前へ目次 次へ 13/27 第十三夜 落 上へのボタンを押して乗ったエレベーターは、扉がしまると下降した。上への重力がかかり、足が浮く。衝撃に備え、宙にて天井に両手のひらを当てた途端、箱が横転した。 時折、扉のガラス窓から外が見える。誰も気付かない。 上昇へ変化する。回転。停止。落下。上へ横へと落ちる。 幾度目かの長い落下の中で、身体の芯がすっと冷えた。走馬灯のように巡る記憶などはなく、ただひとつの笑顔だけが浮かぶ。 脳裏の笑顔に、一言、伝えた。