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〈BKK〉  作者: Neo_Nue/鵺野新鷹
第一章:二人の俺
16/23

5月11日:帰路と別れ

一章、了。

年末年始でもう一話くらいはなんとかしたいところ。

 ゾーン購入。

 文字どおり、一定のゾーンを購入する行為である。

 デメリットは維持費がかかること、管理の手間が生じること。

 翻ってメリットはと言えば、進入・退出可否、攻撃可否。また、通行料金の設定、名称変更権、など。

 ゲーム時代には特定のゾーン、ギルドホールの部屋などしか買えなかったのだが、リアル化以後、全てのゾーンが購入可能となっていた。

 今回購入したのは、〈黄泉平坂(ルート・ゲヘナ)〉の一層――俺たちが〈醜女〉と遭遇したあたりまでだ。全て買うのは流石に勿体無い。購入ゾーンを越えずして侵入できない程度である。

 俺のように掘削って発想に至るやつはいるかもしれないが、かなり深く掘らなくてはならなくなる。流石に気付くだろう。

 また、女王の方に干渉しすぎない、という意味もある。

 ぶっちゃけ〈黄泉平坂〉の全てを買うことも可能ではあったが、それは女王の権限を奪いすぎるし、……それじゃあ誠意がない、信頼してないというようなものである。

 俺とシャル以外の〈冒険者〉は進入禁止にしているが、かけた制限はそれだけである。

 制限については話してあるが、ナギサは興味なし、半裸とヒカズはノータッチ、ズンダはと言えば、


「まア、非道をしないなラ、かナ」

「しねえさ、もう一度殴って言うこと聞かせるとか嫌だぞ俺、仕入れ先はなくなるし今度こそ圧殺されかねんし」

「ンー……まア、納得しておくヨ」


 〈車輪の歌を奏でるトイ・ボックス〉にて、〈アキバ〉にもどりながら、話す。

 既に時刻は夜。どーにも納得しきっていないような困った笑顔のズンダを横に、双子馬に馬車を引かせながらの急ぎ旅だ。

 本当に急ぐならシャルの〈鋼竜鳥(ワイバーンバード)〉にでも乗っていくべきなんだが、現在商品の大量輸送中につき、である。


「奇妙丸としてモ、いい関係でいれバ、維持費はかかるケド、桃でペイできる……カ」

「そういうこった」


 昼まで、どころかおやつの時間まで寝ていたので、眠気は少ない。

 他四人は中で寝ている――のだが、同じ時間まで寝ていたはずのシャルまで寝てるのはどういうことなのか。

 後で蹴り起こして手綱任せるか、と思いつつ、話を続ける。


「……まあ第一段ってことで、量はないけどな」


 朝から飛行乗騎と女王とを酷使して安全を確保、ついでに桃を限界まで採取して積み込み、を繰り返した結果である。

 次回からは死者輸送もあるし、満載にもできるだろう。


「積載量にしテ?」

「がらがらだな。――大雑把に元手分くらいかね」

「ふーン……」

「元手三〇万くらいかかってるがなあ」

「……ワオ」


 トイ・ボックス買ったり、天幕大量放出したり、ポーションがぶ飲みしたり、〈黄泉平坂〉買ったり。

 いささか出費が激しい。

 しかし、それ以上に売り上げは見込める。

 ゲーム時代。九〇レベルの〈冒険者〉ですら、資産は金貨五万枚程度だった。

 レベルが高いほど敵から得られる資金も、そのドロップアイテムも高額になっていくのだが、その分出ていく金も多くなる。

 金に関しては非常に渋いのが、〈エルダー・テイル〉というゲームだっだ。

 それはなぜかと言えば、まあ様々ある。

 装備の損耗。――装備は使っているうちに破損する。素材と資金を使い修理しなければならないのだが、これが高い。強い装備ほど高いので、普段使いとマジ装備は分けるのが普通だ。

