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UCA入隊式 前編

 現在、東亰都は急激な科学の発展とともに電車が大幅に衰退、その代わりにコストの低い跨座式や懸垂式モノレールが発展した。

東亰都をはじめとする各都市の上空にはレールが蜘蛛の巣状に張り巡らされ、その中継駅として巨大なビルが何棟も建てられた。

それも全て、故 才木教授の異能(超頭脳)によるものである。

また、UCA関東本部建物や異能犯罪者収監所なども才木教授が設計したものである。


 


 関東異能者犯罪対策隊本隊署 通称 UCA関東本部。 

 UCA関東本部は、東亰都の中心にある東亰都中央区に位置している。

東亰ドーム10個分ほどの広大な面積を誇り、その敷地を取り囲む様に10mほどの高さの煉瓦の壁が立っており敵の侵入を防いでいる。

また入口は全部で40個ほどあり四面に10個ずつに分けられている。入口の一つ一つには警備室があり警備部のUCA隊員が常駐している。

その中にある50m四方ほどの巨大な体育館で新関東UCA隊員入隊式が行われる。

今年の関東UCAの入隊者数は、846人。

試験を合格し、各地にある養成学校を卒業した者がUCAの式典用スーツに身を包み体育館に集まった。

中央に主役である新入隊員が、その両脇には現職で働く隊員や様々な関係者が並ぶ。


 入隊式はそれぞれ一人ずつ個名され配属先がここで初めて決まる。

大人数の個名は時間がかかりすぎるため、1日かけて行われ午前の部と午後の部に分かれて行われる。


 眼鏡の男性司会のもと午前の部が始まった。

まず開会の言葉として驫汽宗光(とどろきむねみつ)SS級隊員の挨拶が行われた。

まるで怪物のような体つきそして迫力 威圧感。焦げ茶の短い髪に太い眉毛に鷹のごとき鋭い眼光。

驫汽は壇上に上がりマイクの前に立つ。しかしマイクを使うことなく驫汽は、後ろに手を組み胸を張り大きく息を吸い込んだ。


「これよりィィッ!! 第20回UCA入隊式を開催するッ!!」


 その迫力に新入隊員の多くはその場で身震いした。

驫汽は深く深呼吸をすると敬礼をし、深く一礼し壇上を降りた。


 続いて、新入隊者への挨拶として、現関東UCAのトップ 錬繕末護郎(れんぜんすえごろう)元帥がゆっくりと壇上に上がった。

先ほどの怪物とは違い体つきもいいとは言い難く細身だったのだが、なぜかさっきの怪物よりも大きく見え、その迫力に新入隊員は体をブルッと震わせすくみ上がる。

もう80歳というご老体なのにもかかわらずトップに君臨続けるのだから当たり前のことなのだろう。


「新入隊員の諸君。これから様々な困難が訪れようともそれを乗り越え強者となりUCAに大きな貢献をしてくれることを祈っている。弱肉強食の世界に足を踏み入れたことを十分に理解してほしい。以上」

 錬繕はそう言うと一歩後ろへ下がり祈るように、頭を深々と下げた。

錬繕は再びゆっくりと壇上を降りていった。


 そして国家斉唱。続いて来客紹介が行われた。

来客紹介には様々な大物が訪れた。警察庁長官や警視庁長官、それに異能省をはじめとする各省の大臣や国家議員などの国を代表する人物が名を連ねた。

 そして、いよいよメインイベント新入隊員の個名へと移る。 


「新入隊員個名。冴季夜(さえきや)ウーマS級隊員よろしくお願いします」


 紫のロングの髪を揺らしながら冴季夜ウーマS級隊員が颯爽と登壇。

そして次々と新入隊者の名前とその配属先が呼ばれていった。呼ばれた隊員達は返事をしその場に立ったあと敬礼をして座っていく。


 午前の部が数時間経ち、おおよそ半分の新入隊員の名前を呼び終えたところで30分の休憩が入る。

会場内はその瞬間に緊張がほぐれたかのように大きく揺れた。


 拳堂は混む前にそそくさとトイレへと向かう。

トイレは高校の体育館並みの広さを誇っていた。

尿を済まそうとしていると、まだたくさん空きがある便器を無視し拳堂の隣に坊主の男がやってきた。

その男はいかにも熱血野球少年といったような感じで、灰色の坊主頭にキリッとした灰色の眉毛をしている。


「お前拳堂だろ?」

 坊主の男はそう言うと自分より背の高い拳堂の顔を下から覗き込む。


「えっ、ああそうだけど……どちらさま?」


「ああ、俺は古末鉄太(こずえてった)ってゆうんだ。鉄太って呼んでくれ。俺もお前の同期だ。よろしくな」


「……こちらこそ」

 拳堂は内心馴れ馴れしいやつだなと思っていたが入隊式の緊張が少し和らいだ気がした。


 拳堂と鉄太は、トイレを済ませると体育館に向かう通路を歩く。

通路はトイレに向かおうとする新入隊者で溢れかえっていた。

拳堂は人混みを体を縦にし掻き分けながら、体育館を目指した。


「それでさお前なんかやらかしたのか?」


 声に気づき振り返るとすぐ後ろから鉄太もついてきていた。


「えっ、なんでだよ」


「俺の席さ一番外側なんだけどさ体育館の外側さ先輩隊員がいるじゃんか。その隊員の一人が話してるのがさ近くにいたから聞こえたんだよ」


 拳堂には鉄太の言葉が人混みで所々聞こえず、なんといってるか分からなかった。


「えっなんて?」


「お前コンビニ壊したんだって」

 笑いを必死に堪えながら鉄太はそう言った。


「……あっ」


 拳堂は胸に何かがグッと刺さるような嫌な感じがした。

そして拳堂は掻き分けていた手を止め、足を止め鉄太を振り返る。

振り返り顔を見ると、鉄太は驚いたような顔を見せ口をポカーンと開けていた。


「ホントなのかよ」

 拳堂は口を丸く開けて驚いた表情を見せた。

 そして堪えられなくなり爆笑しそうになった鉄太の口を、拳堂はあわててふさぐ。


「異能使って壊したんだってな。しかも壊した時は、もう4月1日になってたからUCAに請求書が送られてきたって……」

 拳堂の手で塞がれた鉄太の口から笑い声がこぼれる。


「うっ……ああ」

(なんかお腹痛くなってきた。トイレに戻る時間あるだろうか)


 そのことで拳堂は朝早く家の電話で、関東本部の経理部の女性から一般人にはなるべく異能を使わないことと、入隊式前に問題を起こすなんて前代未聞だと注意の電話を受けたばっかりだった。


「それでお前、去年出来たばっかの問題児ばっか送られる羽枦(はねばし)署勤務になるそうだぜ」

 鉄太はさらに悪い情報を拳堂に伝えた。


 拳堂は聞こえないフリをし、一心不乱に人混みを掻き分ける。

そして、ようやく体育館についた時、放送で午後の部開始10分前の知らせが放送された。

拳堂と鉄太は、急いで自分の席へと向かった。

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