なりたいけどなりたくないその理由
ああ明日にならなきゃいいのに。
もう何度目か分からないため息をつく。
明日にならなきゃいいのに、なんて小さな子供のころから何度思ったことだろう。週初めの月曜日、夏休みの最終日、卒業式、レポート提出の日。
数々の思い出は、もう遠い記憶で、そしてこちらの世界にしても元の世界にしても過ぎ行く時間が止まったことはない。あんなにこないでと願った日々も、過ぎればただの1日になることも知っている。
だけど、切実に、明日はきてほしくない。
だって明日は、私が、候補生を卒業して〈神子〉となる日。
そりゃあこの3年間、〈神子〉になるべく勉強してきた。もちろん卒業できるのは嬉しい。これで私を拾ってくれた夫婦に少しでも恩返しできるかなと思うし。
でも見知らぬ騎士にキスをしなくてはならないなんて。それも大勢が見ている中で。
嫌すぎる。
明日になってほしくない。〈神子〉になりたいけどなりたくないの。
「3の白鹿、お風呂終わった?」
「いいタイミングね、1の南鳥。次はマッサージよ。ほら、3の白鹿しっかりして」
お風呂場でみんなに隅々まで磨かれ、へろへろの私。1の南鳥は笑顔を向けるけど、正直限界。みんなの気持ちは嬉しく思うが、いくらマッサージしても所詮私は私。美人にはならない。
「あ、りがと、でも」
「あんたはベッドに横になっているだけでいいの。ほら、タオル取るわよ」
私の言葉は友の言葉に消され、無情にもタオルを剥がされた私はパンツと胸当てだけの姿で、ベッドにうつ伏せにされた。
話を聞いてくれ。
「明日のためにしっかり準備しなきゃ。大丈夫、あんたでも聖騎士を一目で虜にする女にしてみせるから」
「ぐえ、き、気持ちは嬉しい。ありがと。でもね、私には無理か」
「駄目、動かない。この濃い色の髪もつやつやになったら綺麗に見えるわ」
「6の早駒の言う通りよ。明日ぴっかぴかになって聖騎士の前に立つの。きっとこんな美しい人が俺たちの〈神子〉になるのかと思うわ」
「ふふ1の南鳥ったら。騎士様の髪の色は何色かしら?3の白鹿と似合うかしら」
きゃあきゃあ騒ぎながら友は、さらにマッサージに力を入れる。内臓でる。
夢見る乙女はかわゆいです。ですがみなさんお忘れですよ、私ののっぺり顔を。逆立ちしても美しくはなりませんし白人の横に立って映える顔ではありません、所詮は平凡顔の日本人ですからね。
「〈神子〉の左右の足元に聖騎士2人がそれぞれ跪いて誓うのよ、一生おそばにいます、って」
さらなる歓喜の悲鳴が上がり、私は頭を抱えたくなる。
そりゃあ素敵な場面だと思うけど、私が中心じゃあ絵にならない。
神の祝福と謳われる〈神子〉には、2名の騎士が一生をかけてその身を守る。彼らの名は聖騎士。
その存在を単なる護衛だと思っていた私だったが、遅ればせながら、〈神子〉にとっては特別なのだとようやく理解した。〈神子〉は聖騎士の主になるらしい。主って?