 高級装備が高額であること。――修理代もだが、手にいれるためのコストがそもそも高い。たとえ装備は修理しなくとも良かったとしても、ポーション等のアイテム代はかかる。

 そう、アイテムの補充も大きな問題だ。レベル九〇対応のポーションはもちろんのこと、食事代も馬鹿にはならないし、ビルドによっては矢や毒薬なんかのアイテムを消費する。

 だったら、と金を稼ぐビルドをやれば、戦闘能力に問題が出る。金を倍稼げるようになったとして、補給コストも倍になっては意味がないってもんである。

 ……このあたりの理由の複合で渋いわけだが。


「ま、全部ハケるとは思う。それを六人で分配だな」


 余った素材や装備を売るのが主な金策になるが、これがまた難しい。誰もが欲しがるものは基本的にレアだしドロップであれば奪い合いになる。

 では取り合いにならないようなもの、つまりは誰も欲しがらないようなモノはというと、マーケットに放流して誰かが買うのをひたすら待つか、〈大地人〉に売るしかない。

 〈大地人〉に売るのはほぼ捨て値になるし――〈大地人〉の財布にも限度がある。

 高額アイテムを何個持っていようが、〈大地人〉に売れるのは彼らの持っている金額分だけである。

 しかしこれは、これからに関しては考えなくともいい。

 〈冒険者〉の財布なら、無限とは言わずとも、このトイ・ボックスですら不足なほどに潤沢なのだから。


「実際すぐ売れるとは思うが、着いたら見込み額を俺から渡して解散かね」


 俺とシャルは基本財布は共用にしようか、と考えている。まあまだ話していないが、反対はされないだろうと思う。

 あいつも俺である。俺の方に金を任せた方がいいというのは分かってくれるだろう。

 俺たちに十万、他に五万ずつ――そんな配分になるか。

 数日で五万、と考えれば破格ではあるが、この辺は誠意の問題ってやつである。


「売った後ハ?」

「また仕入れだ、後はもう利益だけだしガシガシ売るぞお」

「見たコトないくらい笑顔だネ、奇妙丸……」

「当たり前だろ、超儲け出るんだぞ。今やらんでどーするってんだ、需要があるならレイドボスにだって供給してやんよ」

「気持ちは分からないでもないケド。あと後半はヤメテ」


 ズンダは苦笑し、前を向いた。

 〈アキバ〉の街のある方向だ。


「……少しは良くなるのかナ」

「まあ少しはな。それは間違いないと思う」


 あのクソみたいなメシは嫌だと、果実なんかの素材アイテムを求めに行く連中はいるはずだ。

 そういう自助努力ができるやつはいい。客になりうるがメインターゲットじゃない。

 そう、戦闘は怖い。

 ヒカズとナギサはリアルでの武道の経験からか、半裸は正義感とか自分ルールでか、ズンダは分からないが、俺たち六人は平気だったが、恐れて家や宿から出ない連中も間違いなくいる。

 そいつらがメインターゲットだ。そしてそいつらの資金力は潤沢だが無限じゃない。

 いつかは金が尽きる。そうすれば金を稼ぐため外に出ざるを得ない。

 そう、ヒカズにも似たようなことを言ったが、


「俺はこの状況を解決したい――が、できるかは分からない。

 俺は金を持ってるが、金じゃ買えないものだって確かにあるんだ。

 ……だけどさ、美味いモノ食えばヤル気が起きるのが人間ってやつだ。美味いモノ食いたいって欲求は強いし、その過程でどこかの誰かがなんとかしてくれるかも知れないだろ?」

