拳堂 vs 眼帯のベルゼブブ 蟲滋
蟲滋は右腕を前に出した。そして右手を開き、手のひらを真下に向け指をくねくねと動かし始めた。
拳堂は構うことなく蟲滋の方へと駆けてゆく。
そして地面を蹴り飛び上がった。
空中で右拳を固く握り締め、振りかぶった。
しかし、拳が放たれる前に無数の小さな黒いモノが拳堂の視界を覆い不発に終わった。
拳堂は後ろへと飛び退け、蟲滋との距離をとる。
蟲滋の周りには無数の小さな虫が飛んでいた。
蟲滋はさらに左腕を前に出した。すると先程と同じ様な小さな虫がさらに現れた。
その虫を操り拳堂のもとへと放った。
拳堂はその虫の大群を目前にして拳を握る。
そして拳に力を込める、すると拳に赤い炎が宿る。その拳を前へと放った。すると虫の大群は燃え付き、炭となり地面に落ちていった。
そのまま、拳堂は蟲滋との接近戦へと持ち込んでいく。
拳堂は右左とジャブを放っていく、蟲滋は器用にそれをかわしてゆく。しかし蟲滋は反撃することはなかった。
蟲滋は余裕の笑みを浮かべながら汗一つかいていなかった。
拳堂は蟲滋の学生服を掴みにかかる。
左拳を放ち、それを囮にして右手で蟲滋の学生服の襟を掴んだ。
そしてそれを利用して背負い投げの要領で蟲滋の体を抱え上げた。
蟲滋は器用に拳堂の左腕に絡み付き、そのまま腕を締め上げた。
拳堂はその強烈な痛みに耐えそのまま地面へと叩きつけた。
しかし、蟲滋はまったくダメージを受けた様子がなく、ただただ笑っていた。
拳堂から離れた蟲滋は背骨が折れたかのようにぐったりとした様子を見せた。
「なにしてる」
拳堂はその奇妙な光景に驚くが、すぐにこれが勝機だと思い、蟲滋へと向かっていく。
ビュルンッッ!!
拳堂の足元を高速で何かが通過し、拳堂は咄嗟に足を止めた。
それは何かと見ると、蟲滋から放たれたモノだった。
蟲滋の背中からは巨大なムカデの尻尾が生えている。
蟲滋はさらに、変貌を遂げていく。
右腕は蜂の針のようなモノに変化を遂げ、背中にはトンボの羽根のようなモノが生える。
右目はハエの目のように変化を遂げる。
その姿はまるで神話に出てくる悪魔 ベルゼブブのようだった。
拳堂はあまりにもの恐ろしさと残酷なまでのその姿に恐怖を抱き、足が震える。
蟲滋から放たれる強烈な殺気に汗をどっとかく。
蟲滋は高速で拳堂の元へと移動すると蜂の針を拳堂に向けて突き刺す。
ようやく我に返った拳堂は咄嗟にかわそうと試みるが蟲滋の針が足に刺さる。
「もうこれで君はほっといても死ぬよ」
蟲滋はそういうとニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
拳堂は蟲滋のその言葉を聞いたすぐ後から意識が段々薄れていった。
薄れていく景色の中、最後に見たのは、蟲慈が倉庫内を出ていく姿だった。