歓迎会
「へい、いらっしゃい!! 何名様ですか?」
頭に黒いタオルを巻いた居酒屋の店員が大きな声でそういった。
「えーと、五人です」
先頭にいた寝癖の酷い髪の火ヶ丸は後ろにいるメンバーを数え直すとそう答えた。
「お座敷でも大丈夫ですか?」
頭にタオルを巻いた若い男の店員はそう尋ねる。
「大丈夫ですよ」
「五名様~お座敷入りまーす!!」
男の店員に案内され羽枦署の五人は座敷席へと向かった。
六名掛けの机に火ヶ丸 泳斗 土伊と拳堂 羊谷でわかれて座った。
「今日は歓迎会だ、拳堂君と羊谷ちゃんもバンバン飲んでくれな」
「「はい!!」」
拳堂と羊谷は同時に返事をした。
「歓迎会ってことは奢りですよね」
土伊はニヤニヤと笑いながら火ヶ丸の顔を覗いた。
「そうだな!! お前ら全員ビールでいいか?」
火ヶ丸のその問いかけに四人は一回頷いた。
火ヶ丸は確認すると店員呼び出しボタンを押した。
店員が来ると火ヶ丸はビール大を五つ、唐揚げ盛り合わせ、イカの一夜干しを頼んだ。
頼んだすぐあとに店員がジョッキに入ったビールを五つとお通しの塩キャベツを持って座敷席へとやってきた。
「さあ、これからこの五人で羽枦署勤務になるわけだが……まあ堅苦しいのはなしにして乾杯!!」
火ヶ丸のその呼び掛けに五人は持ったジョッキを合わせて、それぞれ口に含んだ。
一時間後……。
「にゃからぁ~コーラャ~サワァ~」
そういった羊谷の顔は真っ赤に火照り目は垂れ下がっていた。
「羊谷、酒弱すぎだろ」
泳斗は苦笑いを浮かべながらそういった。
「うるしゃいですよぉ~」
羊谷はそういうと拳堂の方へと目を瞑りながら倒れた。
拳堂は突然のことに驚きつつも咄嗟に羊谷を支えた。
羊谷は幸せそうな顔で寝息を吐きながら目を瞑っている。
「あらら、寝ちゃいましたね」
土伊はそういうとスマートフォンを取りだしカメラモードにして、羊谷の寝顔を撮影した。
「かわゆす……」
土伊がそう呟くと隣の泳斗と火ヶ丸は土伊のスマートフォンの画面を覗いた。
すると二人の顔は少し微笑みを見せた。
拳堂も気になり画面を見ようと身を乗り出す。
そのとき、ドタッという音が聞こえた。
いままで拳堂の肩を支えとしていた羊谷の体が倒れた音だった。
「むにゃ……」
羊谷はその衝撃で目を覚ましたのか体を起こし重たそうに潤んだ目を開いた。
「起きちゃったな」
火ヶ丸は笑いながらそういった。
「どうしたんでしゅかぁ?」
羊谷は眠たそうな顔を向けてそういった。
なにも知らない羊谷に泳斗が笑いを溢した。
すると他の四人も釣られて大きな声をあげて笑いだした。
次の日、五人のグループトークのトップ画像が羊谷の寝顔となったのは言うまでもない。