イリーガルエリア
第一次異能災害で廃れたビルや家屋が長年の月日をかけて成長した植物によって覆われている。
歩いていくと、野良犬などがいるのも見える。
空を見上げると、この捜査の安全性を高めるために、UCA本部が手配したドローンが何台も飛んでいる。
都会であった筈のここは、長年の月日を経て樹木が成長し、まだ倒壊せずに残ったままのビルなどの建物に絡みつき、まさに終焉を迎えた世界を具現化したものとなっている。コンクリートの地面は、もうその影がほとんど無く緑色に覆われている。その道無き道を3人は歩いていく。
何事もないままやがて3人は報告された住所へと辿り着いた。
コンクリートで出来たこの建物は2階建てのビルだと思われる。既に横に倒壊している。
植物がコンクリートに亀裂を走らせコンクリートの上に広がっている。
長年放置されていたこの地区では当然だ。
「よしとりあえず中に入るぞ」
火ヶ丸の一声で拳堂と羊谷も気を引き締める。
先頭の火ヶ丸が懐中電灯で周辺を照らす。後ろの二人もそれぞれ周囲を観察するが、情報であった会社が存在するような空気はない。
「これはどう見てもガセだな……よし、帰」
「火ヶ丸さん!!」
拳堂の叫び声が響き渡る。
突然響き渡る爆音。その音に羊谷と拳堂は瞬時に頭を伏せる。
当然、2人は火ヶ丸の安否を確認する。
砂煙が晴れ、そこに現れたのは黒いヒーロースーツの男。ヒーローマスクを顔につけ、黒いマントが爆風で激しく揺れている。
「ジャッジマン……」
羊谷は怯えたような表情を見せた。
全米No.2の男が目の前にいるのだ、当たり前だ。
拳堂はすぐに腕時計の翻訳機能をオンにしハンズフリーイヤホンを装着。
「何しに来たんだ少年。私の隠れ家に。私を捕まえに来たのかな?」
ジャッジマンはそう呟くと、目にも止まらぬ早さで拳堂のすぐ目の前に。
ジャッジマンの一撃が入る瞬間、拳堂は拳を突き出しなんとか攻撃を免れる。しかし相殺とまではいかず、拳堂の体は後方へ吹き飛ばされる。
「羊の子。君の上司を連れてここから立ち去りなさい。私は彼に用がある」
「でも……」
「立ち去れ」
ジャッジマンの威圧は羊谷を震え上がらせるのに充分だった。羊谷は自分の無力さに歯を食いしばり、言われるがまま火ヶ丸の安否を確認。
「大丈夫ですか……?」
「ああ……どうやら風圧で飛ばされたみたいだ」
そう言った火ヶ丸の怪我は羊谷から見ても軽いもので済んだようだった。
「ジャッジマンの言う通り一旦外で退避しよう……俺のことを殺そうと思えば出来たはずでも奴はそうしなかった。拳堂のことも何か考えがあるんだろう」
「分かりました」
羊谷は火ヶ丸と共に来た道をゆっくりと引き返した。
「拳堂君……絶対に帰ってきてね……」
拳堂は羊谷と火ヶ丸の姿が見えなくなると口を開いた。
「それでなんで俺だけを残したんだ」
拳堂は恐怖で震えそうになる足を必死に押さえつけながらそう言った。
「まあ。座れ少年」
威圧じみた声はなりを潜め、ジャッジマンは近くのコンクリートブロックの上に腰を下ろした。
拳堂はそのジャッジマンの目的が何なのか全く想像がつかず警戒を続けた。
「座らないならまあいい。私のこれからの計画に協力して欲しい」
ジャッジマンの黒のマスクの隙間から向けられる瞳には全く嘘がないように見えた。拳堂が返事をしようと口を開いたその瞬間に、ジャッジマンはそれをいち早く理解したように少し微笑むと計画の概要を話し始めた。