騎士なら護衛で十分でしょ。ああ。こんなことになるなら〈神子〉にならなかったのに。
日本人にはついていけないよ、異世界。
私は普通の日本人だ。
ちょっと記憶が曖昧だが、普通に生活し普通に生きていた。
そのはず、だった。
ところがある日、気がつけば見知らぬ土地にいて、誰にも会わず3日3晩さまよい、もう嫌だと大泣きした。訳が分からなくて途方にくれるしかなかったが、ある夫婦に拾われた。
そして、嫌が応にも理解した。ここは異世界なんだって。
自分の身にまさかそんな事がおこるなんて思ってもみなかったが、周りの人たちが白色人種に近かったり、1日が30時間くらいあったり、月が2つあったりして、自分が生きてきた世界ではないのだと理解しない訳にいかなかった。
なんでとか、どうしてとか何度も何度も考えたが、誰も答えはくれなかった。
人の良い夫婦のお世話になりながら、なんとか異世界生活にも慣れてきたところ、たまたま訪れた地方の〈教会〉で〈神子〉の資質を見いだされた。
なんじゃそれ。全く異世界ってやつは。
と、うさんくさく思ってしまったが夫婦は涙ながらに喜んでくれた。
「あなたには全然魔力がないからそうじゃないかと思っていたのよ。〈神子〉は神の祝福といわれているの」
そんな貴重な身になった覚えがありません、普通が1番です。
とは言えず、〈神子〉になるべく〈主教会〉に修行に出された。
嫌とは言えません、ああ、日本人。
しぶしぶではあったが入所した〈主教会〉は、素質を持つ女性を〈神子〉へと教育をする機関で、まるで女学校のようなそこに3年ですっかり馴染んだ。
しかし白色人種の中に混ざる黄色人種はかなり異質で、最初のころはいろいろあった。
だけど、〈神子〉の素質を持つ女性はそう多くない。1年に入所する人数は10人に満たない。さらに男子禁制の全寮生活のうえ、卒業するのに早くて5年、長くて10年かかるので50数名の〈神子〉候補生たちは、姉妹のような関係だ。
「さあ、夜のお茶会を始めるわよ。こら3の白鹿、眠らないの。あんたが主役なんだから」
髪も爪も肌も磨かれた私は限界も限界。ベッドで安らかな眠りに旅立とうとしていたところだった。がしかし、友人たちは両腕を引っ張り、強引にお茶室に連れ出す。
「夜のお茶会って今から?普通、明日のために早く寝ろって言わない?」
食堂に着くと温かいカップを手渡される。眠気覚ましにそっと口にした。ぶっ。
こちらの世界のお茶は、何故かワインだ。さすが異世界。普段なら薄いそれが、今日はとても濃い。私はお酒飲めないのだけど?
「ふふ我慢して飲みなさい、3の白鹿。今日は付き合ってもらうからね」
「そうそう。あんたいつも早く寝ちゃうからね、夜のお茶会は初めてでしょ」
1日は30時間。24時間で生きてきた私に合わなくて、いつもお子様のように早寝していた。
さあて、と1の南鳥がにやりと笑う。
「白状してもらうわよ、あんたは聖騎士に誰を選んだの?」
「さあ?先生にお任せしたから私も知らない。え、なにその顔。だって騎士を指名できるって知らなかったし。この寮は外出禁止でしょ、選べるほど騎士と関わりないよね?」
それに私にはこちらの世界の男性はみな同じ顔に見えて、背が高いとか髪の色とか位しか見分けつかない。
「はぁ残念な子ね、3の白鹿は。毎回きっちり祈りの集会にでていたくせに、なにやっていたのよ」
10日毎に行われる集会に出席するのは、候補生の義務だ。日本人なら時間前に行くのは当然です。君たちみたいに、さらに先生方までもが毎回毎回遅刻するなんてありえないんだから。
「ばっかね、遅刻も意味あることよ。騎士の目を向けるっていう、ね。あなたみたいに大司教様の真ん前の席に着いていちゃ、遠すぎて誰の目にも留まらないわよ」
「お目当ての騎士の前を通るとき、さりげなくベールを揺らして髪飾り落とすのよ」
「当然ね。騎士は私たち候補生に声をかけられないから、こちらから自分を売り込まないと駄目なの。でなきゃ聖騎士に指名しても拒否されることだってあるのよ」
「みんな努力しているのに、あなたときたら。ねぇ」
6の早駒も8の遠雷もそんな残念な子どもを見るみたいな視線はよせ。
みんなの女子力の高さにびっくりさ。こっちの世界の女性って自分に甘い人ばかりと思っていたよ。
