姉弟
ねぇ、おかしいかもしれないけど。
僕は姉ちゃんが好きだ。姉弟としてじゃない。
異性としてだ。
姉は泣き虫だ。
悲しいときは、もちろん。嬉しいときでも、すぐに泣いてしまう。
悲しい涙は嫌いだ。
だから僕は姉を慰める。
姉が泣いたとき慰めるのは僕の仕事だ。
「泣いてゴメンね……すぐ泣くから困るよね……」
そう言って更に泣く。
全然困ってないよ。笑ってよ。姉ちゃんの笑顔が好きなんだ。
そう言って飴玉を手渡す。
「ありがとう♪」
飴玉を口に入れ、笑顔を見せてくれた。
今日も姉ちゃんが泣いてる。
いつもは聞けない事とか今言いたい事とかあったけど。
「上手く話せなかった……」
「強い気持ちあるのに…言葉が出ない。時間が足らない……」
姉ちゃんは詩人に向いてるかもしれない。
日曜日……部屋から出てきたアルバムを見ていた。
姉ちゃんが来て
「良い思い出だね♪」と言ってくれた。
でも……でも僕は……
「思い出にしたくないなぁ。」
えっ。という声と同時に涙目になっていた姉貴が隣にいる。
「離れなければ……ずっと一緒に居れば思い出すことないでしょ?」
ごめん姉ちゃん……上手く言葉にできないや。
「あぁ……そうだね。一緒に居れたら思い出にならないね。」
分かってくれたみたいだ。
最近は、喋らないで会話してたから。
こういうときに言葉が出ないや。
長年の付き合いだ。「ん。」だけで会話ができてしまう。
笑えるかもしれないが本当だ。
最近は怖い。この気持ちがバレたらどうしよう。
距離置かれるのかな。
そう考えると震えが止まらない。
姉ちゃんのことが大好きなのに……
そう思って一人で泣いてるところを姉ちゃんに見つかってしまった。
「どうしたの?」
こんなところ見られたら上手に話せないよ。
気付いたときには抱き締められてた。
「僕は……姉ちゃんが好き。姉ちゃん以外嫌なんだ。」
「あのs「お姉ちゃんがいいの。」
言葉をさえぎって話す。これがラストチャンスだから。
「離れたくないんだ。」
黙りこんでいる。ああ、やっぱりか。
おかしいよな。でもスッキリした。
飴玉を食べた姉ちゃんが笑う。
「ありがとう。」
それだけ言って部屋へ戻ってしまった。
勝てないな。やっぱり神様には勝てないや。
でも……負けないし祈らない。
自分の力で何とかしてやる。
姉ちゃんが部屋から戻ってきた。
そして、手を握ってきた。
とても暖かい……。
「あ……」
喋ろうとする僕の口を塞いだ。
口を口で塞がれた。
唖然として動けなかった。
口の中に飴玉が入ってきた。暖かい。
「どお?美味しい?」
姉ちゃん……顔真っ赤だよ。って言う僕も真っ赤だと思うけど。
姉ちゃんが笑う。僕も泣きっ面で笑う。
「私も君のこと好きだよ。弟じゃなくて異性として。」
長い……とても長いキスをした。
少し離れて姉ちゃんが笑う。
2人で笑う。
そして今日も飴玉を食べる。