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消息不明。

「やっぱりいたんですね」

 拳堂が椅子を大きく引き立ち上がる音とともに大きな声が羽枦署異能犯罪対策室に鳴り響く。


「ああそうだよ」

 刀馬は興奮気味の拳堂を落ち着かせるようにそういった。


 拳堂が何故こんなに興奮していたのかというと、昨日の食事の際、刀馬の姿を見たか見てないかの話になり、そこから拳堂の眼鏡の話に発展し少々の酒がはいっていたこともあり他の四人の眼鏡イジリが始まった。

その夜、拳堂は最悪な気分で家へと帰宅するはめになったのだ。


「ほら!! 謝ってくださいよ皆さん」

 拳堂は昨日のことを思い出し、羽枦署の四人にそういった。


「おふ……悪かったな」

 火ヶ丸達は拳堂の普段見ない姿に狼狽えながらもそう謝罪した。


 拳堂はその言葉を聞くと怒りが収まったのか椅子に座った。


「それでなんで刀馬班はお前と一角君しかいないんだ?」 

 火ヶ丸は刀馬班の烏間と影裏がいないことに気付きそう尋ねた。


「烏間は栃技県で、影裏は……まああれだ体調不良だ。とりあえず俺達の情報とお前らの情熱を交換しよう」

 刀馬はそういうと昨晩、一角とともにまとめた資料を火ヶ丸班の人数分渡した。


「私たちこんな風にまとめてないですよね?」

 土伊は火ヶ丸の耳元に顔を近付けてそう囁いた。


「ああ、なんか本部との差が出たな……」

 火ヶ丸は真正面を向きながら土伊にだけ聞こえるような声でそういい、苦笑いをした。


「俺達、こんな風にまとめてないから口頭でもいいか?」

 火ヶ丸は今度はみんなに聞こえるような声でそういった。


「ああ、じゃあ早速頼むよ火ヶ丸」

 

 刀馬がそういうと、火ヶ丸は自分達が調べて得た成果について詳細に話した。 

眼帯の高校生と区議会議員で元UCAの野神行武の怪しい行動。そして立花の裏金問題。REVOLuZ幹部 博士(ドクター)との接触……等々を詳しく、刀馬と一角に告げた。


 それを話終えると火ヶ丸達は先ほど刀馬に渡された資料を開き黙読した。




「俺達も立花については怪しいと思ってる。株式会社タチバナの業績の変動から見ても分かる通り、何者かの強い支援が五年前から働いてることは明らかだ。その支援者がREVOLuZの可能性は高いだろうな」