もともと女性は男性より少なく、体格的にひ弱なため、生まれたときから大切に育てられている。
さらに希少な〈神子〉ともなれば、「頭痛がするの」「あっ立ちくらみが」と仮病はもちろん、あげくにっこり笑って「気が向かないの」と当然に言うスキルを持っているのだ。
そうか単なるわがままじゃなくて女子力だったのね。見習えよ、私。いや無理。
ちびちび飲んでいたワインに、ここにきて胸が熱くなってきた。頭がぼんやりする。
「あんたはいつも早く寝ちゃって知らないだろうけど、夜のお茶会はあちこちで開催されていたのよ。大事な情報交換の場なの。例えば、あの騎士は私が狙っているから手を出さないで、と牽制するとか」
「それに」
見た目清純そう、実は辛辣な6の早駒がずいっと顔を近づける。まつ毛、長いなぁ。
「夜の作法とか」
ぐぅぉくり。口に含んでいたワインを一気に飲み込んでしまう。の、のどが痛い。
「3の白鹿、あんた明日初夜なこと分かっているよね。ちょっと心配で聞くけど、分かっている、よね?」
「あ、私も心配。あなた体小さいじゃない。体格差があるときついと聞いたことあるし」
ちょっと待って、ちょっと待とうよ。よ、夜の作法とか初夜とか、そっち関係の話になったけど、ええ?
きついって、なにが。あれ、が?
「え?ちょっと待って。しょ?ええ?どゆこと?」
「何いまさら。まさか知らなかったなんて事ないよね?聖騎士2人との初夜に決まっているじゃない」
は?
「〈縁の儀〉で〈神子〉は、主として聖騎士と深く結びつくの。だからその2人と、する、の」
は?
「〈縁の儀〉を迎えると互いに相手をすごく好きになるらしいわね。きっとあなたもそうなるわ」
は?
「3の白鹿、顔色真っ白よ。大丈夫よ、心配しないで。きっと騎士たちは優しくしてくれるわ」
「あっ、どこ行くの。3の白鹿。走ると危ないわよ」
どこ行くって、そんなの明日の儀式を中止してくれるよう先生に言いに行くに決まっているじゃないのっ。
あ、ありえない、異世界。やっぱり〈神子〉になんかならないっ。
帰りたい、その言葉は私の口癖だ。
一体私はどこに帰りたいのか。曖昧な記憶の中の元の世界か、こちらの世界で拾ってくれた夫婦のもとか、それとも3年過ごした寮か。
いや場所じゃなくて、過ぎた日々なのかも知れない。
「まあなんて顔しているの、3の白鹿」
「緊張しているのね。そうね、今日は〈縁の儀〉ですもの。私の時もそうだったわ」
先生がにっこりと笑顔を向ける。
ちなみに3の白鹿とは、私の通称だ。いまさらだけど。今日脱ぎ捨てる名前でもある。
昨夜先生方に直訴しようとして、勢いよく駆け出した私は足がもつれて大転倒。ワインに完全に酔っ払い、そのままぐうぐう眠ってしまい気がつけば朝だった。
儀式の延長も、逃亡もできず、私はここにいる。
「いくら緊張して眠れなかったとはいえ、酔って転倒するなんて。足の傷はスカートで見えないからよかったものの。中止するわけにいかないはいかないのですからね」
「すみません」
「あなたは今日〈神子〉になるのですからね、その立場を忘れてはなりません」
私は涙目になって、横に立つ先生方を見上げる。涙は、けして両足に広がる青タンのせいではない。
〈神子〉。そうなりたくて頑張ってきた。でもなりたくない。
「あの、ルルエル先生。私」
本音を一気にさらそうとしたのに、カランカランと学校の鐘のような音が響き、私の声を遮った。
ああもう駄目だ。
「時間ね、さあ行きましょう」
アルフォ先生の言葉に、私の口からひいっと小さな悲鳴が飛び出した。行きたくない行きたくない。
「あら足が痛くて動けない?では護衛騎士を呼んで、抱き上げてもらいましょうか」
ありえない提案に慌てて立ち上がる。
大勢の人が立ち並ぶ聖堂に、抱っこで入場するなんて冗談でもできない。まったく異世界ってやつは。
どんなに願っても今日はやってきて、そして中止することも逃亡もできなくて、私の〈縁の儀〉は始まる。
私は今日〈神子〉になるのだ。
いまさら迷っても遅い。だが、友人たちの「初夜」発言は、泣きたくなるくらい私を惑わせる。
だってありえない。ありえないよね、今日初めて会った人を好きになるとか、するとか、相手が2人とか。
ま、さ、か。からかわれた?
