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異能犯罪対策課

 異能犯罪対策室に入ると正方形の大きな部屋があり両脇にはドアいくつかある。

正方形の部屋の正面には机が中央に5つ集まって置いてあり、ドアのすぐ近くにはソファー。部屋の両脇にあるドアの内、左側には取り調べ室と応接室と書かれたドアが二つ。右側には、倉庫と書かれたドアがあった。


「どーだー?  意外に広いだろ。ちなみに机があるとこは大部屋な」

火ヶ丸はそう言うと机を指した。5つの机のうち3つは机の上に物が置かれており残りの2つはまだ綺麗な新品だった。


 火ヶ丸は拳堂を応接室に案内し、黒いレザーソファーに座って待ってるように言うと、一旦部屋を出ていく。

応接室の中には、黒いレザーソファーが向かいあって置いてありその間に黒い机が置いてあった。

部屋を出ていた火ヶ丸がお茶をお盆に乗せて戻ってきた。

そして拳堂の向かいに座るとお盆を机に置き、お茶を拳堂の方へひとつ、自分の方へひとつ置く。

拳堂はいただきます。と言うと気になっていたことを質問をする。


「あの他の隊員の方は?」


「ああ……いまでてるみたいだな。【黒猫】っていう強盗団知ってるか?」


 【黒猫】

 異能を使い銀行や宝石店などを襲っている強盗犯罪組織。犯行を行う前に犯行予告を警察とUCAに出し、その予告文についた座った黒猫が両手を広げ宝石とお金を持ったマークにより、黒猫と名付けられた。

異能者と無能者からなる50人以上のメンバーで構成されている。

そのため、警察とUCAの合同捜査が頻繁に行われている。

すでに半分以上メンバーは、逮捕されているが、黒猫No.1とNo.2は、逮捕されていない。




「今朝、その黒猫から予告文が警察とUCAに届いた」

 そう言うと火ヶ丸は、ズボンのポケットからしわしわになったその予告文のコピーを出して開いて見せる。

その予告文には、今日羽枦区にある宝石店を襲うと書かれていた。


「こんなとこでお茶飲んでる場合じゃないんじゃ……」

 拳堂はあわてた様子でそう言う。


 それをなだめるかのように火ヶ丸はこう言った。

「安心なさい。今回の犯行は小さな宝石店だ。今向かってる隊員だけで十分だよ。それにウチ(UCA)は警察からも邪魔者扱いされてるし合同捜査となると尚更な。それに人数は少ない方がいいしな」


「そうですか……」


 お茶を飲み終えると、拳堂は火ヶ丸から報告書の書き方や、その他通常業務などの説明を受けた。

 拳堂はそのあと火ヶ丸から指示を受け、倉庫内で資料の整理をすることになった。

倉庫内にある捜査ファイルは決まった順番に並べておらずそれを綺麗に並べてくれとのことだった。

倉庫の資料が終わり、今度は火ヶ丸に自分のデスクを案内される。

拳堂のデスクは5つあった机の、右端の机だった。


 その時ガチャというドアが開く音が聞こえ、火ヶ丸と拳堂はドアの方を見る。

紺色の短髪で身長180cmぐらいの犬の顔のイラストがプリントされたアイマスクを着けた20代半ばの男と、綺麗なさらさらの茶髪を肩ぐらいまで伸ばした20代ほどの女性が入ってきた。


