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<第七話:昼、町中にて>

少女ロリータさん?」


 雑踏の中、名前を呼ばれ振り返る。正確には名前ではなく、あの特徴的な甘い声に誘われるように振り返った。


 私の背後に買い物用の大きな布袋を抱えたレイラが無防備そうな笑顔を向け立っていた。


「レイラ、一人なの?」


「はい、今ドクターが外出出来ないのでぇ、代わりにお買い物ですぅ」


 パパでもお父さんでもなく、ドクター。実にDJらしい。


 相変わらず、娘を大切に思っているのか思っていないのかよくわからない老人だった。


 大切な娘ならこんな治安の悪い町で一人で買い物なんかさせちゃいけないだろうに。


 その辺の感覚がDJのよくわからないところである。


 案外、本気で平和と思っているのかも知れない。少なくとも銃弾を掻い潜って敵兵に捕まる心配はしなくていい。そういう意味では戦地に比べれば平和だ。


「ロリータさんもお買い物ですか?」


 無垢な笑顔で邪気なく聞いてくる。


「私は登録所に寄っただけ。持とうか?」


 布袋一杯に入った荷物は華奢なレイラが持つのには少し重そうに見えた。


「あ、お構いなくぅ。これでお買い物終わりなので」


「そう」


「それに荷物だったらロリータさんのほうが多そうですぅ」


 レイラは私の掲げたボストンバッグを見て言う。確かに重量から考えればこっちのほうが間違いなく重い。


「これでも最低限の装備だけどね。部隊にいたときはまだ重かったし」


 総重量は私くらいの体格の『人間』の体重と変わらないくらいの重さだったと思う。それを私たちは担いで、険しい雪の山道を行軍していたこともあった。寒く、補給が途絶えるという悲惨な目を見た作戦の一つだが、こうして気楽に思い出として扱えるところを考えると部隊の思い出は私にとっては苦痛では無かったのだろう。完全に戦争病である。


「あのぅ、良かったらお茶しませんか。最近、この辺りにフルーツパーラーが出来て、お値段高めなんですが、凄く美味しいパフェを出してくれるんですよぉ」


 フルーツパーラーがこの町に出来る。にわかには信じられない出来事だが、彼女には嘘をついている様子はない。そもそもそんな嘘をついて得があるとも思えない。


「あの、それともこれからご予定でもあります?」


 私は全力で首を横に振る。予定なんて無い。少尉の店がそこらのバラック小屋より悲惨な状態な以上、自室で無駄に時間を消費することくらいしかやることなんてない。


「では、行きましょう」


 私は予想外に早いレイラの歩幅に合わせながら、雑踏の中でその愛らしい背中を見失わないように付いて行った。

 

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