「道理――道理だネ」

「もちろん、可能なら俺がなんとかするけどな。金になるし」

「奇妙丸一言多いよナァ……」


 やかましい。

 ……ま、さしあたっては、商売である。

 メシが回れば金が回り状況も回る。

 何かを得ようと外に向かえば、なにかが起きる可能性は高い――と思うのだが。


「しかし……なんか、落し穴……つーか……」

「ン?」

「ああ、いや……気づいてみれば、単純なことが解決になるんじゃねーかなって思ってなあ……」


 例えばの話。

 メニューにログアウトボタンはないが、ログアウト! とでも叫べばログアウトできるとか。

 アカウントを消去されれば戻れるとか。

 実はクエストがあってクリアすれば戻れるとか。

 変質したルールの中で、矛盾や隠された内面があるような気もする。

 ――否。

 あるいは。

 もしかするとだが――戻るって考えが、間違えているのかもしれないが。


「…………」


 少し恐い発想だ。

 だがその可能性も否定はできない。

 俺が観測した中に否定材料がない。

 悪魔の証明に近くはある。

 決して誤りだと否定できない、ただそれだけのことだが。

 それでも、そう考えてしまうものもいることだろう――と、


「そういえばなんだケド、奇妙丸」

「ん?」


 沈黙したところで、言葉が来た。


「聞いてなかったケド、『死んでた』時、どうだッタ?」

「……あー。」


 なんと言ったものか。

 ゴタゴタしてて女王の口から聞いたわけではないが、


「アレ、……〈死の言葉〉としとくが、アレな。イベント攻撃だな」

「ふぅン?」

「ゲーム時代には一応のエフェクトだけ用意してあったか。

 見かけ上HPはゼロになるが、実際は裏で継続ダメージ食らわせる精神系拘束魔法だ」

「ン……そう言えバ、自分で蘇生してたネ」

「ああ、夢の中でディスペルしたんだが……イベント魔法だからか、こっちもイベント的な――本来だったら使えない場面で魔法を使えた……のかも知れないな」

「ウンウン。……食らってる最中ハ? どうだっタ?」

「……クソみたいな夢見せられてたよ。だから目ェ覚ましたんだが」

「フーン……クソみたいな、夢かァ……さすがに関係はなさそうかナー……」

「なにがだ?」

「いやァ、それがネ、奇妙丸。シャル=ロックもそうだったケド、君たちが死んでた間、MPがゼロになってたんだよネ。生き返ったら戻ったケド、なんだったんだろウ?」

「……んー。HPだけじゃなく、MPもゼロに……って効果があったのかねえ」

「MPも削る意味はなんだろウ? 別にHPだけでいいじゃあないカ、ひとを殺めるなラ。

 蘇生したら戻るのはHPと同じってコトでいいにしてモ、見かけ上ゼロになるのも不思議だよネ」


 む、と思う。

 確かに、それは、余分だ。

 MPとは、設定的には――イメージ的には、精神力。

 HPを生命力とするなら、対になるようなものである。

 そういうものだ、と受け取っていたが、あるいは、正当な理由があるのか。


「MPが、……精神力か、あるいは魔力か、はたまた魂か……何かの形で、『死』に関連してるってか?」

「そうなのかもト、今思ったヨ」

「確かに……あるかもな」


 またそのうち、女王に確認するべきか。べきだな。

 またひとつ、脳内の『やるべきリスト』に書き加えつつ、アキバへの旅路を急ぐ。







 〈アキバ〉の門前――そこに、午前のうちに到着し、道すがらの話通り、解散と相成った。

 戦利品の分配――多少のアンデッド系素材――は、桃と同じく、俺が処分を任されることになった。

 貰っても仕方がない、とのことである。

 よって、発生したのは、金貨袋の受け渡しのみだ。


「……疑ってた訳じゃないけど……ポン、と五万枚渡されるって、すごい話よね」


 流石にウフフと笑えないのか、半裸は谷間に金貨袋を仕舞いつつ言った。

 領収書はいるかと問えば、要らないわ、とすげなく拒否されたのだが。


「あなたが〈富豪〉だからかしら?」

「正当な報酬だ。サブ職は……関係ないことはないが」


 〈富豪〉。

 それが、俺のサブ職である。

 〈商人〉の派生系ロール職であり、基本は商人に近い。

 交渉、輸送、契約書の作成、マーケットにおける便利機能、鑑定――これらの基本スキルを修得することは変わらない。

 追加能力として、高額・大口であるほど値引きできたり、『金に糸目をつけない』ということで、〈大地人〉に仕事を頼むときに能率が上がったり、だ。

 ……まあ、安い品物を単品で買うとむしろ高くなったりするのだが。その辺りはバランス型の商人、個人営業の〈旅商人〉、高額取引メインの富豪――と住み分けである。

 ただし、富豪には派生前提がある――この〈エルダー・テイル〉において、金貨百万枚を貯めなければ就業できないのだ。

 一般プレイヤーが数万枚――かなり持ってても十万枚程度のところで、百万枚とは、わりと、どころでなく厳しい。

 さらに言えば。商人系サブ職は商売をすることでレベルを上げていくが、富豪は高額取引でなければ上げられない。

 例え百万枚の資産があっても一瞬で溶ける。溶けた。

 マーケット覗きは日課である。一万で買って一万と千で売るようなことを繰り返してきた。

 アイテムをかき集めて大手に売りさばくようなこともした。

 廃品回収じみたことをしたこともあるし、旨いクエストは逃さなかった。

 その結果――


「ま、実際には、大したことはないさ。確かに今は金を持ってるが、貯め込んでる時期だっただけで、普段はもっと少ないんだ。

 ……っつか、今もだいぶ使ったからな、桃が売れないと破産だなコレ。また貯め直しだ」


 ――今現在、財布のなかには、五二九万と五六〇八枚の金貨がある。


「そうなのでござるか?」

「ああ、新パッケ出るってことで、色々とな。転売をな」


 〈ヤマト〉内においてはトップランカーである自信はある。

 ソロで言えば一位か二位か。

 そこらの中小ギルド――どころか、百人規模のギルドでもないと負けないであろう金額だ。


「私は。お金より、桃がいいで……すけれど」

「ん、そうか。……あまり桃があっても悪くなるかと思うが……」

「なら……十個、ここで売って、ください」

「あいよ」


 桃をナギサに渡し、金貨袋からいくらか金貨を抜き、改めて渡す。

 受けとると、ナギサは一礼し、


「お世話になりました。また」


 と、すたすた歩いて、アキバから遠ざかって行った。

 

