月目
ニクナスには『色なし』の他に差別される存在があった。
それは『色なし』よりずっと低い確率でで産まれてくる存在『月目』であった。
月目とは左右で目の色がちがい、人々は不幸の象徴として月目を恐れていた。
「そうなんだ… その『月目』ってのはそういうことになってるんだね……」
「…うん……なんかゴメンね。いきなりこんな話しちゃって…」
「そんなことないよ!僕も辛いこときいてごめんね」
グレンは妖精族の少女 『フィーネ』から月目に関することを聞き、ひどく悲しんだ。
「ううん。グレンはなにも悪くないよ。話を聞いてくれてありがとね」
フィーネは泣いて腫れた目でグレンをみてほほえんだ。
グレンにはそのほほえみが泣いているように見えた。
「フィーネは僕と一緒だね」
「え?」
「僕ね、人族の英雄 勇者スザクと 癒しの聖女の息子なんだ。 でも、僕には魔力の色がないし剣の才能もないから、みんなは僕に落ちこぼれとか悲しいことを言ってくるんだ。でも、僕は才能がないからって諦めたりはしたくないんだ!」
「そうなんだ…ね。 ねぇ、なんでグレンはそんなに強いの??」
「強くなんかないよ。。でも、お父さんと約束したんだ "強くなる"って。 そのために強く"あろう"としているだけだよ」
グレンは苦笑いしながらフィーネに伝えた。
「強くあろうと…ね。。私もできるかしら…」
フィーネは期待と不安の両方を宿した瞳でグレンを見つめた。
「もちろんだよ!フィーネも僕と一緒だね!じゃ、僕たちは友達だ!」
グレンはにっこりと笑いフィーネの手をにぎった。
「私が友達になってもいいの? 私がそばにいたら
グレンまで不幸になっちゃうかもよ…?」
「なに言ってるの!僕はその目の色大好きだよ!それに今さらなにか言われても、気にもしないよ〜」
グレンはフィーネの目を見ながら、自分の気持ちを伝えた。
フィーネは顔を真っ赤にし、目を潤ませ
「ありがとうグレン…ありがと…」
「フィーネは泣き虫だな〜。あっ、これからフィーって呼んでいい?」
グレンはフィーネの頭を泣き止むまでなでるのだった。
グレンはフィーネを服の中に忍ばせ門をくぐり、家へとむかった。
「お母さんただいま!」
「遅かったじゃない。さぁ、手を洗ってご飯にしましょう」
シャーリーはそう言い、テーブルの上をふきだした。
「えっとね、お母さんに紹介したい人?がいるんだけど。」
「あら?誰かしら?」
「ほら、フィー出てきて」
グレンは胸元の服をひっぱり、フィーネを外に出した。
「初めまして、妖精族のフィーネ…です……」
フィーネは目を合わせないように、震えながら答えた。
シャーリーは驚いたように目をかるく開いた。
「これはこれは。グレンの母のシャーリーです。グレンは危なっかしいところがあるので、その時は是非助けてあげてください。これからもグレンをよろしくお願いしますね」
シャーリーはフィーネの目をジッと見つめ、頭をさげた。
フィーネは驚き、グレンを見た
「ね!言ったとおりでしょう」
グレンはイタズラが成功したような表情でフィーネにほほえんだ。
「こ、こちらこそよろしくお願いします…」
フィーネは目を潤ませ、声を震わせながら言った。