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世界を背に拳を放て ~UCA-異能犯罪対策隊~  作者: 寝倉 響
黒猫-インビシブル・キラー-
11/63

最初の事件?

 翌日。拳堂は昨日の夜眠れず、朝早く目が覚めたため、羽枦署の2階にある異能犯罪対策室に30分前に着いてしまっていた。

一応部屋に誰かいることを考え、部屋を二回ノックしたあとにドアを開けた。


 すると中には、一人の女性が拳堂のデスクの前に立っていた。女性と言うよりは少女といったほうがピッタリくるような感じだった。

その女性は辺りをキョロキョロとしながら、頭から小さい羊のような角を二本生やしている。

髪は綺麗な白い髪のショートボブで少し垂れた眠たそうな目をうるうるとさせている。

拳堂は昨日火ヶ丸が話していたことをふと思い出した。


「あのう……もしかしてもう一人の新入隊員ってあなたですか?」


 白い髪の女性は恥ずかしいのか、顔を少し赤らめながら答える。

「あっ、はい。はじめまして。羊谷羊仔(ひつじやようこ)といいます。これからよろしくお願いします」


「自分も新入隊員なんです。拳堂ダンっていいます。あの、体調は、大丈夫なんですか?」


「あっはい。大丈夫です。子供のころから体が弱くていつもこんな感じだったんです。養成学校を卒業出来たのもたまたまでして……」

 羊谷はそう言うと顔を真っ赤にしてそれを小さな両手で覆い隠す。


 拳堂はその様子をなるべく見ないようにして言う。

「そうなんですね。それにしても早いですね来るの」


「あっはい。昨日の埋め合わせをしようと思いまして一時間前に着いてました」

 羊谷は頬を赤らめ顔を緩ませながらそういった。


「そういえばその角……」

 拳堂は羊谷の頭に生えた小さな二つの角を指差して言った。


 拳堂のその言葉を聞くと、羊谷は頬を赤らめながら小さな両手で頭に生えた小さな角を隠す。再び顔を見せた羊谷の顔は真っ赤だった。


「こここれは異能の侵食化(※)のせいで……」


 羊谷がそういい終えるのと同時に、ガチャという音が聞こえドアが開く。

ドアの方を見るとドアの前には土伊が浮かない顔で立っていた。


「今日も仕事か……」


 土伊は拳堂の姿を見つけると手刀にした手を額に軽くあてて言った。


「おっす!! ダンくん、おは……」


 土伊は拳堂の隣にいる白い髪の少女に目が移り言葉が止まる。


 そして土伊は目がギラギラと輝く。

その瞬間。土伊は、狩りをするライオンのような目付きとスピードで、羊谷に抱きつく。

羊谷はきゃっと短い悲鳴をあげ、驚いた顔をして、放心状態でされるがままになっていた。


「きゃー!! かわいい、なにこの子ダンくんの彼女~?」

 土伊は羊谷を抱き締めながら、くしゃっとした満面の笑みで言う。


「いや。ちが……」

 誤解を解かなければと慌てた様子で言った。

しかし、それは逆効果だった。


「ダン君。彼女連れてくるなんて悪い子だな~アッハハー」

 土伊は拳堂の話をまったく聞いていないかのように高らかに笑って言った。


「あのだから違うんですてっば……」

 拳堂は止めようと出した両手を前にふらふらとぶらつかせながら言う。


 再びガチャという音がまた聞こえた。ドアの方を見ると立っていたのは泳斗。

昨日の犬のアイマスクとは違い、今日はぐるぐる眼鏡がプリントされたアイマスクをしている。


「ちわ~す。拳堂くん」

 泳斗は大きなあくびをしながら部屋へと入ってきた。


「おはようございます……」


「……なにこの状況」

 泳斗はそういいながら苦笑いをした。


 拳堂はこれまでの経緯を話した。泳斗は腕を組みなるほどと頷くと、ドアの近くにあるソファーに座り、ふー とため息をつく。


「止めなくていんですか?」


「あー大丈夫大丈夫……ププ…………プププ……」

 耐えきれなくなったのか、泳斗はそう言うとお腹を抱えて笑い始めた。


「なんだこの状況は……」

 拳堂はこの収束困難な状況に頭を痛める。


 ガチャという音がまた聞こえ泳斗からドアの方へ視線を移す。

今度は羽枦署署長兼異能犯罪対策課課長の火ヶ丸だった。


「……え、なにこれ」 


 火ヶ丸が見たのは、放心状態の羊谷に土伊が抱きついている姿と泳斗がソファーの上で腹を抱えながら爆笑している様子、そして立ち尽くす拳堂の姿。


「……拳堂くん。あとは任せたよ」

 火ヶ丸は拳堂の肩を叩き呆れた顔をすると、そう言い部屋を出ていった。


「ちょっと火ヶ丸さ~ん」

 困り果てた拳堂は藁にもすがる思いで声を漏らした。


 そのあと1本の通報が来るまで、この状況は変わらなかった。


※侵食化

異能の影響が体の表面にまで出てしまうこと。


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