 刀馬はいつにもまして真剣な表情をしながらそういった。


「立花はREVOLuZの博士(ドクター)から裏金を貰っていたようだし……間違いはないと思うぞ」

 火ヶ丸もまた真剣な表情をしてそういった。


「あとは……野神さんと眼帯の高校生との関係だな。野神さんが悪に手を染めてるなんて信じたくないないんだが……」

 火ヶ丸は声の調子を暗くさせながらそういった。


「野神さんのことは火ヶ丸に任せる。俺達はワンアイズゴーストが出るっていう工場跡について詳しく調べてみようと思う」

 刀馬はそういうと一角を連れて部屋を出ていった。


「俺達は野神行武について調べようが……野神さんの任意同行を求めよう」

 火ヶ丸はそういうと動き出した。






 ~取り調べ室~


「野神さん。あなたは株式会社タチバナに訪れたことがありますか?」

 火ヶ丸は真剣な瞳で野神の目を凝視しながらそう尋ねた。


「火ヶ丸、お前が聞きたいのはそんなことか?」

 野神は鋭い視線を火ヶ丸に返してそう聞き返した。


 火ヶ丸はその威圧感に唾をゴクリと飲んだ。

取り調べ室の隅で記録を取っている土伊と火ヶ丸の横で腕を組み立っている泳斗も同様に唾を飲んだ。


「眼帯の高校生とはどんな関係なんですか?」

 火ヶ丸は今一番聞きたかった質問を野神にぶつけた。


 マジックミラー越しにその取り調べを眺めている拳堂と羊谷は一歩マジックミラー越しに近づきその答えを聞き逃さないようにする。


「眼帯の高校生とは何の関係もない」

 野神はまったく動じずにそう返答した。


 その言葉を聞いた泳斗はパソコンを取り出し火ヶ丸に手渡す。

火ヶ丸はそのパソコンの画面を向け野神の方へと見せる。

そこに写っていたのは野神と眼帯の高校生が株式会社タチバナの非常口から中へ入ろうとする映像だった。


「これは野神さんですよね」 

 火ヶ丸は決定的な証拠を突きつける。


「そいつはREVOLuZ幹部 蟲滋だよ」 

 野神は衝撃的な発言を発した。


 火ヶ丸達はその言葉に驚きを隠せず口を丸く開けた。その表情を暫く眺めていた野神は急に笑い出した。


「冗談だよ。俺は何も知らないさ。任意だろ? 俺は帰る」

 野神はそういうと席を立ち、部屋のドアの方まで歩いていった。


 ドアのノブに手をかけ10cmほどドアを開けると野神は動きを止めた。


「工場跡には来るなよ……」

 野神はそう呟くと部屋を出ていった。








 一方、刀馬と一角。


 刀馬と一角は工場跡へと向かうことにした。

 工場跡のある地域は羽枦区の中でも未開発の地帯で幽霊スポットと呼ばれていることもあり工場跡の周りには人の住む建物はなく、廃墟とかした建物が連なっていたり荒れ地と貸した土地が広がっているだけだった。

その上、まだ昼間だというのに工場跡の周辺は薄暗く感じられ不気味な雰囲気を醸し出していた。

 

 刀馬と一角は慎重に建物に近付いていき工場跡の門へと着いた。

二人は手分けして広い工場内を捜索することになった。

刀馬は西側を、一角は東側から捜索することとなった。


「とりあえず一時間後に門に集合な」



 一角は手始めに搬入口であったと思われる倉庫の分厚い鉄の扉を引いた。

すると鉄の擦れる嫌な大きな音が鳴り響いた。

隙間から覗くと、中は薄暗く、油の臭いが鼻に刺さった。

 一角はUCAから配給される腕時計を外し右手に持ちライト機能を作動させる。

その僅かな明かりが照らしたのは薄汚れた赤いドラム缶。

ライトを別の方向へと動かすとともに倉庫内を探索する。

 その時、自分の歩く足音とは違うコツコツという足音が聞こえているのに気付いた。

一角は足を止めてライトとともに周りを警戒する。

やがてその足音が聞こえなくなった。


「気のせいか」


 その時、一角の口元を何かが覆った、鼻に薬品の臭いが刺さった。

一角は薄れゆく意識の中、不審な者が視線に入る。

まるでシルクハットを被ったような白く長い頭部、腕時計の僅かな光で照らされ反射し光る体。


「コイツ、UCAノニンゲンジャナイカ」


「連絡しておくよ、ーーさんに」


 一角の目に最後に映ったのは眼帯の高校生が倒れた自分を見下ろす姿だった。

 

 一角は気を失った。



 刀馬は時間の許す限りの工場跡西側を捜索をすると、約束通りに工場跡の門へと戻ってきた。

刀馬は時計をチラッと見る。約束の一時間を30分ほど過ぎ去っていた。

 不審感を覚えた刀馬は一角が捜索していた東側を捜索することにした。

少し開いた分厚い鉄の扉から倉庫内へと足を踏み入れた。

 腕時計のライト機能を作動させ、中を捜索する。

すると、足元に何かが当たる感触がした。

ライトを自分の足元に当てる。そこには、UCA隊員に支給される腕時計が落ちていた。


 刀馬はそれを拾い上げ裏面を見る。そこには、Ikkaku Hayatoと刻まれていた。

刀馬は腕時計に内蔵されている録音機能を作動させた。一角の時計の録音機能には見知らぬ二人の人物が会話をする音が録音されていた。

 刀馬は嫌な予感がし、火ヶ丸に連絡し応援に来てもらうよう告げた。

そして刀馬は倉庫内をくまなく捜索した後、到着したと連絡が入った火ヶ丸班と合流するため工場跡の門へと戻っていった。


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