報道と対策、そして始まり。
「昨夜、新宿区西通りでUCA隊員数名と異能犯罪者と思わしき人物との抗争が起こりました。近くの居酒屋を訪れていた数人の会社員が擦り傷などの軽傷で命に別状はありません。しかしUCA隊員2名が殉職しました。目撃した会社員の証言から異能犯罪者はロシアでハンター活動を行っているジェイコブ氏と推測され、あとから救援に駆け付けた2名のUCA隊員により身柄を確保されました……続いて次のニュースです」
異能犯罪対策室の面々は昨夜起きたそのニュースを凝視していた。
テロップやギャラリーが撮影したであろう映像などを使い事件の詳細についてこと細かく報道していた。
ニュースキャスターはさらに続けた。
「続いてのニュースです。ここ1ヶ月で不法入国者の数が大量に増加、その不法入国者が加害者となる事件も増加。警察が対処に追われているとのことです。不法入国者の中には海外でハンターとして生計を立てる者も多く。ハンターによって、日本のUCAの殉職者も多数出ており、UCAは既に警察との協力捜査に踏み切っているとのことです。またUCAは海外各国のUCAに情報提供を要請。今後一般人に被害が及ばないよう、尽力を尽くすとのことです」
そのニュースの報道が終わると火ヶ丸はテレビの電源を消した。
まもなく、机上のファックスから1枚の紙が出てくる。
火ヶ丸はそれを取ると、読み上げる。
海外ハンターによる、UCA隊員殺害における対策。
外への捜査の時は、一人行動はせず、2人以上が1組となり行動すること。
また、海外のハンターと遭遇した場合、すぐに本部へ報告すること。
戦闘へと発展した場合、迎撃し捕縛するのが最良だが、身の危険を感じた場合、離脱すること。
また国外のハンターから襲われることもないともいえないため、捜査上の協力は最小限とし、警戒にあたること。
この事件には、異能犯罪組織REVOLuZが深く関わっている可能性があるため、捜査には慎重に行うこと。
海外のUCAからの情報提供により推測される、現在日本に潜伏していると思われるハンターのリストを各署などへ郵送済みである。
火ヶ丸は読み上げると、用紙を机に置き、それと交換に今朝出勤時に受付の隊員から受け取った大きな封筒を手に取る。
その封筒から中身を取り出す。
中にはA4の用紙が大量に入っており、それぞれの用紙には各ハンターの名前、顔写真、出身国、年齢、経歴などが事細かく記載されていた。
火ヶ丸は興味津々に首をキリンのように伸ばす、拳堂 羊谷 土伊 泳斗の4人に大量の用紙を分配した。
「どれも聞いたことのないハンターばかりですね」
泳斗はリストを一枚一枚めくりながらそういう。
他の3人もリストの用紙を一枚一枚めくる。
すると拳堂があっという声をあげる。
拳堂が見つけたハンターは、あのジャッジマンだった。
経歴にはジャッジマンの輝かしい経歴が羅列されていた。他のハンターに表立った経歴がなかったため、より際立って見えた。
そしてもう1つ他のリストと違ったのは、赤い文字で要注意人物と記載されていたことだった。
「火ヶ丸さん。これは?」
「ああ、海外での活動履歴から本部が危険性を感じた人物にそれがついてるらしい。そのジャッジマンを含めて他数人が海外ハンター協会のトップランカーで金の亡者ってことだ」
「金の亡者ってどういうことです?」
「本部や他署の調べで、REVOLuZとハンターの関係が事実となってな、UCA隊員一人殺すごとにその分の金がREVOLuZからハンターに支払われるって寸法だ」
火ヶ丸はそう言うと封筒と一緒に入っていたもう一枚の用紙を見せた。
そこには今、火ヶ丸が言ったことと、階級別に支払われる額が違うこと、それと既にS級隊員の数人が殺害されているとのことだった。
また警察との共同捜査でハンターの多くが不法入国で、正規入国をしている者は数少なく、余罪についても警察とともに捜査しているとのことだった。
逮捕されたハンターは祖国へと移送され罪に問われており、無論ハンター協会からの永久除名もなされることとなっている。
「とりあえず今はハンターの斡旋を取り仕切っているREVOLuZのメンバーをとっ捕まえないとな。ここまで大事になったのはきっと幹部が関わっているに違いない」
火ヶ丸はそう言うと一人一人の机を歩き回り、リストの回収を行う。
「写見の件はまだ解決といってないからなぁ……金の行方が分かってないのが気になるとこだな。羊谷と泳斗、それと土伊は協力してその件に当たってくれ、俺と拳堂は引き続き篠瀬の件について調べる」
火ヶ丸がパチンと手を叩くとまた今日も1日がスタートした。