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発端

 黒猫事件が一旦の落ち着きを見せ、異能犯罪対策隊 支部 羽枦署もまた落ち着きを取り戻し比較的平和な日常を送っていた。

 

 そんななか異能犯罪対策室は羊谷が回転錐(ドリル)の異能者を捕まえお祝いムードに包まれていた。

その日の前の日、後にUCA内を驚愕させる事件、その最初の発端である事件が起こった。


 


 羽枦区の都市部から少し離れた郊外。

そこにある飲み(スナック)〔ゲッケイジュ〕。

こじんまりとしているがオシャレな店内は固定のお客が多数つく人気店となっている。

そんなカウンター席に一人の大柄な男がスーツを着て座っている。

スクリュードライバーを飲み干し目の前にいる紫の着物を身に纏う今年四十路を迎えた女性に一言。


「おいしかったよ……明日もこれたら来るよ」


 このスナックのオーナーである紫の着物を着た女性は、その男のいつもとは違う口ぶりをみて不自然に感じる。

いま、思い返すとその男が店に来たときも不自然だった。

額には汗が流れ、その汗は背中にも流れる。


「立花さん酔いすぎじゃない?」


 立花というその男性は、くしゃくしゃになった一万円札を一枚カウンターの上に置くと、その問いかけに答えることなく席を立った。そしてそのまま店を出ていった。


 それが、その男が最後に目撃された姿だった。




 翌日、近隣の住民によって通報を受けた警察はすぐに急行した。

既にパトカーなどが付近に停められており、最初に現場についた近くの交番の巡査により羽枦署に連絡が入った。

事件現場である、狭い路地に車を停め出てきたのは、羽枦警察署 強行班係の八村刑事とその相棒の新馬。

車を停めた二人は、現場である路地にたどり着く。

既に警官が警戒テープを貼り警戒を行っており、警察手帳を見せ中に入る。

現場に入ると、血の匂いが鼻に刺さる。鑑識が捜査を始めており現場内はせわしなく動いていた。


「八村さんこれはひどいですね」

 新馬は被害者である男性の死体を見ると嫌な顔をしてそういいはなつ。


「ああ……こんな仏さんは見たことない」

 八村もその死体を見てそういった。


 仰向けで倒れていたのは大柄な男性。年齢は50代前後で高そうなスーツを着て腕には高級ブランドの腕時計をしている。

 しかしながら死に姿は酷いものだった。

スーツは破れ、腕時計は殺された時の衝撃なのか時計の針は22時14分で止まっていた。

しかしそれを凌駕して酷かったのは殺され方だった。

口や耳、目の穴から鼻の穴などからムカデや甲虫などといった小さな虫などが溢れ出ている。

顔の表情がその時の苦痛を物語っていた。

 現場に残されていた遺留品はごくわずかだった。

ほとんどが立花の鞄から飛び出たであろう、立花の所持品ばかりだった。

しかし、一つだけ立花の物とは思えないものがあった。

それは一枚のトランプだった。



「ガイシャの情報は?」

 八村は既に現場に来ていた制服を来た交番勤務の警官にそう尋ねた。


「はい被害者は――」


 被害者の名前は立花喜一(たちばなきいち) 57歳。

建設業で国内トップ5に入る大企業、株式会社タチバナの社長。

また羽枦区の区議会議員を勤めており今年になって副議長を勤めている。

法律すれすれの営業や威圧的な態度から多くの恨みを買っている人物でもある。


「あの立花か!!」

 八村は合点するかのように頷く。

そしてその顔をもう一度まじまじと見つめる。


「八村さーん」


 八村は遠くから聞こえるその声に気づき、その方向へと振り向いた。

そこにいたのは鑑識の服を着て眼鏡をかけた40代ぐらいの白髪の男性。


「長山か、どうした?」


「いや、この山なんだがな異隊の山になりそうだ」


 八村はその言葉を聞き、後ろの立花の死体をチラッと見る。


「まあそりゃそうだわな、あんなの異能者じゃなきゃ出来んだろうな」

 八村はそういうと深くため息を吐いた。


「新馬、異隊に連絡しとけ」


「……はい」

 新馬は納得いかないのか歯切れの悪い返事をした。

そして携帯を取り出し電話をかける。




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