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世界を背に拳を放て ~UCA-異能犯罪対策隊~  作者: 寝倉 響
黒猫-インビシブル・キラー-
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事後処理

 羽枦署に着いた五人は、異能犯罪対策室に置いておいた黒猫の盗品を整理することとなった。

 しかし泳斗 土伊 羊谷が盗品整理を行っているなか、火ヶ丸と拳堂は隣のカフェにいた。


「それで、さっき復家から言われたことなんだがな……」

 火ヶ丸は頭を掻き、どこか話しづらそうな口調でそこまでいうと、ちょうどカフェのマスターが机の元に現れ、さっき頼んでおいたホットコーヒーとミルクそしてスプーンを二つ机に置いた。

 

 マスターが空になったお盆を持ちカウンターへと戻っていくのを確認すると、火ヶ丸が意を決したように口を開いた。


「それでな、お前のその異常な回復力はお前の母親の異能の遺伝が関係しているそうだ」

 

 拳堂は火ヶ丸がそういったのを聞くと頭の中に嫌な思い出が甦る。

 甦ったのは10年前、拳堂が当時10歳だった時に起きたUCA史上最大の事件。


 紫豪事件。

 紫豪と名乗る男が教祖を努める宗教組織の一部のメンバーが起こした事件。10年経った現在も犯人は消息不明のままである。

延べて100人以上のUCA隊員を虐殺された。そのなかにいたのが拳堂の父親と母親だった。

拳堂の両親は、拳堂の目の前で紫豪の手にかけられて殺された……。

拳堂はその時にこみ上げてきた、得体のしれない感情、子供ながらに思った抱いてはいけない感情、それを必死に隠そうとしてきたのだ。




「……そうなんですか」

 拳堂はその思い出を消し去ろうとするかのように言葉を交わす。そして机の上に置いてあるコーヒーを一気に口に入れる。

しかし、コーヒーはまだ熱く口から噴水のようにコーヒーを噴き出す。


 火ヶ丸はその様子を見てプッと笑う。

すると火ヶ丸は何を思ったのかコーヒーを一気に口に入れた。

案の定、火ヶ丸は拳堂と同じようにコーヒーを口から噴水のように吐き出す。その吐き出されたコーヒーは拳堂の顔へとかかる。


「うおっ!! 汚なっ!!」

 拳堂は咄嗟に席を立ち、その言葉が口から漏れる。


「ちょちょちょ、酷いな、拳堂君。俺は汚なっとは言わなかったぞ」

 火ヶ丸は想像以上のショックを受けたようでその言葉を出す。


「あっすいません」

 拳堂はそういった後、笑いが堪えきれなくなったのか、声を上げて笑い始めた。

 

 火ヶ丸は拳堂のその顔を見ると安心したかのような表情を見せた。


「自分のことは大丈夫です。心配しないでください」

 拳堂はあくまで平常を装いそういうと席を立ち上がり火ヶ丸に一礼しカフェの非常口から出ていった。


 一人残った火ヶ丸はカップに僅かに残ったコーヒーを一口口にふくむ。そして小さな声で一言……。


「復讐心が暴走しないことを祈るよ」




 突然、カフェと羽枦署を繋ぐ非常口のドアが思いきり開く。

火ヶ丸は拳堂が戻ってきたのかと思いその方向を見る。

そこには確かに拳堂がいた、が、拳堂は鬼に首根っこを捕まれ引きずられていた。


「土伊ちゃん…………どしたの?」

 火ヶ丸はコーヒーを持った手をブルブルと震えさせながら苦笑いをし震えた口調でそういった。


「なに、拳堂君と一緒にサボってんすか!?」

 土伊の顔はお得意の鬼の形相になっていた。



 めでたく、火ヶ丸と拳堂は三人に合流し黒猫の盗品整理を行った。

火ヶ丸の顔は少し腫れていたという。

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