工場跡へ。
火ヶ丸班は工場跡まで黒のワゴン車を走らせた。
工場跡周辺は廃れた建物などがあるだけで、もちろん街灯は無く辺りは20時ということもあり真っ暗だった。
しばらく走らせていくと工場跡が目の前に現れた。
しかし、その工場跡を囲むかのように半円球状のバリアのような膜が張ってあった。
「さすが、刀馬だな。もうキーパー稼働させてる」
火ヶ丸はそういうとゆっくりと車を徐行させた。
そしてその膜を突き進んだ。すると膜の表面に認証完了とゆう文字が現れた。
「これって、範囲内の者を退去させないようにするやつですよね。自分初めて見ました」
拳堂は関心を持ったように今さっき通り抜けた膜を振り返りそういった。
「確か、警察官とか消防官、自衛官なんかも入れましたよね」
泳斗も拳堂と同様に振り返りそういった。
「ああ、そうだ。ちなみにあれがこのバリアを発生させてるドローン。通称キーパーだな」
火ヶ丸は工場跡の中心の上空でプロペラを回転させ飛んでいる小型ドローンを指差しそういった。
そして進んでいくと工場跡の門のところに人影があるのを見つける。
車のヘッドライトで照らされたそれは本部所属のSS級隊員 刀馬真一だった。
刀馬の姿を認識すると車に乗っていた五人は車から降りた。
「刀馬、詳しい情報を聞かせてくれ」
火ヶ丸は刀馬にそう尋ねた。
「ああ、工場跡を二手に分かれて探索することになったんだが、集合時間になっても一角が来ないんで探しにいったらこれが」
刀馬はそういうと、裏面にIkkaku Hayatoと刻まれた一角の腕時計を見せた。
そしてその腕時計のタッチパネルを操作し録音機能を作動させた。
『気のせいか』
ザバッ
バタンッ
「コイツ、UCAノニンゲンジャナイカ」
「連絡しておくよ、ーーさんに」
「なるほどな、だが誰に連絡するのか、聞き取れないな」
火ヶ丸はその録音聞いてそういった。
「ああ、それなんだがな…」
刀馬がそこまで話すと、刀馬の肩を誰かが叩いた。
「「ギャー!!」」
刀馬以外が叫ぶ音が響いた。
刀馬の肩には手が置かれていて刀馬の顔の右側に長い髪の女性の顔が見えた。それが車のヘッドライトで僅かに照らされ不気味な雰囲気を醸し出していた。
刀馬はその叫び声に驚き自分の右肩に置かれている手そして、顔を見た。
「お前か」
刀馬は冷静な口調でそういった。
「お前って……」
火ヶ丸は拳堂の背中に隠れ震えながらそう尋ねた。
「影裏だよ」
刀馬はそういうと後ろにいた、その長い髪の女性を前へと出した。
「おひさしぶりです。みなさん」
その女性はうつ向いていた顔を僅かに上げて火ヶ丸達の方へ向いた。
その長い髪の女性は、刀馬班所属の今年入隊した影裏ヨウ子だった。
「なんだ、驚いたよ」
火ヶ丸はその女性が幽霊ではないと確認すると拳堂の背中から出てきた。
「とりあえずだ。工場跡を捜索して一角を探そう」
刀馬はそういった。自分の腕時計を前に出した。
そして腕時計のタッチパネルに触れ何やら操作し始める。
すると、刀馬の腕時計から工場跡の大まかな図面が現れた。
その地図によるの工場跡は四つの工場が集まって出来たものだと分かる。
「俺と影裏は中央の道を真っ直ぐ進んだ右側。泳斗君と羊谷君は手前の左側。土伊君と拳堂君は手前の右側。火ヶ丸は悪いが一人で奥の左側の捜索を頼む」
刀馬は集まった総勢6人のUCA隊員の顔を一人ずつ見ながらそういった。
「よし分かった。お前ら気を付けろよ」
火ヶ丸はそういうと一人工場跡へと入っていった。
それに続くように泳斗と羊谷、そして土伊と拳堂。そして残ったのは刀馬と影裏。
「影裏、お前が今ここに居るってことはそういうことなんだな」
刀馬は真剣な表情で影裏の顔を凝視してそういった。
「はい」
影裏はその真剣な表情に応えるかのようにしっかりと目を見てそう返事をした。
「分かったありがとう。……さあ俺達も行くぞ仲間を助けに」
刀馬と影裏は歩き出した。