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世界を背に拳を放て ~UCA-異能犯罪対策隊~  作者: 寝倉 響
黒猫-インビシブル・キラー-
12/63

最初の事件

 プルルルルル~プルルルルル~


 いまだ騒がしい室内に、デスクの上に置いてある電話から着信音が鳴り響く。

さっきまで羊谷に抱きついていた土伊は、すぐに我に返り電話の受話器をとった。


「はい、もしもし羽枦署異能犯罪対策課ですが…‥‥」


 土伊は電話の相手と二分ほど話を終えると、受話器を静かに置いた。


「どうしたんですか?」

 拳堂はさっきまでとは真逆で黙り混んだ土伊に声をかける。


「……黒猫の犯行予告が届いたって。今日の10時、トーキョー銀行羽枦支店を襲うって」

 土伊は今さっき聞いたばかりの電話の内容を話す。


「ほんとですか!?」

 拳堂は驚きのあまり、部屋中に響くような大きな声で言った。


 腕時計を見る。時刻は8時43分。あと一時間弱しかない。

 その時ドアが思いきっりドーンと開いた。

そこには火ヶ丸が両手を腰にあて、背筋をピンと伸ばし立っていた。


「お前ら早く準備しろ全員いくぞ!!」

 そう言うと火ヶ丸はソファーに座り笑い続けている泳斗の頭を思いっきり叩き、倉庫にいった。


 叩かれた泳斗はソファーから転げ落ち、我に返る。

 倉庫から出てきた火ヶ丸は、拳堂が昨日貰った大きな茶色の紙袋を持っていた。そしてそれを羊谷に渡した。


「羊ちゃんは、これに着替えなさい」

 そう言うと火ヶ丸は土伊にその紙袋を渡す。


「はい!!」

 受け取った羊谷は返事をすると早速着替えに入った。


 そのあとすぐに五人は羽枦署を出た。そして、羽枦署の駐車場の片隅にポツンと停めてある黒のワゴン車に乗り込んだ。

助手席のグローブボックスの中にある赤色点滅灯を車の屋根に取り付けた。

そしてサイレンを鳴らし車のライトをつける。そして火ヶ丸はすぐに車を発進させた。


 20分ほど車を走らせるとトーキョー銀行羽枦支店が見えてくる。 

 黒い柵で囲まれた敷地内は前方が駐車場となっておりその奥に銀行が見える。

今年改装したばかりのその銀行は、二階建てに横方向に伸びており上から見ると長方形になっている。

白く綺麗に塗装し直された建物の中央に入口がありその両脇に生垣が並ぶ。

 すでに車の中から、その駐車場には何台かの車が止まっているのが見える。

火ヶ丸はパトカーが一台も止まっていないことを悟ると、一旦通りすぎ路地に入り、サイレンを止め赤色点滅灯をグローブボックスにしまってから銀行の駐車場に車を入れた。

すでにそこには黒のワンボックスカーやシルバーの乗用車が何台か止まっていた。すべて警察車両のようだ。


 羽枦署のメンバーは車を駐車させ外に出る。

するとスーツ姿の男が一人駆け寄ってくる。老人特有の眠たそうに開く目、普通の人より脂肪のついた体、それに少しグレー気味の白髪で50代頃のおじさん。


「お疲れさまです異対のみなさん。……うん?」 

 その人物はそこまで言うと、拳堂に気づき目を合わせる。


「あんたコンビニんときのやつか!?」

 そうして、驚いた様子で声を荒げ、指を指す。


「あっ。八村さん!!」

 拳堂もまた驚いた様子でその人物を指差す。


 その人物はコンビニ事件のとき拳堂の事情聴取を行った八村刑事だった。


「まあとにかく犯行が起きるまで、異対は大人しくしといてくださいよ」

 八村は怪訝そうに頭をポリポリ掻きながら面倒くさいやつが来たとでも言うような感じで言った。


「そんな、それじゃ銀行に被害が!!」

 その言葉に声を荒げたのは拳堂だった。


「あんたらが変なことして犯人に警戒されたらどうしようもないんでね」

 八村はまたも頭をポリポリと掻きそう言う。


「はーい。分かりました大人しくしてますね」

 拳堂の後ろから火ヶ丸が手を挙げながら拳堂の前へ出てそう言う。

そのあと火ヶ丸はニッコリと八村に笑いかけた。


「気味悪ぃな」

 八村はそうボソッと言うと振り返り自分の車へと戻っていった。

そして火ヶ丸は四人の部下を連れ、車へと戻った。


「どうするんですか? 火ヶ丸さん」

 土伊は心配そうな表情で尋ねる。

それに同意するかのように泳斗と羊谷そして拳堂が頷く。


「ちょっと待っててな」

 そう言うと火ヶ丸は、腕を組みなにやら考え始める。

僅か30秒足らずたったところで火ヶ丸は口を開いた。


「よしちょいと車出すぞ」

 火ヶ丸は自分達が乗ってきた車を親指で指差し言った。


「どこいくんですか?」

 拳堂は不安そうな顔をしながら質問する。


「確か銀行の反対側、狭い路地だったろ、そこなら警察に邪魔されずに動けるはずさ」


 火ヶ丸は車を発進させ銀行から50mほどのところにあるパーキングに停めた。

そして車内で無線機を配り、5人はその路地へと徒歩で向かう。

その路地は幅150cmほどの狭い路地でまだ朝だというのに薄暗く、まさに裏道といった感じだった。


 時刻は9時49分。


「土伊、お前は銀行に中で隠れていてくれ、なんかあったら無線機で連絡な」

 銀行裏の路地に着くなり火ヶ丸は指示を出す。


「えっ、どうやって」