「うーむ、あっさりと……」


 シャルが言う。同感だ。

 山籠りでもするのだろうか。

 まあ、アキバの街にいるよりいいのかもしれない。


「私も――外、出ようかしらね。PK、いるかもしれないし。ウフ。アキバがどうなるか、見てみたいけど――変えようとするかもって人たちは、守らないと」

「……奇妙丸殿達とは、プレイヤーキラーを相手取る際に出会った……のでござったか」

「ええ、そうよ。ウフ、どうするの、ヒカズサンは?」

「拙者は試したいこともござる。すまぬが……アキバから離れる予定も、ひとまずござらんが」

「俺モ、試したいコトあるカナー」

「ん、そっか……俺たちは、〈ホクスン〉とアキバの往復か、しばらくは?」

「そうだな。……じゃあ、解散だな。ありがとう、お疲れ様でした、だ」

「乙乙。じゃあネー」

「しからば御免」

「ウフーフ! 縁があったらまた会いましょう?」

「あいよ、金に困ったら言えよ、金利グレーゾーンで貸してやるからな」

「……ウフ。やめておくわ」

「……お、おう」


 真顔の半裸が、身を翻す。

 ズンダ、ヒカズも同様だ。

 そうして、三人は思い思いの方向に去っていく。

 少し、名残惜しい。

 野良PTでは覚えなかった感覚だ。

 一緒にゲームをした、以上。

 同じ冒険をしたから、なのか。


「……一期一会だなー」

「だなあ……」


 半裸が。クレスケンスが言ったとおり、縁があればまた会えるだろう。

 まずは桃を売らないと、と、トイ・ボックスに乗り込む。

 手綱をさばき、入っていく。







 〈アキバ〉は、変わっていなかった。

 そりゃあ、今日は十一日。ちょうどリアル化から一週間か。

 流石に道端に座り込む人々はいなくなっているが、さて、表に見えているのと、裏に隠れているのと。どちらがマシなのかは、判断の難しいところである。

 昼の光に照らされながら、どこか鬱屈とした雰囲気が漂っている。

 とりあえず、とマーケットを開き、ざっとアイテム――特に果実系アイテムの値段を眺める。

 そもそもの品数が激減しているが、


「……クソだな」

「だな」


 シャルの毒づきに同意する、せざるを得ない。

 マーケットはオークション式で、期限までに最も高い値を着けた人へと売り渡される。

 およそ、期限は一日から半日程度か。

 どれもあり得ない金額がついている――ひどいものだ。

 対して、平素であれば貴重なアイテムの数々は、最低価格かそれに近似した値段で売買されているようだ。

 金がなくなった。戦って稼ぐのも恐い。じゃあ、なにかを売るしかない――当然の流れだが。


「こりゃ、商売じゃねえ――搾取だ」


 ま、そんなクソみたいなことするクソを駆逐するためやってきたわけだが。

 マーケットでは、即金価格を設定――この値段で買ってくれるなら即座に売り渡しますよ、という設定もできる。

 最低価格と即金価格を同値に設定し、普段の価格で放流する。

 バラ売りでバラまく。

 別に安売りはしない。手間暇はかかっている。慈善事業をやってるわけではねえのである。

 ただ、あこぎな商売なんてプライドが許さない。

 適切なときに適当なモノを適正な価格で。

 時とモノはともかくとして、価格はクソだ。

 ……まあこれでも、流している側が桃を買って、適性でない価格で売ることは避けられないが。

