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八咫烏 -ヤタガラス-

 火ヶ丸は降り立った者の方を振り向いた。

火ヶ丸の10mほど先に人影のようなモノが見えた。

そのモノの頭とおぼしき場所に暗闇で黄色く光る二つの目が見える。

その人物はコツコツという足音を鳴らしながらこちらに向かって歩いてきた。

 

 段々とその人物が近付いてくると、その人相も徐々に明らかになっていった。

四方八方へと飛ばした黒く長い髪の毛、その隙間から見える黄色く睨むように光る鋭い目。

そして黒い肌、口元から突き出る(くちばし)、首にはネックウォーマー。

そして背中から生える漆黒の翼。


「火ヶ丸先生、お疲れ様です」


 火ヶ丸はその人物が2メートルほど近くまで寄ってきてようやく気付いた。

その人物は烏間ヤイト。刀馬の部下で火ヶ丸が教官時代の教え子でもある男。


「何してる、烏間!!」

 拳堂は声を荒げてそういった。


 拳堂の視線には烏間の足元が入っていた。

烏間の足には血がべっとりと付いていた。


「火ヶ丸さん、そこにいる野神行武はREVOLuZの一員じゃないですか、殺して何が悪いんですか?」

 烏間は狂ったよう目をして頭を横に傾けそういうと元の人間の姿へと戻った。


「なんで、それを知ってるんだ。お前は栃技県に行ってたはずだろう」

 火ヶ丸は様子のおかしい烏間に不信感を感じ、そう問いただす。


「……まあ、いいじゃないですか。あれ、まだ野神、息あるみたいですよ。僕、殺りますよ」

 烏間は犯罪者の目を浮かべながらそういうと火ヶ丸方へと近付いてくる。

 

 その時、背後から声が聞こえた。


「烏間さん。やっと来たんですね」

 

 その声の正体は、REVOLuZ幹部の蟲慈だった。


「どういうことだ烏間」

 火ヶ丸は突如現れた蟲慈の言葉を聞き神妙な面持ちでそう問い詰める。


「蟲慈やってくれたな、まったく……実は僕もREVOLuZの一員なんですよ」

 烏間は蟲慈をチラッと横目で見るとそういった。


「どういうことだ」


 火ヶ丸は頭を混乱させていた。

UCA隊員がREVOLuZの一員ということ、自分の教え子がREVOLuZの一員ということに。


「改めて自己紹介しますよ。REVOLuZ幹部 烏間ヤイトです」

 烏間はそういうとネックウォーマーで隠れた口元に笑みを浮かべた。


「ちなみに、蟲慈は僕の右腕です。幹部ではありません。しかし、ここまで知られると殺すしかないですね」

 烏間はそういうと蟲慈に顎で指図をした。


 すると蟲慈の腕に蜂の針が現れる。

しかし、火ヶ丸は野神との戦闘で咄嗟に動くことが出来なかった。

蟲慈の針が火ヶ丸に刺さろうとするその直前。

サイレンが鳴り響く音が聞こえた。

その音は段々と近付いてくる。


「キーパーの貼った包囲膜に入れるってことは警察かUCAか、これはマズイな」

 烏間はそういうと電話を取り出しかけ始めた。


「もしもし。……シロム、帯永か。すぐに撤収だ」

 烏間はそういうと電話を切った。


 すると大勢の人間が工場跡へと足を踏み入れる足音が聞こえてきた。

それとともに大量の照明も入って辺りが幾らか明るくなる。


「蟲慈、舞子はどうした?」

 

「蝸牛の行方は分かりません」


「そうか。しょうがないアイツは置いていこう…………火ヶ丸さんまたいつか。刀馬さんにはよろしくお伝えください」


 烏間はそういうと巨大な烏へと変化を遂げた。そして蟲慈を乗せ工場跡内にある工場を次々と経由して飛び去っていった。

その間、無数の銃声が飛び交ったが烏間はそんなこと構うことなく飛び去っていった。


「大丈夫かー!!」


 懐中電灯を持ちながら大勢の人間が駆け寄ってくる。


「火ヶ丸か!!」

 真っ先に駆け寄ってきたのはソフトクリームのような緑の髪型で眼鏡をかけた人物。


抹茶(まちゃ)ソフ……緑山(みどりやま)か……」

 火ヶ丸はそう呟くと度重なる疲労の連続から解放された安心感で眠りについた。


「こいつを頼む、俺の級友だ」

 緑山はそういうとUCA救護班の隊員に火ヶ丸を預けた。

そして立ち上がり、スピーカーを手に持った。


「A班は怪我人の救護活動、B班とC班はREVOLuZの残党がいないか捜索だ!!」


 緑山のその声を聞くと、隊員達は動き始めた。

 今まで暗かった工場跡内はUCA隊員が持つ懐中電灯や工場跡内に停まっている照明を乗せた車両などの光で昼間のように明るくなった。

総勢30名もの隊員がせわしなく動き始めた。

やがて、ABCのそれぞれの班は捜索を終了するとその班を仕切る班長に報告。

その班長は、副隊長の若いショートカットの女性に報告をした。


「隊長!! 羽枦署の隊員四名と本部刀馬班の隊員四名が負傷し、REVOLuZの一員と思われる女を一人確保しました。現在、身元確認を行ってます」 

 副隊長である若い女性は目の前にいる緑山にそれぞれの班から得た報告内容を話した。


「了解。ご苦労だったな不知火…………さぁて撤収だ」


 緑山の号令に隊員達は再び動き出した。


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