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本部の応援

 拳堂は窓から射し込む朝日で目が覚めた。

いつものように顔を洗い冷凍庫から冷凍食品を出し温める。

その間に仕事に行く準備を整え冷凍食品を取り出し食べ歯を磨く。

そしていつも通り最寄り駅まで徒歩でいくと地下鉄に乗り羽枦署まで向かった。

電車に15分ほど揺られると拳堂は羽枦署から徒歩5分の羽枦区中央駅で降りた。

 

 そして拳堂が駅を降り羽枦署に向かって五分ほど歩いている時のことだった。


 突然、拳堂の口が何者かの手によって塞がれた。

拳堂は口を塞ぐその手を左手で払い、後ろにいるであろうその人物の足めがけて左足を後ろに出した。

そしてその足をその人物の足にかけ左足を前に出した。

すると後ろにいたその人物は大きな音を立てて転んだ。


「いってぇな」

 

 拳堂は聞き覚えのあるその声に後ろを振り返る。

そこに倒れていたのは薄い緑色の髪の男。一番の特徴は頭の中心に白い小さな尖った角が一本生えていることだ。

そしてその男はUCAの制服を着ていた。


「一角か!?」

 拳堂はその顔を見ると懐かしい記憶を思い出す


「おう、久しぶりだな!! 養成学校の卒業式ぶりだよな?」

 一角はズボンを払いながら拳堂に向けて確認するような口振りでそういった。


「ああ、そうだったな」

 拳堂は養成学校の卒業式のことを思い出しながらそういった。


「そだ、こいつもいるんだよ」

 一角はそういうと地面を指差した。

そこには明らかに一角の物ではない髪の長い女性の影が伸びていた。


「出てこいよ影裏(かげうら)

 一角がそういうと、その影が段々と足の方へと小さくなっていった。

同時に一角の隣に足から腰、胸、そして顔の順に女性の姿が現れ出した。


 やがて姿を現したのは、黒く長い髪の女性。大きな丸眼鏡をかけたその女性は眉毛のところまで前髪を伸ばしており下にうつ向いていたため、拳堂には不気味な感じに思えた。


「久しぶり……拳堂くん」


「ああ、久しぶりだな影裏」

 拳堂が影裏に向けてそういうと影裏の頬がどんどんと赤くなっていく。


「ああ、そういえば影裏、拳堂のこと好きだったんだよな」

 デリカシーの欠片もない一角は思ったことを口に出してしまう。


 すると、影裏はさらに下を向き、またも姿を消し影になってしまった。


「お前、変わらないな……」

 拳堂は昔のことを思い出し苦笑いでそういった。


「そかそか、ありがとな」

 一角は褒められたと勘違いをして拳堂の肩をポンポンと二回叩きそういった。


「で、お前らどうしてここにいるんだ?」

 拳堂は羽枦区の人間でない二人が何故ここにいるのか気になり尋ねる。


「ああ、俺と影裏の所属してる刀馬班が羽枦署の応援に行くことになって、それでな」


「そういうことかなるほどな……じゃあ、とりあえず署にいくか」



 拳堂はそういうと一角と影裏の先頭に立ち昔話に花を咲かせながら羽枦署までいった。

そして2階へ上がり異能犯罪対策室に入った。

そこには、当直となっていた泳斗と火ヶ丸が自分のデスクに座っていた。

火ヶ丸のデスクの上は昨日整理したお陰で綺麗になっていた。


「おお、拳堂君おはよう、後ろのは……もしかして本部の応援か?」


「あ、はい。自分の同期です」

 拳堂はそういうと火ヶ丸は席を立ちすぐに一角と影裏の元へと駆け寄る。


「君達は……抹茶ソフトの班か?」

 火ヶ丸は額に汗をかきながら真剣なまなざしでそういった。



「抹茶ソフト? ちち、違いますよ刀馬班です」

 一角は突然のことに驚きながらもそう答えた。


 一角のその言葉を聞くと火ヶ丸は飛び上がり喜んだ。それを見た泳斗はにやにやと笑っていた。


 その時、ドアを開ける音が聞こえた。

入ってきたのは土伊と羊谷。

そしてその後ろに見たことのない顔の男が二人。


「あらら、部屋綺麗。あっ、おはよござ……」

 土伊がそういうとその声をかき消すほど大きな声が後ろから聞こえる。


「おはようみんな!! 火ヶ丸おはよう!!」

 その大きな声の主は、黒のとんがりヘアーで顎に少し髭を生やした長身の男。


「おお……おはよう刀馬(とうま)