 全てを買い尽くすってことも不可能だろう。

 そのためのバラ売り即金価格設定だ。

 誰の口にも入らないってことは、ないはずだ。


「……さて、荒らすか。手伝え、シャル」

「いいけどここでやんのか?」

「今やるって言ってねぇだろ」

「あ゛?」

「あ゛?」

「……やめようぜ、俺。衛兵が飛んでくる」

「……チッ……そうだな。俺」


 トイ・ボックスの中身をマーケットに流して、アキバの街を行く。

 このトイ・ボックスは目立ちすぎる。ひとまずおいておける場所、宿が必要だ。

 今となっては、眠くなったからログアウト、なんてことはできない。眠る場所としても、宿の確保は急務だ。

 実際、あいつらは信用していたが、夜営時は少し警戒を――


「……あ、しまったな」

「なにが?」

「念話……フレンドリスト登録、忘れてた」

「……あ!」

「あー……もういねえよなあ……」


 後ろを振り返る――トイ・ボックスの壁が見えた。アホなことをした。

 あいつらとは。

 笑顔のツイン盾、ズーン・ダーンとは、

 半裸の痴女、クレスケンスとは、

 容赦なし撲殺巫女、ナギサ・フォレストとは、

 ござる系居合使い、金ヶ崎・ヒカズとは、

 このアキバの街に入る直前で、別れたのだから。


「……マジで一期一会だな」

「そうだなー……」


 ……時は金なり。

 アドバンテージは刻々とゼロに向かう。

 いつまでも振り替えってばかりじゃいられない。

 ……ま、それでこそである。

 生きていけることと、生きていこうと思うことは違う。

 それが他人を蹴落とすことと同義であれ、生きるには理由が、目的が必要だ。

 黙っていても目標からは遠ざかるのみだなんて、なんて最高な世界なのか。

 さて、ともあれ。


「これから、忙しくなるなあ……」


 予感に身を震わせながら、トイ・ボックスを走らせる。

 夜明けはまだとおく、道はくらく、先は杳としてみえず。

 未知ばかりが前にある。

 それを既知に変えていくことこそが喜びだ。

 そう、考える。


「しっかり頼むぜ、(シャル=ロック)

「そっちこそだ、(奇妙丸)


 もう一人の俺を、隣に置きながら。









→第二章、5/18

●〈富豪〉

 奇妙丸のサブ職。〈商人〉から派生する、半ロール系サブ職。

 基本性能は商人と同じ。

 大地人との交渉時にボーナスがあり、物品の輸送、マーケットでの詳細検索機能、鑑定、契約書限定の文書作成などの能力を有する。

 商人にない能力として、『金にものを言わせる』能力がある。

 大地人に対し通常の数倍の金額を支払うことで、その仕事の能力を上昇させるのである。

 また、高額、もしくは大口の取引であるほど交渉能力が増大するが、逆に少額・単品であると逆に値段が高くなってしまう。

 商人の派生系であるが、商人のレベルを上げて行く必要はなく、ただ『金貨100万枚』を所持していれば転職クエストが発生する。

 自然、富豪となったキャラは100万枚の金貨を所有していることになるが、富豪のレベル上げには大量の資金が必要となるため、富豪になる前よりも倹約が必要である。……あれー?


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