そうだよ、きっと。私をからかったんだ。頭の中のピンクの妄想をぶんぶんと左右に振って払う。
普段と同じペールグリーンのシスター服は、だけど新品で、袖や裾の刺繍は銀糸でされたもの。髪は結い上げて、今日はベールを被らない。軽く化粧もしている。
ここまで準備が整った今、〈神子〉になりたくないとはもう言えない。
そして帰りたくても過ぎた日々は戻らない。がんばれ、私。
「ただ今より〈神子〉トナエの〈縁の儀〉を執り行う。トナエ、こちらに」
朗々とした大司教様の言葉が響き、目の前の大きな扉が開かれる。
円形の聖堂は中央が一段高くなっており、その壇上にぴんと姿勢をただした大司教様が立っていた。
聖堂内は普段と趣が異なり、群青色をしたカーペットが通路に敷かれていた。壁や席の合間には、同じく群青色の旗が翻っている。
取り巻く人々の目とざわつく声に怯む心を抑えて、恐る恐るそのカーペットを踏み、私は壇上の人となった。
「白鹿の年3番目に〈神子〉を志した者よ。その名トナエ。神とここに集いし者とに宣誓を」
私の〈神子〉名はトナエ。
それは古語で夜という意味。
ああどうか声が震えませんように。
「我、トナエは厳かに神に誓わん。この生涯を清く過ごし、神に与えられた任務を忠実に尽くさんことを。我はわが力の限りわが任務を高めることをつとむ。我はこの手に託されたる人々のため、心より助け身を捧げることを、ここに誓わん」
宣誓は記憶にある誓詞を元に、何度も練習した。なんとか嚙まずに言えてほっする。
その後、大司教様に額へ祝福をもらったり、招待客からお言葉をもらったりして、失敗することなく儀式はすすむ。はっ、いかん笑顔装着を忘れていた。
「この高邁なる〈神子〉をどうか生涯守れますように。聖騎士よ、前へ」
大司教様の声に、綺麗に整列した騎士の中から2名の騎士が壇上に進み出た。二人はオリーブ色の詰襟の騎士服で腰に剣を刷いている。なんとなく昔の軍服のよう。
大司教様がその2人の名前を呼び、彼らは短く返答し一礼する。
…こちらの世界の高貴な人々の名前はとにかく難しくて、私にはとても聞き取れないんだよね。
なんたら騎士とかんたら騎士が進み出て、私の前にうつむいて片膝をついた。
「我らにその身そのお心をお守りすることを、どうかお許し下さい。あなたを主として生涯お傍に寄り添う権利をお与えください」
まるで歌うように息ぴったりに2人は言う。
「よろしくお願いいたします」
ばかみたいに簡単な挨拶を返す。さて次だ。
これだから外国は、いや異世界か。本音を押し込めて、自分に頑張れと叱咤しつつ、そっと屈んだ。
そこで2人の騎士は顔を上げた。
褪せた金髪の彼は、左のこめかみから鼻梁に向かい斜めに走る3本の赤黒い傷があった。かろうじて目の損傷はないようだが、皮膚が引きつってかなりむごい傷だ。
そして灰色をした髪の彼は、繊細そうな感じを受けるがその灰色の瞳は冷たく、表情は恐ろしいほどない。
じっと見つめる4つの瞳にたじろぐ。
前髪にキスするつもりでいたのに、顔を伏せてくれないとできない。え、なんで打ち合わせと違うの?
