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火ヶ丸班、その後。

 火ヶ丸班の面々も工場跡でUCAの救護班から手当てを受け、東亰中央区にある異能者専門病院に搬送されていた。


 土伊と泳斗は比較的軽傷だったため、工場跡でのUCA救護班の手当てだけで済み、翌日には羽枦署の通常業務へと戻っていた。

拳堂のほうも体に毒が回っていたが驚異的な回復力を見せ命に別状はなかった。

羊谷は壁に強く打ち付けられた時の衝撃で全身の数ヶ所の骨を折っていたため、しばらくの入院が必要になった。

火ヶ丸も羊谷と同様に数ヶ所の骨を折っていた。

拳堂、火ヶ丸、羊谷の三人は異能者専門病院の第二棟で一晩を過ごすこととなった。



「火ヶ丸~、大丈夫か?」


 そういいながら火ヶ丸の病室に颯爽と入ってきたのは抹茶ソフトクリームのような髪型で四角い縁の眼鏡をかけた緑山。

 

 緑山は入ってくるなり、近くにあった白い丸椅子を火ヶ丸が眠るベッドの近くに置くとそこに座る。

時計の針は日付をまたぎ、0時12分を示していた。


「お前、出世したみたいだな」

 火ヶ丸はベッドの上で体を起こすとそういった。


「ああ、今はUCA本部 異能犯罪対策第九課課長だ」

 緑山はそういうと名刺を取りだし火ヶ丸に渡した。


 火ヶ丸は名刺を受け取ると、その名刺を眺めた。

そこにはやたら長い肩書きと緑山茶吉(みどりやまさきち)と書かれてあった。


「それよりもだ火ヶ丸。野神さんのことだが……さっき息を引き取ったそうだ」

 緑山は幾らか声のトーンを落としそう告げた。


「そうか……お前らも野神さんについて調べたんだろ?」


「ああ、野神さんは孫の手術のドナーと費用を得る代わりにREVOLuZに入ったようだ。同じくメンバーだった立花がREVOLuZを裏切ったことで、立花の代わりに野神さんがREVOLuZに加わることとなったようだ」

 

「なんでREVOLuZは立花を入れたんだ?」


「ああ、羽枦区の議会を思い通りにするためだろうな」

 

「てことは、他の議会にもREVOLuZ関係者がいるかもしれないな」


「ああ、それについてはもう警察や支部に連絡をとって動いてもらってるよ」


「そういえば、紫豪の残党が動き出したって噂を耳にしたんだが……本当か?」

 火ヶ丸は思い詰めた表情を見せると緑山を探るような表情で尋ねた。


「……ああ。確かにそうだ。またUCAを追い詰める事件が起こるかもしれないな。REVOLuZと紫豪、早く捕まえないとないけんな。まあもう俺は帰るわ、仕事が山ほど残ってるからな」

 緑山はそういうと立ち上がり丸椅子を元の位置に戻した。

 

 そしてドアの方まで行くと、火ヶ丸に手を上げ、またな、と言い残して病室を後にした。





 火ヶ丸と同じく異能者専門病院に入院している羊谷の病室にも来訪者が一人現れていた。


「羊仔、だらしないな」

 そういったのは金髪に少し黒髪が混じった髪に頭に立派な金色の角が二本生えた若い男。


 眠りについていた羊谷は、そう呟かれた声に気づき目を開けた。

目の前にいたのは黒い人影。羊谷は目を右手でこする。

そこにいたのは長身の男、その男は黒色に塗られたUCAの制服を着ていた。羊谷はその男の頭に生えている角、そして顔に見覚えがあった。


「金次兄さん……なんでここに?」

 羊谷は驚きあわててベッドから起き上がるとそういった。


「今週末からUCA東亰本部に異動になってな」

  

「そうですか……」

 羊谷はボソッとそう呟くと、浮かない顔を見せた。


「父さんと母さんにもたまには顔見せろよ……じゃあな」

 金次はそういうと部屋を後にした。


「母さん、父さん……」






 火ヶ丸は一日安静にし、その次の日から通常勤務へと戻ることになった。

羽枦署異能犯罪対策室に着くと、既に部屋には泳斗と土伊、拳堂が揃って座っていた。


「おはよー、ってあれ羊谷は?」

 

「羊ちゃんならあと一週間は戻ってこないですよ」

 土伊は悲しそうな表情を見せながらそういった。


「大丈夫なんすか火ヶ丸さん?」

 泳斗は火ヶ丸の様子を見てそういった。


 泳斗がそういうのも無理はなかった。

火ヶ丸は右腕にギプスをしており、とてもまともに業務を行える体とは思えなかったからだ。


「まあ、俺はしばらくデスクワークでもするさ」

 

「片手で出来るんですか?」

 拳堂は火ヶ丸の右腕のギプスを見て心配そうにそういった。


「拳堂は体大丈夫そうだな。てか、俺を舐めちゃいけないな~」

 火ヶ丸はそういうとパソコンのキーボードを空いた左手を使ってうち始めた。


 やがて火ヶ丸は自信ありげな表情を見せると椅子に深く腰掛けた。


 拳堂、土伊、泳斗の三人はそれを見ようと火ヶ丸のパソコンのディスプレイに近付く。

ディスプレイには謎の暗号が表示されていた。

三人は無言でそれを見つめていた。


「……じゃあ誰かに手伝っ」

 

 火ヶ丸がそこまでいいかけると土伊がすかさず口を挟んだ。


「火ヶ丸さん、ゆっくりでいいんでちゃんとお願いしますね。じゃあパトロールでも行ってきます」

 土伊はディスプレイを見たあと顔を上げると呆れた顔をして異能犯罪対策室を出ていった。


「じゃあ火ヶ丸さん。事件の報告書お願いしますね」

 泳斗はそういうと堪えきれなくなった笑いを少し口からこぼしながら部屋を出ていった。


「じゃあ……自分は羊谷の様子でも見に行こっかな~」

 拳堂もまた火ヶ丸に仕事を押し付けられることを嫌がりそういった。


「じゃあってなんだよ、お~い拳堂~」

 火ヶ丸は部屋を出ていこうとする拳堂を追うようにそういった。

が、拳堂は苦笑いを浮かべながら部屋を出ていってしまった。


 一人残った火ヶ丸は仕方なく向のカフェに移動。

マスターにブラックコーヒーを頼み、席に座ると異能犯罪対策室から持ってきたノートパソコンを机に置き、左手でキーボードを打ち始めた。


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