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世界を背に拳を放て ~UCA-異能犯罪対策隊~  作者: 寝倉 響
黒の英雄 ~血塗られた正義~
58/63

世界ランク41位

一方の泳斗と土伊もまたもう一人の侵入者と対峙していた。


「あの姿は確か、ロデオボーイね」


土伊の視線の先には、右腕と左腕に装着された円錐型の(ランス)、そして4本の足で立つ男の姿。顔にはスコープのついた方眼鏡をつけている。

ハンターランク41位。


「ボーイって年齢じゃないよな」

泳斗はそう言うとその侵入者を見て笑った。


「Kill you!!(殺す!!)」


ロデオボーイは顔を真っ赤に怒りを露わにし、泳斗に向けて突進した。

泳斗はすぐに避けようとしたが、10mもの距離をロデオボーイは一瞬にして詰めた。泳斗が気づいた時には既にロデオボーイの鋼鉄の体は自分の体にぶつかっていた。

泳斗はなんとか衝撃を弱めようと衝突した瞬間、体を液体化した。が、泳斗の体は大きく後方へと飛び、生活課のデスクを何度もバウンドし、壁へ激突した。


ロデオボーイは隣にいた土伊の姿を確認すると、次は土伊に照準を合わせた。

足をクラウチングスタートの態勢にすると、すぐさまスタート。足の裏からブースト。その勢いで土伊へと一瞬で突進。

しかし、土伊は事前に開けておいた穴に身を隠しそれを回避。そして穴の中からロデオボーイの後ろ足を引っ張り穴に引きずり込もうとした。

が、ロデオボーイの力は強靭で逆に、土伊が穴から引きずり出され、そのまま天井へ衝突し床へ落ちた。

ロデオボーイは前足を上げ後ろ足で立つと左腕のランスを振り上げた。

そして前足を降ろすとともにランスで土伊の体を貫こうと振り下ろす。

ロデオボーイの体に水しぶきが降りかかる。

土伊の体は、泳斗から発射された水鉄砲で飛ばされ、ランスを回避。

ロデオボーイはその水の発射源、泳斗に向かいランスを向けて突進。馬の蹄が音を立てて泳斗に迫る。

しかし、泳斗は事前に液体化。ランスを体で受け止めると、液体化した体を自在に操り、ロデオボーイの首を羽交い締めする態勢に。

そのまま力を込め、締めにかかる。

しかし、どれだけ力を込めてもロデオボーイはびくともせず、ロデオボーイはそのまま自分の体を倒し、泳斗を自分の下敷きにした。

潰された泳斗は身体中の骨を折り、口から血を吐いた。土伊はやっと起き上がりその光景に目を疑う。


「これが世界トップ50の力…」


土伊がそう呟くと、一瞬でロデオボーイの体が目の前に。

土伊が死を覚悟したその瞬間。泳斗の力でもビクともしなかったロデオボーイの体が右へ吹き飛んだ。


「今回も間に合わなかったな」


ロデオボーイを吹き飛ばしたその人物が土伊の目の前に、ロデオボーイと入れ替わる形で現れた。

その人物はズボンのポケットに両手を入れ、漆黒のスーツを身にまとっている。視線を上へ上げると黒い毛で覆われた顔が見える。頭頂部には鶏のような鶏冠。一つ鶏と違うのは銅色の鶏冠だということ。それに加え口元には黄土色の嘴があった。


「大丈夫かい、お嬢さん?俺は鶏冠(とさか)。これでもUCA隊員だ」


鶏冠と名乗る男は、そう言うと自分の身分証を土伊に見せた。

土伊はその身分証を見て驚いた。何故なら彼がUCAの上位5%に位置するSS級隊員だったからだ。


「Kill Kill……!!!!」

ロデオボーイは橘吹き飛ばされた場所から立ち上がり、声をあげた。ロデオボーイの怒りはマックスだった。顔が真っ赤に染まり、血管が浮き出ていた。


ランスを向け突進してくるロデオボーイを鶏冠は地面を蹴り飛んで避けた。

そしてそのままロデオボーイのランスの上を駆け、ロデオボーイの頭に膝蹴りを喰らわせる。

ロデオボーイは避ける間もなく、まともに膝蹴りを受け、脳が揺れ4本足をバタバタとさせる。

しかし、彼も歴戦の猛者。すぐに正気を戻し、前足を上げ、前足から熱気を噴射。鶏冠の視界を熱気で奪った。そしてランスを今度は横に振り回す。

ランスの側面が鶏冠の胴体へと直撃すると鶏冠の体はその衝撃で吹き飛ぶ。

しかし、鶏冠は壁にぶつかる前に、自分の折り畳んでいた羽を広げはためかせることでそれを回避し、床に着地。

鶏冠はすぐにロデオボーイへと駆ける。ロデオボーイもランスを向けて突進。鶏冠は衝突直前、姿勢を最大限低くする。そしてロデオボーイの足を足払いする。ロデオボーイは態勢を崩すが、ランスを杖にしそれを態勢を立て直す。しかし、鶏冠は攻撃の手を緩めない。

鶏冠は羽をはためかせ宙に浮く。そして宙を走る。ロデオボーイは宙を歩く鶏冠にランスを突くが、鶏冠の早さに遅れを取る。


「これが空を飛べる者と、飛べない奴の差だよ」


鶏冠はそう言うとロデオボーイが宙へ突き刺したランスの上を駆け下り、頭頂部に右足をつけ、ロデオボーイの背中側へ回転。

銃口を背中の上、首筋に向けると発射した。

するとロデオボーイの体は大きな巨体を揺らし、崩れ落ちた。


「捕獲完了」


一息ついた鶏冠は、ポケットからタバコを一本出し、火を付け、ぷかぷかと煙を吹かし始めた。

土伊は今起きた戦闘を見ることしか出来なかった。


「凄い戦いだったな…ゲホッ」


「泳斗くん!!無事だったのね!!」


泳斗は咳をする度、血を吐いていたが意識がまだあった。


「あんま動くなよ。俺の相棒に救急車の手配してもらってる」

鶏冠は吸っていたタバコの火を消すとポケット灰皿にその吸殻を入れた。


すると、どんどんと何か大きな者がやってくる足音が聞こえてきた。


「鶏冠さぁ〜ん」


その足音の持ち主は、力士のような大きな巨体だった。年齢はまだ若く見える。


大聲(おおぼえ)!!今回もか!!遅すぎる!!ダイエットしろ」


「はひぃ、すいません」


「さあ、こいつと受付のやつ連れて本部にもどるぞ。回収だ」


大聲は鶏冠に指示されると大きな巨体を揺らしながら、気を失っているロデオボーイの方へと向かっていった。

土伊はその後、驚くべき瞬間を目撃する。

大聲は、ロデオボーイの近くによると、口を大きく開けた。するとその口から掃除機のような音が発生。

ロデオボーイの体が少しずつ大聲の口元へと近づいていき、やがて体が徐々に縮み大聲の口中にロデオボーイの体が入ってしまった。

鶏冠は土伊の驚いたような顔に気づいたのか、大聲に顎で指示。

すると、大聲は着ていたワイシャツのボタンを外し、自分のお腹を見せた。

大聲の腹はへそを中心にし、半径20cm程の透明な円形が出来ており、その円形の中に先ほど吸い込んだロデオボーイの姿が見えた。


「これが異能……」

土伊は今まで見たことのない異能に驚きを隠せずにいた。

唖然としていた土伊は、救急車のサイレンの音で正気を取り戻す。


「じゃあ俺達はここで」

鶏冠は、そう言うと大聲を連れて、受付室の方へと歩いていった。

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