「ただいまっすー」

 アイマスクの男はニヤニヤ口元を緩ませながらそう言い入ってきた。


「課長……なんでお茶飲んでるんですか!!」

 茶髪の女性はまるで子供を叱るかのような口調で言った。


 茶髪の女性のお叱りを受けた火ヶ丸は体がビクッと震える。

隣にいるアイマスクの男は、プッと笑いをこぼす。


「えっ……いやちゃんと巡回してきたよ。てかそれよりさ黒猫の犯人は捕まえたの?」

 火ヶ丸はあわてて、動揺した様子を見せた。


「それなんですけど捕まえたことは捕まえたんですが犯人は全員ノーマルの人間だったんで、警察に身柄を引き渡しましたよ」

 茶髪の女性はそう言いながら自分の荷物を机の上に置く。


「そっかそか……まあじゃあ新人を紹介しますよ」


 拳堂は火ヶ丸に背中を押され一歩前に出た。

ごくっと唾を一飲みし緊張した口調でこう言った。


「はじめまして拳堂ダンです。今日から羽枦署異能犯罪対策課に所属になりました。よろしくお願いします!!」


「はじめまして。土伊彩未加(どいあみか)です。よろしくです」

 土伊は赤く火照った頬にパッチリと開けた目で拳堂を見つめてそう言った。


 土伊は手を前に出し握手を求める。拳堂はそれに応じて手を差し出す。

柔らかな感触とともにほんのり温かい手が拳堂の手を包む。


「ども。泳斗流二(えいとりゅうじ)っす」

 泳斗もそう言うと土伊と同じように手を前に出し握手を求めてくる。

 拳堂も手を前に出し握手に応じると、先ほどの土伊の手とは違いまるで冷水を触っているかのような温度だった。


「てなわけで二人ともよろしくな。よくしてやってくれ」

 そう言うと火ヶ丸は、倉庫室に入ってしまった。


 仲介役がいなくなったことで、少しの間沈黙が流れていたが泳斗の一言で沈黙が破られる。


「やっぱりさ、このアイマスク気になっちゃう?」

 泳斗は自分のしているアイマスクを指差し言う。


「えっ、いやー別に……」

 拳堂は正直にそれに答える。


「えーやっぱり気になってしまうかーうん。俺はね……」

 泳斗はまったく聞いていないかのような口調で次々と言葉を出してゆく。


 拳堂は何か重大なことが来るのではないかと思い、ゴクリと唾を飲み込み身構える。


「ドライアイなんだよ~!!」

 そう言うと泳斗は、笑いを押さえきれなくなったのか大きな口を開けその場に倒れ込み笑いだす。


「ごめんね……この人こういう人なの」

 呆れ果てた表情を見せた土伊は泳斗の頭をお笑い芸人顔負けのツッコミでひっぱたく。


「あっ、はあ」

 拳堂もまた少し呆れたような表情を見せる。


「それにしても拳堂くん丸眼鏡なんだね~。天パだしかわいい。かわいいの大好きなんだよね~」

 土伊は先程のまでの少しぎこちない標準語から大阪弁に口調を変えそう言った。


 拳堂は土伊の可愛らしい微笑みに頬がすこし赤くなったのを感じる。


 すると火ヶ丸が倉庫室から戻ってきた。

手には、大きな茶色の紙袋を抱えている。


「これね、制服とかいろいろ必要なの入ってるから」

 火ヶ丸はそう言うと拳堂にその大きな紙袋を渡す。


 拳堂がその紙袋を受け取り中を見ると制服と別の紙袋が入っていた。

別の紙袋の中を覗くと養成学校卒業時に申請しておいた装備品が入っていた。


「そいえば、もう一人新入りくるんすよね、どうしたんすか?」

 先程ひっぱたかれ正直に戻った泳斗は辺りをキョロキョロと見渡しながらそう言う。


「えっ!?」

 拳堂は驚きのあまり目と口を丸く開ける。


「拳堂君、知らなかったのか」


「知らなかったです。いやまさか……」


「まあね、こんなとこくる子は、問題児ばっかやからね」

 土伊はアハハと笑ってみせた。


「いや。……そんな…………あー」

 拳堂はそう言いかけ、自分が起こしたコンビニ事件のことを思い出し納得してしまった。


「もう一人は、具合悪いとかで明日から来るってよ。まあというわけで今日は、みんなおつかれちゃんです。また明日からよろしくお願いね」

 火ヶ丸のその言葉で四人は解散した。



 拳堂は羽枦署から寄り道せずに家へと帰った。

貰った紙袋を開けると中には、透明なビニール袋に包まれたUCAの制服である紺色のスーツが入っていた。

ビニールを破りスーツを取り出し近くにあったハンガーにかける。

スーツの胸の部分には鳩の片翼の上にUCAという文字がはいった隊章がついていた。


 拳堂は家庭用祭壇に向かい合い正座して座る。

そして家庭用祭壇の上に置いてある二つのUCAの隊章を見つめた。


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