてきた。
 前と同じで若々しくて美しい女神。

「お疲れ様でした」
「あれで良かったのか」
「はい。おかげで魔王は倒れました。あなたのおかげで世界は救われました」
「そうか、それはよかった」

 ならもう、あそこに戻らなくてもいい訳だ。

「それでは、これからも向こうの事を――」
「待て、別の世界に飛ぶことは出来ないか?」
「え?」

 女神が驚く、何をいってるんだって顔だ。

「……どういう事ですか?」
「お前も人が悪い、俺が何で最後に一人で魔王を倒したか(、、、、、、、、、、)、分かってない訳じゃあるまいに」
「……」

 女神は押し黙った、やっぱり分かってるんだな。

「あの世界の人間は異世界人を歓迎的じゃない。異世界人を排斥してる」
「……」
「本当なら五年前に魔王を倒せたんだ。それをやれ『慎重を期すべき』だとか、やれ『後方が安定してない』だとか。魔王を倒せるタイミングのたびにいらん茶々が入って、無駄に人間を死なせた」
「……」
「今回もフェイクをかけて、俺が強引に単独で突入しなきゃまだ大勢の人間が死んでた。何でそうなってるか――詰まるところよそ者の俺に魔王を倒されて、手柄を立てさせられたくなかったからだ」
「……そうですね、そういう所です、あそこは」

 女神は認めた。

「ですが、だからこそあなたに。あなたならそれでも――」
「悪いが御免被る。魔王は倒れたが、あの世界は泥船だ。一緒に沈むつもりはない」
「……わかりました」

 女神は一瞬うつむいたが、すぐに顔を上げた。
 割り切った顔で俺をみた。

「これまでありがとうございました。お礼として、次の世界ではクリアボーナスとして、スキルと資金の引き継ぎをさせてあげます」
「引き継ぎか」

 割り切った女神、俺も割り切って話につきあった。

「はい、違う世界への引き継ぎなので、100%ではなく50%になります」
「全部じゃないのか……まあ、スキルポイントで全部引き継がれてもな」

 俺は苦笑いした。
 向こうの世界で最終的に余ったから、知ってる。
 スキルポイントの持てる上限は999だ、そして俺は二十年間、どう考えてもそれ以上は稼いでる。
 それを全部引き継げても意味はない。

 想像とおり、スキルポイントは999で引き継がれた。

「金は?」
「あなたが最終的に持っている現金を、向こうの世界の通貨に変換します」
「そうじゃなくて上限はないのかって意味だ」
「金に上限はありませんよ?」

 何当たり前の事を聞いてるの? って顔をする女神。
 当然か。

「変換しました。全資金の50%、121億円以下略を引き継ぎます」
「待て、『円』ってまさか――」
「では、ありがとうございました」

 詳しく聞こうとした瞬間、急速に意識が遠ざかっていった。
 ああ、またこれか。
 前の時もこうだった、ろくに説明もしてくれんと、そのまま放り出されたんだっけな。
 まったくもう。

     ☆

 目が醒めたら真っ昼間の公園にいた。
 都会の中にある、一見して自然溢れているが、排気ガスの臭いが染みついて取れない公園だ。

 そのベンチに俺は座っていた。
 目の前を一人の若者が通り過ぎていく、若者は歩きながらスマホを操作している。

 やっぱりか。
 通貨単位、「円」。
 二度目の異世界転移、三度目の人生。
 その舞台は日本、いや現実世界か。

 ただの現実ならクソゲーだ、俺はまずスキルを確認した。

 俺にしか見えないスキルウインドウを開けた。
 スキルポイントは言われた通り引き継ぎの999、スキルの内訳はまっさらだ。

 ここから新しく習得していくことになるんだな。

「まずは500ポイント使って、取得ポイント二割引きを取得。次に100ポイントの二割引き、80ポイントスキルポイント取得2倍を取得」

 まったく考えずに、まずはこの二つのスキルをとった。

 取得ポイント二割引き、それは全スキルの取得が本来の80%のポイントですむスキルだ。
 前回これをとるまで大変だった。

 ポイントはない、ポイントを溜めようとすると、スキルが足りなくて効率悪い……というまあ、一周目にありがちなジレンマに陥っていた。
 地道にポイントを溜めて取ったときは嬉しかった。

