異能者専門病院 前編
異能者専門病院とは…
UCAが運営している病院である。異能者は、体のつくりが普通の人間と違っていたり常時、動物の姿をしているものもいるためUCA設立から1年後にこの病院が設立された。
おもに怪我をした異能者などの治療を行っていている。
入院患者は、UCA隊員や異能犯罪者などが多いが、一般人として生活している異能者の治療も行っている。
東京中央区に位置する関東異能者専門病院。
駐車場は車が500台はゆうに停められるほどの大きさを誇る。
また駐車場から病院までの道は、緑であしらわれた自然の道があり、途中小さな公園などが設けてあり病院に近付いていくと飲食店やコンビニなどの施設もあった。
黒猫の盗品を羽枦署内に運び終えた四人は、車を出し異能者専門病院へと訪れていた。
「わたしここ来るの初めてですよ」
土伊はそういうと右手を日差し避けにしながら目の前の建物を見上げる。
目の前には、白く大きな円柱型の建物が三棟建っておりそれぞれが連絡通路で繋がっていた。
その中で一番小さい第一棟は、一般人として生活している異能者が入院し、
一番大きな第二棟は、UCA隊員などが入院。
そして残りの第三棟は、異能犯罪者などが入院している。
「よしそれじゃあ、とりあえず行くか」
四人はここに来たことがあるという火ヶ丸を先頭にし一番大きな棟 第二棟へと向かった。
病院内に入ると外見の円柱から分かるとおり円形のフロアとなっていた。
羽枦区立病院と同じように中央には受付があり、そこには病院で働くナースが大勢いた。
「羽枦署の拳堂ダンの病室はどこです?」
火ヶ丸が受付のナースに訪ねる。
その受付は慣れた手つきで手元のパソコンを操作し調べる。調べ終えると受付のナースは、ニッコリと笑顔を見せる。
「それなら315号室ですよ」
「ありがとうございます」
火ヶ丸がそう告げ315号室に行こうと足を進めようとする、しかし受付のナースは何やら不審者を見るような顔つきを火ヶ丸に見せる。
「あの……すいませんが、一応みなさんの身分証を提示してください。」
受付のナースは火ヶ丸の穴の空いた制服を見て不審に思ったのかそう呼び止めてきた。
羽枦署のメンバーは一斉に胸ポケットからUCA手帳を取りだし、受付のナースの前に手帳を出した。
「ありがとうございます」
受付のナースは再びニッコリと笑みを作り、火ヶ丸達を見送った。
「ごくろうさん」
火ヶ丸はそう言うと制服の上着を脱ぎ腕にかかえた。
そのあと四人はエレベーターに乗り三階のボタンを押した。
エレベーターが三階につくとドアが開く。
開くなりエレベーターに泳斗を除いた三人の小さな悲鳴が巻き起こった。
エレベーターが開いた先には、青い顔ののっぺらぼうがいたのだ。
「これは失礼しました」
よく見ると目と口を閉じていただけで完全なのっぺらぼうというわけではなかった。そして服装はUCAの制服だった。
「おー、車田じゃんか」
泳斗は同級生にでも会うかのような口調でそういった。
「なに? この、のっぺらぼうと知り合いなの泳斗くん?」
羊谷を盾にしていた土伊は、羊谷の背中から泳斗とのっぺらぼうを覗くように見て驚いた表情でそういった。
「こいつは、俺の同期の車田厘三です」
と言うと泳斗は車田の右肩に手を置いた。すると車田の右肩がどんどん内へ内へと沈んでいった。
その様子を見て三人は再び驚愕した。
「どうも車田です。さっきは驚かせてすいません」
車田はそういうと頭に右手をやり爽やかな笑顔を見せ頭を下げた。
「車田さんだ……」
羊谷は後にいた土伊にだけ聞こえるような声でポツリと呟いた。
「えっ、知ってるの羊ちゃん?」
羊谷は目をキラキラさせながらコクりうなずくと、背負っていたベージュ色のリュックサックから一冊の分厚いノートを取り出した。そのノートを開き、あるページを見つけるとそれを火ヶ丸に渡した。
「こっこれは!!」
ノートを受け取った火ヶ丸は驚きのあまり大きな声でそういう。
土伊は火ヶ丸の反応に驚き、ノートを火ヶ丸から奪い取って見ると、そのページには車田厘三のプロフィールや写真、異能についてなどが詳しく書かれていた。
「異能オタク……」
土伊は羊谷の恥ずかしそうな表情を覗きこみそう言った。
そのノートによると車田厘三はS級隊員で、ゼリー状の体を持つ異能者と書かれていた。さらには、炎系の異能者との戦闘が原因で伸縮性に富んだ車田専用の特殊スーツを着ていないと人型をとどめていられないとい。そして、UCA随一の爽やかイケメンだということも書かれていた。
「体に関しては今度手術する予定なんですよ、それにしても……オタクですね」
車田はそういうと優しそうな表情を見せニッコリと笑った。
「ああ……オタクだな」
泳斗は車田と顔を合わせそういい笑った。
羊谷はそう言われると恥ずかしかったのか顔を真っ赤に染め、小さな両手で顔を隠した。
「あっ、僕これから用事があるので失礼しますね」
車田はそういうと四人と入れ替わりにエレベーターに乗った。
「おう、じゃ」
泳斗がそう別れを告げると車田はエレベーターで上へと上がっていった。
そして四人は、目標の拳堂の病室まで歩き始めた。
病院内の廊下はカーブしており、すれ違うのはUCAの制服を着た隊員ばかりだった。
「なんかいろんな人がいますね」
羊谷は新しいおもちゃを買ってもらった少年のように目をキラキラさせながら歩いていた。
「お前だけだぞそんなに楽しそうなの」
泳斗はそういうと、青と白のストライプ柄のアイマスクの下に笑みを浮かべた。
「羊ちゃん……。かわゆす」
土伊は目をとろんとさせながら呟く。
そしてそんな羊谷の珍しい表情をしばらく見ながら歩いていると目標の315号室に辿り着いた。