火ヶ丸班side day 2 ~博士(ドクター)~
火ヶ丸達が区議会議員について捜査していた日、立花に関する匿名の情報がUCA本部に届いた。
その内容は立花に関する重大な情報だった。
株式会社タチバナの社長を勤めていた立花喜一の裏金についての情報だった。
社長室の中で立花が黒いスーツの男と密会をし茶封筒に入った大金を受け取っているという内容でその証拠が社長室に残っているということだった。
その翌日の朝、情報を受けた羽枦署の火ヶ丸達は早速、株式会社タチバナのオフィスとなっているビルに向かうことになった。
ビルは羽枦区の都市街にそびえ立っていた。
その20階建てのビルは周りにある建物を頭ひとつ分飛び抜けていた。
「UCAの者ですが社長室を拝見させて頂けませんか?」
火ヶ丸はビル内の受付にUCA手帳を提示しながらそういった。
「少々お待ちください」
受付嬢はそういうと手元の電話機で誰かに電話をかけ始めた。
しばらくして会話が終わると受付嬢は副社長室へと案内した。
受付嬢の案内のもと19階にある副社長室の前に着いた。
部屋を開けるとレトロ風な部屋が顔を見せた。
その部屋に立っていたのは立花が亡くなってから株式会社タチバナの社長を勤めている元副社長の村上だった。
村上はこちらに気付くと眼鏡を押し上げ右手に持っていたハンカチで額の汗を拭いた。
「手紙がちゃんと届いたようで安心しましたよ」
村上はそういうとさらに汗を拭いた。
「ということは貴方が情報を送ってくれたんですか?」
土伊は村上に向けてそう尋ねた。
すると村上はしまったというような表情を見せる。
同時に顔全体から汗を吹き出す。
「……私だということはくれぐれも内密にお願いいたします」
村上は何かに怯えるような震える口調でそういった。
その時だった。村上の中腹部から血塗れの腕が突き出てきた。
「キャーー!!」
村上は何が起こったのか分からずしばらく前だけを見ていたが。
羊谷の叫んだ声が耳に飛び込んできて自分の状況にやっと気づいた。
自分の腹を見る。そこにはあってはならないモノが飛び出ていた。
「うわぁーーー!!!!」
村上の叫び声が副社長室に鳴り響いた。
村上は口からドロッとした血塊を吐き出した。
やがて村上の腹を貫いていた腕が引き抜かれた。
村上の体を支えていた腕がなくなったことで村上の体は前へと崩れ落ちた。
「裏切者には死を」
そう呟く男の声が聞こえて村上から視線を前に戻す。村上が倒れて村上の後ろに立っていた者の姿が露になった。
その者は水色の防護服を見に纏い茶色の手袋を着けガスマスクを被った人物。
その人物の降ろした右手からは村上の血がポタポタと落ちていた。
「村上さん。貴方も我々から援助されてたのに悪い子だな……」
ガスマスクの人物はポツリと呟いた。
「どういうことだ」
火ヶ丸は相手の出方を伺うかのように慎重に尋ねた。
「君が鉄仮面の言ってた火ヶ丸犬尤か。それと君がウチの透道を負かした拳堂ダン……なるほどね」
火ヶ丸と拳堂は、ガスマスクの奥から伝わるほどの鋭い視線に体を震わせる。
プルルルル~プルルルル~
その場に似つかわしくない着信音が鳴り響く。
「私か。ちょっと失礼するよ」
ガスマスクの男はそういうと携帯電話を取り出し耳にあてて通話をし始めた。
火ヶ丸はそれを好機と思い攻撃を仕掛ける。
犬人間へと変化を遂げ右拳に炎を纏わせそれを振るう。
同時に泳斗と土伊も攻撃を仕掛ける。
しかしその攻撃は全て不発に終わった。
なぜならガスマスクの男が黒く渦巻く扉を出現させ姿を消したからだ。
姿を現したのは拳堂の目の前だった。拳堂はすぐに拳を前に突き出した。
しかしまた姿を消した。そして再び姿を現したのは攻撃を仕掛けた火ヶ丸の背後だった。
火ヶ丸はすぐに振り返り右左と拳を繰り出す。
ガスマスクの男は電話片手に通話しながら連打される拳を交わしていく。
すると再び姿を消し、今度は副社長室の右奥へと姿を現す。そして電話を切る。
「異隊の皆さん私はここでおいとましよう。裏切者の死体は置いていくのでどうぞ捜査でもなんなり」
「待て!! お前は何者なんだ」
「私は博士と呼ばれている。そして君達の追っているREVOLuZ幹部でもある。ではまたどこかで……」
ドクターはそういうと後ろに出現させたワープゲートに吸い込まれていき、そして姿を消した。
ドクターが立っていた床には一枚のトランプが落ちていた。
火ヶ丸はそのトランプを取り上げる。
「ハートのJか」