 それを最初のポイントでまとめて取った。これでこの先のランニングコストが全て2割減だ。

 ついでに取得ポイント二倍もとった。
 スキルポイントは敵を倒したり、何かでっかい経験をしたり、そんなときにゲットする。
 取得二倍は、状況にかかわらず、入ってくるポイントを二倍にするものだ。
 これも前回取るまでだいぶ苦労して、取った後は大活躍したものだ。

 この二つを真っ先に取った。
 この先も更に転生させられるような事があれば、この流れはデフォになるなっておもった。

「スキル所持枠無限……は後でいいか」

 つぶやき、スキルウインドウを閉じた。
 999から500を使って、更に80を使ってで残り419だ。
 大分余らせてるけど、状況に応じてスキル取った方がイイからとりあえず保留。

 で、金は?
 俺は周りを見た、ただの公園だ。
 自分の体を見た。
 こっちの世界の服だ……っていうかトラックに轢かれた日の格好だ。
 持ち物をチェックすると、ポケットに一枚のカードが入っていた。

 銀行のキャッシュカードだ。

 俺はそれを持って、公園を出てATMを探した。
 コンビニがすぐにあったからそこに入って、ATMで残高確認。

 12,121,398,567

 なんか見た事もないものすごい長い数字が出てきた。
 パッと見てもどれくらいなのか分からないが、最初の三文字が121だったから女神が言った、引き継ぎの121億円入ってるのが分かった。

 俺はとりあえず、当座の資金のために十万円引き出した。

     ☆

 回らない寿司で3万円使ってみた。
 うん、やっぱり寿司は日本の職人じゃないとな。

 俺がもってる知識を伝えて異世界にも寿司を広めてみたけど、どこか微妙に違ってこんなに美味しくはなかった。

 120億円あるし、飽きるまで回らない寿司食い続けるか、なんておもった。

 さて、次はどうしよう。
 金があるし、金で出来る事を一通りやって、こっちの世界での足場を固めるか。
 なんて、思っていたその時。

 俺は周りが妙に騒がしいことにきづいた。
 やたらと野次馬がいて、よく見れば警察もいて、通行整理をしている。

 俺はピンと来た。
 スキルじゃない、二十年間、修羅場をくぐってきた事で身についた嗅覚だ。
 何か事件が起きたのに違いない。

 近くにいる若者を捕まえて聞いた。

「何かあったのか?」
「え? ああ……俺もよく分からないけど、ツイッターで調べて見たら大使館で立てこもり事件が起きてるんだってさ」
「大使館で立てこもり?」
「テロリストかもって話だってよ、怖いよな」

 若者はそう言って、また手元のスマホを操作した。

 テロリストが大使館に立てこもりか。

「……チャーンス」

     ☆

 俺は人気の無いところで、スキルウインドウを開いた。
 異世界で得た知識の一つに、大きい事件は積極的に関わっていくべきってのがあった。
 事件が大きければ大きいほど、関わって――もちろん俺は解決するから、その時のリターンが大きくなる。
 金もそうだし、人脈やその先の展開もだ。

 この現代日本だ、テロリストによる大使館立てこもりなんて大事件、関わらないのは損でしかない。
 関わるための、何より解決するためのスキルを模索した。

 当然戦闘になるだろう、ならば戦闘のベースになるスキルだ。
 近接戦闘あたりが無難だな。

 近接戦闘、レベルがあるスキルだ。
 レベルは1から10まであって、当然あげればあげる程効果が高い。
 取得コストはレベル1が10、2が20、3が30……でわかりやすいタイプ。
 俺の場合、取得2割引きがあるからそれぞれ8、16、24……だ。

 残りのスキルポイントとにらめっこして検討する。
 残りは419、レベル10まで取得したときの総ポイントは440。
 足りない。

「全部そっちに振るわけにもいかないけどな」

 俺は苦笑いした。
 とりあえず120使って、近接戦闘レベル5までとった。

「次は潜入するためのスキルだな」

 俺は騒ぎの方を見た。
 大使館の表を警察が封鎖している、あれをすり抜けていかなきゃならない。
 透明人間がいいな。

 これもレベルがあるやつで、レベル1は取得50の俺40、レベル2が100の俺80と、50ずつあがってくタイプ。
 効果は発動したらレベル1につき10秒間透明になる、クールタイム――つまり再使用時間まで60分かかるヤツだ。