「主よ、あなたは我ら聖騎士との〈血の交換〉を拒否された」
金髪騎士が低い声で言う。まるで咎めるような、その声音。
確かに私は〈血の交換〉を拒んだ。本来の儀式は指を傷つけて、流れた血液をお互いに口にするというものだった。
けれど血を舐め合うなんて絶対嫌。そんなことできない。
だから先生に、さらには大司教様に泣きついた。
「やっぱり私には〈神子〉は無理です、あきらめます」
と、結果〈血の交換〉はキスに変更された。
いや、キスも嫌だと散々ごねたけど。
「本当に我らを受け入れたと?〈血の交換〉を拒んでいるのに?」
私が2人を騎士として受け入れていないと思っているらしい。だけどそれだけは絶対にしないから。
どうしたらいいか分からず、大司教様にすがる様に視線を向けた。
「騎士よ〈神子〉を困らせるな。頭を下げよ」
大司教様の助けを受けて、ほっと息をつく。騎士たちにはじっと見つめられたが、ようやくうつむいてくれた。
私の右手側に佇む金髪騎士の、その褪せた金色の髪一筋が唇に触れて、ぱっと身を起こした。で、できた。
次は、左手側の灰色騎士。
同じように髪に口づけると、身を放す瞬間に、彼も顔を起こす。至近距離で視線が合わさる。ち、近い。
「では〈神子〉に返礼を」
やり終えた感満載の私だったが、大司教様の言葉に再び身を固くする。
2人は立ち上がり、私との距離を詰める。こちらの世界はみな背が高く体格的に恵まれた人が多いが、とりわけ金髪騎士は大きくて、圧倒される。
金髪騎士の顔が近い。あっと思った時には右頬に温かい感触がした。
い、今思わず避けたけど、そのままだったら口に当たったような…。
どくどくと心臓が早鐘を打ち、動けないでいると灰色騎士は私の左耳の下、ほぼ首に口づけし。そしてぺろっと舐めたのだ。ひ。
周りから大きな歓声があがり、聖堂内を満たした。
ああ早く終わって、という思いで一杯なのに、儀式はまだ続く。
次は私が刺繍した腕章を彼らの左腕に着ける。な、なぜそんなに顔を傾けるのですか。あの額がぶつかりますよ。あの吐息が耳にかかるのですが、もう少し離れてもらえませんか。
どうしても震えてしまう私の手に、手を重ねてくれなくても、あのちゃんとできますから。
そして、会場全員で神への祈りを合唱して、ようやく大司教様が終了宣言した。
ああやっと終わった。ほっとしてへらへらしていると、金髪のなんたら騎士が近づいて手を差し伸べる。
恐ろしいことに、〈神子〉は聖騎士に抱っこされて退場するらしい。ひい。
日本人の私にはもちろんそんな勇気はなく、小さく頭を振って遠慮する。騎士たちは無言で私をにらみ、あまりの重圧に苦しくなって、再び大司教様に救いを求めた。
大司教様はふっと息をついて、彼らに退場するよう顎を動かした。
「トナエは足を痛めたと聞いている。先導しなさい」
「足を痛めたとなれば自力で歩かない方がよろしいでしょう。抱いてお連れ致します」
「い、いえ。歩くには何ともありません。でも触られると痛むので。お心だけで十分ですから」
彼らは一瞬眉を寄せたが、ため息ついて歩き出した。
拍手の中、2人の後に続いて退場したが、儀式を終えた嬉しさにスキップしたい気持ちで一杯だった。
こうして異世界で、私は〈神子〉になった。騎士たちの主にはなりたくなかったけど。
主といっても私の手に余る彼らには、これから大変な思いをさせられるのだが。今日の報復?抱っこしなくても歩けます、歩けますから。離れてくださいぃ。
ええ?初夜?
…これが終わったらお偉いさんとか上司とかに挨拶して挨拶して挨拶するんだよ。疲れ果て、昨日の夜更かしもあってすぐに寝てしまった。まったく記憶にございません。
ほ、ほんとに本当のことだから。
だから、このお話はおしまい。
初投稿です。つたない文章をお読みいただいて、ありがとうございます。