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土伊 vs 蝸牛 ~もぐら叩き~

 土伊と拳堂もまた捜索へと向かっていた。

二人が捜索するのは一角が姿を消した巨大な倉庫。


 巨大な鉄の扉は空きっぱなしなっていて、拳銃を構えながら中に入ると中は真っ暗だった。


 拳堂は天井に銃口を向けて粘着照明弾を撃つ。

天井にくっついた粘着照明弾はほんの数秒で光りだし倉庫内を明るく照らした。


 照らされた倉庫内で土伊と拳堂の目に入ったのは正面に立つ学生服を着た人物の後ろ姿。

その人物はこちらを振り向いた。

左目を黒の眼帯で隠し、おかっぱで眉毛の下まで伸びた深緑色の髪。身長は160cm前後と小柄な体格。

顔に浮かべる頬を大きく上げ、三日月型となった口元が、不気味な笑みを浮かべている。


「はじめまして、異隊の方々……蟲滋といいます。蝸牛(かたつむり)!!」

 蟲滋はそういうと腕を上げ指をパチンと鳴らした。


「蟲滋!! あの人の右腕だからって呼び捨てにすんな!!」

 女性が怒鳴る声が蟲滋の背後から聞こえた。


 すると、蟲滋の背後のドラム缶の間を通り抜けながら一人の女性が現れた。


 その女性は蟲滋より身長が10cmほど高い若い女性。

金髪を後ろで一つにまとめている。スポーツブラのような服を着ていおり、ヘソが露になっており、そして下には短パンのジーンズを履いている。

その女性は右手で何かを引きずっている。


「一角!!」

 拳堂はその引きづられているモノを見てそう叫ぶ。


 引きづられていたのは、一角だった。

一角は口から血を吐き頭からも血を流していた。

UCAの制服も所々破れ、薄汚れていた。

拳堂の声に対する返事はなく気を失っているようだった。


「異隊がここまでの捜査能力があるとは思わなかったので、うちの仲間が全然集められませんでしたよ」

 蟲滋はそういうと蝸牛から一角を受け取り、それを拳堂の方へと放り投げた。


「大丈夫か一角!!」

 拳堂はすぐに駆け寄り一角の体を起こす。


 土伊は一角の脈を確認し意識があるのを確認する。


「さぁて、遊ぼうか」

 蟲滋はそういうとゆっくり歩き出した。


 隣にいた蝸牛も仕方ないなといった表情で頭をポリポリと掻きながら歩いてくる。


「拳堂君、一角君を安全な場所に」

 土伊はそういうと体を茶色く変色させ、そして両手には鋭い爪を生やし、鼻をピンと上げ、土竜へと変化をする。


「はっはは!! 何あれ女子力の欠片もないわ!!」

 蝸牛は土伊のその姿を見るとお腹を抱えて笑い出した。


 すると、一角を安全な場所へと運んだ拳堂が土伊の元へと戻ってくる。


「拳堂君。この金髪私がヤるからあっちお願い」


 拳堂はそういった土伊を横目で見る。

土伊の顔には怒りの表情が露になり、いつもの可愛い姿とは比べ物にならないくらい恐ろしく思えた。

拳堂はその光景を見て小声ではいと返事をした。


「てことは僕の相手はメガネか」

 蟲滋はそういうと強烈な視線を拳堂へと向けた。


「蝸牛。ヘマはしないでくれよ」

 

「あんたじゃないんだ、するわけないだろ」

 蝸牛はそういうと土伊の方へと走っていく。


「拳堂君。死なないで……」

 土伊はそういうと蝸牛から遠ざかろうと振り向き走ってゆく。


「待ちな!! モグラ女!!」

 蝸牛もまた土伊を追いかけ走っていってしまった。


 倉庫内には拳堂と蟲滋、二人しかいなくなった。




 




 蝸牛と土伊は倉庫内から出て工場跡を囲む高い塀と倉庫の間の狭い道にいた。

 

「かかってきなさいよ」

 土伊は目の前に立つ蝸牛に向けてそういった。


「モグラ女のクセに」

 蝸牛はそういうと土伊に向かって走ってゆく。

 

 土伊は土竜の能力を使い地面に潜る。


「チッ、糞女が」


 蝸牛はそういうと両腕を前に出す。

すると、出した右腕の手のひらから渦巻き状に巻かれた茶色と黄色のマーブル模様の殻が出現する。

左腕からも同様に、赤色と茶色のマーブル模様の殻が出てくる。

その殻は直径50cmほどまで大きくなると殻の渦巻きの中心から取手のような棒が伸び、蝸牛はそれを両手に握った。


 土伊はその間に蝸牛の立つ真下まで穴を掘り移動する。

そして地中から爪の生えた手を二本出し蝸牛の足を掴んだ。

そしてそれを地中へと引き込もうとした。


 しかし、蝸牛はハンマーとなった殻を地面に叩きつける。

すると、蝸牛の周辺の地面に振動が走る。

その振動は地中にいる土伊にまで響き土伊の脳に衝撃を与える。


 土伊はその脳に響く頭痛に耐えられず地表に顔を露にした。

蝸牛はすかさずハンマーを振りかぶり叩きつける。

しかし、土伊は咄嗟に穴に顔を引っ込める。

土伊は再び新しい穴から顔を出し蝸牛を穴へと引き込もうとするが、蝸牛の耳が触角のようにピクッと動くと土伊の居場所を察知したかのように、土伊の出てくる穴を予測しそれを防いでいく。

 

 蝸牛はニュッと地中から飛び出た土伊の腕を掴むと地上へとつかみ上げた。そして蝸牛は宙に放り投げた土伊の体に、手に持った一本のハンマーを振りかぶり打ち抜いた。

骨が折れる音とともに土伊の体は飛ばされる。

土伊は痛みに耐えながら着地する。


「異隊ってのは、大したことないね」


「大したことないのは、あなたよ」

 土伊は息を切らしながらそう呟いた。


 蝸牛は舌打ちをすると、ハンマー片手に再び走る。

重症を負った土伊に蝸牛が一歩二歩と近付いて来る。


「バーン!!」

 土伊は蝸牛が地表に足をつけると同時にジェスチャーで銃を放ちそういった。


 蝸牛は一瞬何が起きたのか分からず困惑するが、すぐに理解する。

蝸牛が踏み出した足は確かに地面を踏んだはずだった。

が、その地面は地下へと滑落する。

それとともに蝸牛の体はその深く暗い穴へと落ちて行く。

5mほどの深さの穴に落ちた蝸牛は穴から這い出ることが出来ず、困惑する。

土伊はすかさずその穴に土を入れてゆく。


「やめてぇぇー!!」 

 蝸牛は先ほどまでの自身たっぷりの態度から一変し、涙目になりながら助けを求める。


 土伊は蝸牛の胸の辺りまで土を入れるとその手を止めた。


「しばらくそこにいてね」

 土伊はイヤらしくそういうと近くにあった、鉄の板を手に持つと、それで蝸牛の入る穴を塞いだ。


「お疲れサマンサ、わたし」


 


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