 それを1とった。
 今は(、、)1でいい。

 スキルの準備が整った、俺は大使館の方に向かって行った。
 ギリギリまで近づいて、警察達がはってるテープまで近づいてから透明人間レベル1を発動。

 そのまま全力でダッシュした、大使館の中に向かって猛ダッシュ。

 効果は10秒、俺は警察や機動隊達をすり抜けて、敷地にはいって裏に回った。

 透明から戻る。
 近くに窓があった、中を確認して、人気が無かったから中に入った。

 大使館の中は本当に人気が無かった、が、空気がピリピリしている。
 非日常の、何かがおきている場所にありがちな空気だ。

 その空気が道しるべになる。

 俺は息を潜めて、足音を立てないように進んだ。

 階段を上がったところにあるホールで、人質が集められてるのが見えた。
 大使館の職員らしき人たちが数十人、まん中に年かさの身なりのいい男がいて、そのそばに年端もいかぬ金髪の少女がいる。

 大使と、その娘だろうか。

 その周りを武装した、いかにもテロリストな連中が取り囲んでいる。
 全員マシンガンの様なものを持っている。何かがあれば人質に掃射して大惨事が起こる――そんなわかりやすい見た目だ。

 そのうち、リーダーらしき男が電話を使っている。
 片言の日本語、金と飛行機とか言ってるから、身代金と逃亡のアシを要求してる所だろう。

 俺はテロリストの数を数えた、ざっと10人。
 物の数じゃないけど、ホールに突入してから全員倒すまでに人質に被害がでる。

 俺はスキルウインドウを開いた。
 この時のために、透明は1で止めてたのだ。

 スキル取得の裏技。
 何回も使える技じゃないけど、クールタイムがあるタイプは、レベルを上げるとクールタイムがリセットする。
 さっき使ったばかり、透明人間のクールタイムは50分以上残ってる。
 そこにスキルレベル2を取得した。

 80を使って、残り179。
 これでクールタイムがリセットした。

 俺は透明になった。20秒スタート。

 まずは近づく、透明だから普通に歩いた。
 近づいて、あらかじめ一番効率よく全員を倒せるポイントにつく。残り15秒。

 深呼吸して、もう一度頭の中でシミュレートする。近接戦闘レベル5のパワーとスピードでの倒しかたを復習。残り10秒。

 目をカッと見開く、シミュレーションした順番で倒していく。

 一人目を倒す、肩を抱え込んでのボディーブロー。
 一発で意識を刈り取りつつ、なるべく倒れないようにする。

 すぐさま別のテロリストに近づく、同じように倒した。

 残り5秒。

 ペースを上げて倒す、同じやり方で残りの7人を5秒で倒した。

「ホワッツ!?」

 最初のテロリストが倒れた、ほかも次々と倒れた、交渉していたリーダーが驚愕して声を上げる。

 タイムアップ、俺は透明から普通の姿に戻った。

「ガッデム!」

 リーダーはマシンガンを構えて俺に向けたが、構わず突進。
 一瞬で肉薄して銃口を天井に向けるように突き上げる、そのままリーダーにもボディブローで意識を刈り取る。

 二十秒間の出来事、テロリストを一掃。

 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを6獲得しました。

 ちょっと遅れて脳内でアナウンスが聞こえる、テロリストを倒した分、本来の倍であろう24ポイントをゲット。これで203までポイントがあがった。

 いきなり起きたこと、人質達は最初何が起きたのか理解でいたが、俺がテロリストを倒した、という現実を理解すると一斉に歓声をあげはじめた。

 そんな中、さっき見た金髪の少女が飛び出して、俺に抱きついてきた。

 少女は俺に抱きついて、早口で何かをまくし立てた。
 外国の言葉だ、意味が分からない。

 分かることと言えば……英語じゃなかろうって事だけだ。
 英語なら英語で、「英語だとは分かる」からな。

 そうか、言葉か。
 これも取らなきゃいけなかったんだよな。
 ……おお、ギリギリだ。

 俺はスキルウインドウを開けて、250の200になる、完全翻訳スキルを獲った。
 テロリストを倒した分ぎりぎりだ。ポイントは3……本当にギリギリだ。

「すごいですわ!」

 スキルを獲った瞬間、少女の言葉が分かるようになった。

「あなたがジャパニーズニンジャなのですわね!」

 そんな事を言ってたのか。
 別に「ニンジャ」じゃないけど、話の流れ的にほめられてるから悪い気はしなかった。

 こうして、俺は戻ってきて早々に引き継ぎのポイントを使い切ったが、その分大きい事件を解決した。

 戻ってきたこっちの世界、向こうより過ごしやすいといいな、と思ったのだった。
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