 火ヶ丸は暑苦しい刀馬を嫌がるような表情を見せそういった。


「おはようございます。久しぶりですね火ヶ丸先生」

 とんがりヘアーの男の後ろに立っていた男はそういった。


 その男は、目が隠れるほどの長さの黒い髪を四方八方にはね飛ばし、首に鼻が隠れるほどの大きさの黒のネックウォーマーをつけているため全く表情が見えなかった。


「おお、烏間(からすま)か、葬式の時以来だな。てか刀馬が来るなら片付けなくてよかったわ」


 刀馬は火ヶ丸 烏間以外がポカンとしているのを一言。


「自己紹介でもするか」




 羽枦署のメンバーと本部の刀馬班のメンバーはお互いに向き合って立った。

そして羽枦署のメンバーが自分の名前と階級をなどを自己紹介し終えると本部の刀馬から自己紹介が始まった。

自己紹介が始まると羊谷は急いで鞄から異能者ノートを出してページを開く。その異能ノートは羊谷が独自にまとめている異能者図鑑である。


「刀馬真一。よろしく!!」

 

 刀馬真一。SS級隊員。

 異能:刀剣……腕や足を刀のように変形させる。


「おお!! こんなに詳しく、すごいな羊谷君」

 刀馬はそういうと羊谷の頭を撫でた。



「烏間ヤイト。よろしくお願いします」

 

 羊谷は烏間のページを探したが羊谷のデータには載っていなかった。


「ああ、烏間は一年前に警視庁から出向してきたばっかだからな羊谷君のノートに載ってないのもしょうがないぞ」

 刀馬はそういうと、再び羊谷の頭を撫でる。羊谷は顔をほんのりと赤らめる。


「この人、私の羊ちゃんに何してくれてるんですか?」

 土伊は刀馬のことをよく知る火ヶ丸の耳に小声で尋ねる。


「こいつ天然だから、てかバカだから」

 火ヶ丸は土伊の問いに小声でそう答える。 


「一角隼人です。今年入隊したC級隊員です。よろしくお願いします」


「影裏ヨウ子です。一角君とおんなじです。よろしくお願いします」


 新入隊員の情報は羊谷の異能ノートには載っていなかった。

そのため、代わりに同じ養成学校だった拳堂が二人の異能について説明をした。

 

 一角隼人 

 異能:一角獣(ユニコーン)……頭頂部に白く鋭い角が生えているのが特徴。詳しい力は不明。


 影裏ヨウ子

 異能:(シャドー)……自分の体を影に変えることが出来る。

代償として影となっていないときには自分の影は現れない。

 


「よし!! さっそくだが事件の概要を教えてくれ」

 刀馬がそういうと、火ヶ丸は事件の概要を説明し始めた。


「そうだ泳斗、立花の遺体の解剖結果頼む」

 火ヶ丸がそういうと、泳斗が解剖結果について話し始めた。


 遺体となって発見されたのは区議会議員の立花。

 立花の顔や腹からは血が大量に出ており腹には大きな穴が空いていた。

その他にも打撲痕が複数見つかった。

体の穴という穴から虫の死骸や生きた状態の虫などがあふれでており、さらには胃袋や気管器系の中にも虫の死骸が多数発見された。種類は100種類以上にも上った。

死因は虫が大量に体内に入ったことによるショック死。


「うわ……」

 火ヶ丸はあまりにもの酷さにその言葉以外の言葉が出なかった。


「……じゃあとりあえず羽枦署は立花の周辺の捜査。俺達の班はその不審な眼帯の高校生について調べる、それでいいかな?」

 刀馬がそういうと火ヶ丸は何も言わずコクりと頷いた。


「よし決まりだ!! とりあえず……そうだな三日間ぐらい調べあげたらお互いに報告しあおう」

 刀馬はドアを半分開けた状態でそう言い残すと烏間 一角 影裏の三人を連れて部屋を出ていった。


「完全に主導権取られてませんか?」

 土伊は刀馬に従いぱっなしの火ヶ丸に向けてそういった。


「なんか火ヶ丸さんとは違って出来る上司って感じしますし」

 泳斗もまた火ヶ丸に向けてそういうとニヤニヤと笑い出した。


「……まあ、アイツは昔から出来る男であんな感じだからなぁ。お陰さまで俺がなにもしないで済んでよかったかもな。とりあえず俺達も行くか」



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