 拳堂がそう言い土伊を見ると、羊谷も同様に土伊に視線を移す。


「まかせてください」

 そう言うと拳堂と羊谷に親指を立てグッジョブを見せる。


 すると土伊の体は茶色く変色してゆき、それと同時に両方の手から湾曲した鋭い爪が現れた。

そうして、あたりをキョロキョロと見渡し舗装されていない植え込みの手前まで行くと、勢いよく飛び込んだ。

拳堂と羊谷は思わず目を閉じた。

目を開けると土伊は、そこには居なかった。


「これが土伊の異能:土竜(もぐら)だよ。土の中なら自由に行き来できる」

 火ヶ丸は二人の肩を抱き腰を落としそう言った。


 それから5分ほどすると土伊からの無線が入った。


「いま、銀行のタイルの下にいます。いつでも出れます」


「了解。とりあえず待機だ」


 他の四人は、とりあえず警察の邪魔をしないようにと路地で待機することになった。

時刻は10時を迎えようとしていた。

拳堂の時計の針が10時ピッタリを示したとき、銀行の警報装置が作動したらしくサイレンが鳴り響いた。


 そしてすぐに土伊から無線で連絡が入った。

「警察の特殊部隊が突入しました」


 拳堂は黒い大きなワンボックスカーが、銀行の駐車場に止まっていたことを思い出す。


「こちら火ヶ丸。えー状況は?」

 火ヶ丸はさらに情報を求めようと土伊に無線を送る。


「犯人は……5人です。聞き覚えのある声と小さい奴がいます。おそらく透道(とうどう)速世(はやせ)です」

 土伊のそう言う声の裏に激しい銃声が聞こえた。


「黒猫のNo.1とNo.2が揃ってお出ましとはね」

 火ヶ丸はそう言うとやれやれといった感じで苦笑いをした。


 そうして火ヶ丸は新しい指示を出す。

「泳斗、拳堂、お前ら正面入り口に回れ。羊谷はここで俺と逃走経路のマークだ」


 泳斗と拳堂は、すぐに正面入り口に向かった。


ドンッ、バンッ、ガシャン、


 受信状態になりっぱなしだった火ヶ丸の無線機から大きな音が聞こえてきた。


「どうした!?」

 土伊になにかあったのかと慌てた火ヶ丸は咄嗟に無線を握り語りかける。


「……特殊部隊が全滅しました。どうします動きますか?」

 土伊の声は思いの外暗くなっていた。


「いや待て。いま拳堂と泳斗が向かってる」


 拳堂と泳斗が銀行正面、駐車場入口にくると、入口には制服を着た警察官が二人立っており警戒テープが貼ってしいていた。

二人はUCA手帳を警察官に見せ銀行正面の駐車場に入った。


 2分ほど経ったところで泳斗からの無線が入る。

「火ヶ丸さん。いま駐車場に入ったところですもうすぐ着きます」


「了解。土伊、犯人はどこから侵入してきたんだ?」

 それを聞くと火ヶ丸はさらに詳しい情報を得るため土伊と連絡をとる。


「銀行玄関から堂々と入ってきましたーー」




 時刻は、9時59分に遡る。

 警察は事前に銀行の周りに捜査員を配置させ、さらに銀行員を警察官に代え、銀行員と一般のお客そして車を銀行と駐車場から避難させていた。

そして刑事 特殊部隊の隊員達は、車で待機していた。

 やがて黒い目出し帽に上下黒い服に身を包んだ5人組が突如として現れた。

その5人組は、駐車場を堂々と通り過ぎ銀行に入っていった。

それを確認した警察は、銀行入口に特殊部隊を配置した。

5人組のうちの一人が銃を出し、銀行員に変装していた警察官に向けようとした、そのとき銀行受付奥などから大勢の制服警官が拳銃を構えながら出てきた。


 そして警官の一人が堂々とした声でこう言う。

「手を挙げろ!! 特殊部隊を呼んだ大人しく投降しろ」


 銃を突きつけられていた5人組は、両手を上げた。

そのうちの1人長身の男が上げた右手をパチンと鳴らした。

すると、その長身の男の姿が突然消えた。


 警官は周囲を警戒。動揺している警官をよそに5人組の一番小さい1人が驚くべきスピードで取り囲んでいた警官の足をナイフで切っていった。

警官は、あまりもの速さで一瞬何が起きたのか分からずに立っていたがやがて痛みが襲いその場にうずくまった。

それに間髪いれずに残りの犯人は、銃を乱射する。


 銃声が聞こえた後、中との連絡がとれないことに我慢ならず特殊部隊が突入した。

特殊部隊が見た光景はあまりにも悲惨なものだった。

中央にいる犯人の周りには大勢の警官が呻き声を上げ血を流し倒れている。

改装したばかりの綺麗な白い壁には多くの弾痕と血が塗られている。

 特殊部隊は中央の犯人に向けて一斉に銃を乱射。しかし、先程恐るべきスピードで警官を無双した犯人の一人がその弾丸を一弾も残すことなく手で捕らえた。

その光景に呆気にとられた特殊部隊は、呆然と立つことしか出来なかった。

犯人達はそれを見逃さずまたも銃を乱射するとともに小さな男はナイフで攻撃をした。


 これまでの犯行わずか5分ほどだった。

無能な警察様そしてUCA様へ。


この度、我が黒猫は、

羽枦区にあるトーキョー銀行羽枦支店を襲うことを決めました。


日時は今日の10時頃を予定しています。


警察官、UCAの方々どうぞよろしくお願いいたします。


世紀の盗賊団 黒猫より。

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