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異能者……

 しばらくして、赤色灯を回転させサイレンを鳴らした黒い乗用車がコンビニ前の駐車場に入ってきた。

車から出てきたのはスーツ姿の男が二人。

ひとりは、少し黒い毛が残る白髪の50代ぐらいのじいさんで、名前は八村(やむら)

もうひとりは、まだ若く20代ぐらいの青年。名前は新馬(しんば)


 警察は到着すると早速コンビニ内に足を踏み入れる。

やがて救急車のサイレンが聞こえ救急車も到着。わずか3分足らずで、がらがらだったコンビニの駐車場は満車になる。

警察立ち会いのもと強盗犯は救急車で病院へと搬送された。


 眼鏡の男性とコンビニの店員は、その場で簡単な事情聴取を受けることになった。

新馬刑事は店員のほうを担当し、八村刑事は眼鏡の男性のほうを担当することになった。


「えーとね……君はいったい何者……なのかな?」

 八村はコンビニの弁当コーナーの棚が壊れ崩れ落ち、奥の白い壁が姿を見せている光景を見ながらそう言う。


拳堂(けんどう)といいます」

 眼鏡をかけた男性は少し緊張し強張った口調で言う。


「職業は? ……君、異能者だよね?」

 八村はその様子を伺うように刑事独特の鋭い目付きで顔を覗き込む。


「はい、異能者です。今年からUCAに入隊します」


 八村は自分の腕時計を見る。時計の針は、0時16分を示していた。

八村は自分の腕時計の針を拳堂に向けて言う。


「じゃあ一応もうUCAの関係者ってことだね。 ……なるほどねあとは任せて君は帰っていいよ。また連絡するかもしれないから連絡先ここに書いてくれるかな」

 そう言うと八村はスーツのポケットからコンビニのレシートと黒のボールペンを渡す。

拳堂はそれに連絡先と名前を書き八村へ渡し、拳堂から紙を受け取ると、八村は拳堂を家へと帰した。


「新馬こい!!」

 店員の事情聴取をしていた新馬はびっくりして声のする方を振り返り、駆け足で八村のもとへと向かう。


「このコンビニの修繕費。異隊(※UCAの蔑称)に請求しとけ」

 八村は頭をポリポリと掻きながら怪訝そうな顔で言う。


「さっきの眼鏡の男、UCAの人間なんですか?」

 不思議そうな顔をして新馬が言った。


「そうだ、今年入隊するそうだ」


「あんなひ弱そうな男がUCAに入れるんすね」

 新馬はそう言うと去っていく拳堂の後ろ姿を見る。


「ああ……入るだけなら、まあそこまで難しくないんだよ。ただな、いろいろと問題がな――」

 そう言うと八村はまたも頭をかきむしった。



 異能犯罪対策隊。通称UCA。

 警察などからは、異隊という蔑称をつけられている組織。

蔑称で呼ばれていることから分かる通り警察からは忌み嫌われている。

何故なら、今まで市民を守る平和の象徴として活躍していた警察だったが、彗星の如く現れた強力な異能犯罪者に対処しきれずに市民からの信頼を失った。

しかしその異能犯罪者を狩る専門組織UCAが現れたことにより市民の信頼はUCAに向き、中には警察は必要ないんじゃないかという声も上がるようになった。

そのため警察はUCAに対抗心を燃やし、失った信頼を取り返そうとしている。

 またUCAに入隊するには、多くの試験がある。合格率は、警察官の合格率を遥かに越え高い数値を示しているが、それは、圧倒的に入隊希望者数が少ないことと人員の不足からだ。

 その入隊希望者の内訳は、ほぼ10割が異能を持つ者(異能者)。

異能者の数がもともと少ないこともあるためと警察官や消防官や自衛隊などと比べ物にならないほどに圧倒的な殉職率を誇るため入隊希望者数が少ない。

殉職理由の90%以上は、異能犯罪者との交戦中に起こる。

 

 異能犯罪者との事件で一番有名なものは、今から10年前に起きた事件。

 紫豪(しごう)事件。

数多くのUCA隊員がある一人の異能犯罪者に殺された事件。

犯人の紫豪という名字から事件名がつけられた。UCAは、犯人の特定には、成功したもののついに逮捕は出来なかった。

その犯行には一般人も多く巻き込まれていたためマスコミや世論からの批判が強かった。

が、しばらくして、突然犯行が収まったためUCAは、犯人は死んだと報じることでマスコミや世論の批判をなんとか押さえた。

 しかし、それから十数年後に[REVOLuZ(レボルズ)]と名乗る異能者犯罪組織が裏社会で頭角を現し表社会にまで悪影響を及ぼすようになったためUCAは、ふたたびマスコミや世論からの批判に頭を悩ませている。




「ありがとうございました。あとは、犯人から事情を聞きますので」 

 そう言うと八村は店員に向かって頭を下げる。そして車へと戻っていく。


「コンビニの修繕費は、UCAに請求することが決まりましたのでご心配なく。店長さんにも私達から連絡しておきますので。では失礼します」


 新馬も頭を下げ八村の後を追い車へ戻っていった。

そして車は、赤いライトを灯し夜の暗闇に消えていった。


 店員は崩れたコンビニの壁を一目見てポツリと一言。


「……やっぱりあの人。異能者だったんだ……」

この能力はなんだ。

まさに異質の能力。

この能力を異能と名付けることにする。





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